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『たった一人のリアリティ、きみに捧げるディテール』 その参

「挑発それとも懲罰」

            ある監督をめぐる物語


Locations

            首都圏及び出羽三山

Characters

           ・映画監督 生井美夫 (44)

           ・女優 鷲見里子 (23)

           ・妹 生井由佳 (37)

           ・キャメラマン 堀江和昌 (55)

           ・造型作家 ミサキマサキ (41)

           ・音楽家 尾佐高士 (39)



○  嘆壺・内部

    痰壺ならぬ嘆壺。

    口吻おさまらぬ喜怒哀楽の嘆きを捨てる壺。

    内部は真っ暗。

    いま、表の蓋が開けられ、くだんの便に供されようとする。

    現れたのは意外にも大人の女性。メガネをかけた知的な容貌。

    興味津々とばかりに耳を寄せ、首をかしげて底を覗き込む。

 生井由佳 「あれ、今日もないんだ」

    しばらく思案のあと、臭いものに蓋をするようなやり方。

    再び真っ暗。

○  河口湖の家・リビング(夜)

    俗にいう男の隠れ家。湖を見下ろす山の中腹に建つ。

    照明が落とされ、カーテンは開いたまま。

    吹き抜けとなった部屋の中央に小型の宇宙船が鎮座する。

○  同・宇宙船の中

    ヘッドホンをした生井美夫が窓の外をじっと眺める。

    異空間にあるような暗いリビング、サッシの向こうの夜景。

    声明の調べに重なり、塵の漂う床、不揃いな鉢植え、傷が入った椅
    子、ガラス卓の灰皿、開いたままのノートパソコン、揺れるカーテ
    ン、染みのついた壁、抽象絵画の額。そして湖面に浮かぶ月、山麓
    に瞬く街路灯と動くヘッドライトの光。

○  密教系の寺院(夜)

    本堂の外にある無数の地蔵。

    雨の中、山門から出てくる礼服姿の生井美夫と鷲見里子。

    タクシーを捕まえようと踏み出たとき、黒いセダンが迫ってくる。

    危うく轢かれそうになる二人。

 生井美夫 「バカヤロー! どこ見てんだ!」

    びしょ濡れの美夫と里子。

    ののしる彼の後ろで、彼女が笑いだす。

    お互いの姿を見てぎこちなく抱擁する。

    そこへ黒塗りのタクシーが向かってくる。

○  タイトル

    どしゃ降りの地面を、走り抜けるように流れてくるタイトル『挑発
    それとも懲罰』

○  宇宙船の中(朝)

    ヘッドホンをしたまま眠りこける生井美夫。

    ブザーが鳴り、来客を告げるランプが点滅する。

    うっすらと目を開け、サッシの外の庭を見る。

    つなぎ姿のミサキマサキが両手を振っている。

○  河口湖の家・外

    駐車スペースに置かれたミニバン。

    そのドアにもたれ、ミサキが気持ちよさそうに煙草を吸っている。

    と、玄関から出てくる生井美夫。

 ミサキマサキ「いよ、宇宙からご帰還だ」

 生井美夫 「早すぎるよ」

 ミサキマサキ「わざわざ持ってきたんだからいいじゃないか。俺も忙しい
        んだ。……しかしここも、たまにくるといいとこだね」

 生井美夫 「たまに、か。杉並のマンションなら喜んでくるくせに」

 ミサキマサキ「当然だよ。あっちには由佳さんがいる」

 生井美夫 「だったら、もっとアプローチしろよ。でないとあいつ、巫女
       さんみたいになっちまうぞ」

 ミサキマサキ「ちぇっ、兄が兄なら、妹もねえ。それよりさっさと運んじ
        まおう」
    と吸殻を携帯灰皿に突っ込み、車の後ろへまわる。

○  河口湖の家・リビング

    美夫とミサキがレトロな自走式ロボットを担ぎ、宇宙船の横に置こ
    うとしている。

 生井美夫 「ほら、なかなかいいじゃん」
    と、少し離れてロボットと宇宙船を見比べる。

 ミサキマサキ「そりゃあ、同じ映画の美術だからね。(部屋全体を見まわ
        しつつ)このリビングに似合うかどうかは別問題だろう
        が」

 生井美夫 「ミサキマサキの腕をほめてるのに、ずいぶんな言い方じゃな
       いか」

 ミサキマサキ「いや、生井監督、これは失礼しました。造型を担当した者
        としてはたいへん光栄なことで、地元での上映会も盛況で
        あってほしいんですけど、あまり旧作に浸らないほうがい
        いんでは」

 生井美夫 「環境が大切なんだ。新作の想を練るためにはステップが必要
       なのさ」
    と、開いたままのノートパソコンをちらっと見る。

 ミサキマサキ「俺だったら、すぐに倉庫へ入れちゃうがな」

 生井美夫 「次は、あれを船の中へ運ぶとしよう」
    と、部屋から出ていこうとする。

 ミサキマサキ「うん? あれ、そうか忘れちまった」

 生井美夫 「な、なんだって」
    と、足を止めて振り返る。

 ミサキマサキ「今度、持ってくるよ」

 生井美夫 「しょうがないな。いいよ、俺が取りにいく」

○  羽黒山・ロケバスの中

    女剣士に扮した鷲見里子が、姿見で衣裳とメイクをチェックする。

    頬についた傷を確認し、付き人の呼びかけに頷く。

○  河口湖の家・洗面室

    シェービングクリームをつけ、髭を剃る生井美夫。

    顔を洗っているときふと違和感を覚える。

    だれかに見られているような気がする。

    振り返り、再び鏡を覗き込むが何も異常はない。

○  羽黒山・参道

    杉木立に囲まれた山深い道を、前方を見据えるように歩く里子。

    道具係が近づいてきて弓矢を渡される。

    目前に五重塔、その傍らに虚無僧が立つ。

○  草木染め教室

    カルチャーセンターの草木染め講座。

    実地に試作する女性受講者たちの間を見てまわる生井由佳。

    と、異様な色の染液が抽出されていることに気づく。

○  中央高速道・上り

    ピックアップ・トラックを運転する生井美夫。

    車内に流れる風変わりなプログレッシブ系音楽。

    大月ジャンクション手前で同型の車とすれ違う。

    合流してまもなく、後続車のパッシングを受ける。

    再三繰り返したあと、生井の車を追い越していく。

 生井美夫 「(独り言で)おいおい、気をつけろよ」

    しばらくすると大型バイクの集団が近づいてくる。

    先頭のフルフェイスの男が何事か合図をし、走り去る。

 生井美夫 「(独り言で)えっ、なんだって」

    さすがに気になって、車を路肩に停める生井。

○  同・路肩

    ひと通り車を点検するが、どこにも異常はない。

    ガードレールに腰を落とし、煙草に火をつける生井。

    そして突然、カメラのほうを睨みつける。

    まるで別人のような相貌。

○  ミサキ工房・外観

    東京下町。倉庫街の一角に佇むミサキマサキの仕事場。

○  同・アトリエ

    エンドレスに流れるサンプリング系CD。

    乱雑な空間におどろおどろしいクリーチャーやマスクが並ぶ。

    中央で足を広げる、分娩間際の女性の下半身。

    奥のテーブルに乗せられた鷲見里子のフェイスマスク。

    と、床下に倒れているミサキマサキの死体。

    目を見開いたまま。

○  音楽スタジオ・受付

    元は美しそうなサイケ風の女性に生井美夫が顔を寄せる。

 生井美夫 「事務所にここだと聞いたんだけど、作曲家の尾佐高士さんが
       いるのはどのスタジオだろう?」

 受付の女 「第4、2階」

    簡潔に答えるその顔を生井が感心して眺める。

 生井美夫 「どうも」

○  羽黒山・山中

    杉の巨木にもたれ、弓を構えてあたりを窺う鷲見里子。

    必死に息を静めようとしている。

鷲見里子 「(つぶやくように)どこに隠れている」

○  草木染め教室

    植物を煮たらせ、色素を抽出している容器を見つめる生井由佳。

    そこへ菜箸を入れ、注意深く観察する。

 生井由佳 「(つぶやくように)どこで採ってきたの」

○  音楽スタジオ・ロビー

    静寂に包まれたスタジオ前のロビー。

    パイプ椅子に生井美夫がぽつねんと座る。

    やがてドアが開き、数人のスタッフが連れ立って出てくる。

    奥からリミックスされた声明が聞こえてくる。

○  同・ミキシングルーム

    操作卓に向かい、ふんぞり返っている様子の尾佐高士。

    と、腕が肘掛けからはずれ、椅子が回転する。

    目を見開いたまま息絶えている。

    足を踏み入れた生井美夫がかぶりを振る。

○  同・ロビー

    走り抜ける生井美夫。

○  同・受付

    階段を下りてきて先ほどの女性に目をやる生井美夫。

    と、中年の男性と顔を寄せあい、イチャイチャしている。

    ちらっと振り向いたその男は、まぎれもなく生井自身である。

○  同・階段

    とっさに体を引く。

生井美夫 「(独り言で)見つけたぞ」
    と、そっと覗き込む。

○  同・受付

    サイケ風の女性のほかに姿がない。

 生井美夫 「あの野郎、どこへ行った?」
    と、あわててその前を走っていく。

○  羽黒山・山中

    矢を切らし、弓を背に森の中をさまようように駆ける鷲見里子。

○  男体山・山中

    草木採集のため、籠を担ぎどんどん森の奥へ分け入る生井由佳。

○  街の中

    大通りまで走ってきて左右を見渡す生井美夫。

    一つ先の交差点を折れる自走式ロボットが見える。

    その姿を追って角まできたとき、生井の車と同型のピックアップが
    迫ってくる。

    生け垣へと身をかわすが、車はそのまま走り去ってしまう。

    折れた枝葉をつまみ、なぜか笑いが込み上げてくる生井美夫。

○  撮影所・正門

    ピックアップトラックが入っていく。

○  同・スタッフルーム

    デスク前のプロダクション・マネージャーと、ソファに腰を落とす
    生井美夫。

    乱雑だが閑散とした雰囲気。

 プロマネ 「一昨日から富士方面でロケしてますから、週末にならないと
       本隊は戻ってきませんよ。こっちは大道具さんがステージの
       建て込みをしてるだけですので、静かなもんです。来週には
       クランクアップですしね」

 生井美夫 「カメラマンの堀江さん、このあと羽黒山へ応援に呼ばれてる
       って聞いたけど」

 プロマネ 「ああ、あっちの組、スケジュールが延びて、大変みたいです
       よ。鷲見里子、またやっちゃってるようですし」

 生井美夫 「なに?」

 プロマネ 「監督、言ってたじゃないですか。彼女がのめりこむと、他人
       の役ばかりか自分の役まで食ってしまうって。それが原因で
       あのとき降板に追い込まれたんですよね」

    苦笑しつつも、生井は何かしら思い定めるような表情。

 生井美夫 「……ところで今日、この俺を見かけなかった?」

 プロマネ 「はあっ?」

○  同・ステージ

    薄暗い空間へ生井美夫が入ってくる。

    ブルーバックに建て込み中の日本庭園のセット。

    どん突きまで寄って青い壁を叩いてみる。

    ありもしない合成の景色を確かめるように。

○  中央高速道・下り

    生井美夫の運転するピックアップトラックが走る。

    携帯電話が鳴り、訝しげに表示を見てスピーカーに切り替える。

 電話の声 「おお、ミサキだけど、今どこにいるんだ」

    生井は何も答えない。

○  ミサキ工房・アトリエ

    自らの死体を抱きかかえ、それをテーブルに横たえながら話す。

 ミサキマサキ「ちょっとショックが強すぎたかな。いくら待っても戻って
        こないし、連絡ひとつなく、だれかがやってくるわけでも
        ないから心配になってきたんだ。悪気はなかったが、創作
        に煮詰まって袋小路にいるようだったから、気を紛らわせ
        てやりたかったんだ。……おい、聞いてるのか」

○  中央高速道・下り

 生井美夫 「ついに見つけたよ」

 ミサキの声「なんだって」

 生井美夫 「だから、ステップが大切だって言ったろ」
    と、携帯を助手席へ投げ捨てる。

○  ミサキ工房・アトリエ

 ミサキマサキ「えっ」
    と、雑音だらけとなった携帯を見つめる。

○  中央高速道・下り

    車をいちだんと加速させる生井美夫。

    左手に富士山が見える。

○  羽黒山・小屋の中

    ゴザの上に伏せている鷲見里子。

    目を開け、身を起こそうとするが、節々が痛んで顔をしかめる。

    その視線の先に、刀を研ぐ虚無僧の後ろ姿。

○  男体山・滝の前

    草木でいっぱいの籠を背に谷間へ出てくる生井由佳。

    水筒に水を入れようとして、滝の下をはっと見つめる。

    一心不乱に滝に打たれる山伏らしき人間が見える。

○  富士スピードウェイ・実景(マジックアワー)

    周回するテストカー。

    ファインダーから眺めた富士山に赤い稜線が浮かぶ。

○  同・テストダイナミックエリア

    コース越しに実景を狙っている撮影隊。

    狙いどころのアングルにきたその瞬間、ファインダーを覗いていた
    カメラマンの堀江和昌が倒れる。

    駆け寄るクルーとあわてるスタッフたち。

    あたりは徐々に宵に包まれていく。

○  病室(夜)

    医療用ベッドで休む堀江和昌と、その横で椅子に座る生井美夫。

 堀江和昌 「(うなだれたように)……きみはどう思う?」

 生井美夫 「(しばらく凝視したあと)ずっとがむしゃらに頑張ってき
       て、疲れがたまったんでしょう。映画から離れることもとき
       には必要です」

 堀江和昌 「それにしても……。あれを見たときに、なぜだかきみがすぐ
       近くにいると感じたんだ。まさかこんなふうに会うとは思い
       もしなかったが」

 生井美夫 「……」

 堀江和昌 「鷲見里子、やはり降ろされたそうだ」

    顔を上げ、相手の目をじっと見つめる生井。

    と、ドア口にもう一人の生井美夫が現れる。

 生井美夫´「……ぼくにも見えましたよ。お互い、映画屋ですからね」
    と、まじめな調子でつぶやく。

    唖然とした様子の堀江和昌。

    そして膝をがくがくと震わせる生井美夫。

    立ち上がり、ドア口へ詰め寄る。

 生井美夫 「おまえに何がわかる!」
    と、その姿を追って廊下へ消える。

    部屋はそのまま静まり返る。

○  嘆壺・内部

    髪をふりほどき、真剣な面持ちで覗き込む生井由佳。

    じっと耳をすませる。

    やがて手を差し入れ、一枚の葉っぱを取り出す。

○  杉並のマンション

    書斎のドアを閉め、生井由佳が廊下へ出てくる。

○  同・ベランダ(夜)

    鉢植えの並ぶベランダに立ち、夜空を仰ぎ見る由佳。

    そして葉っぱを風に飛ばす。

○  ハイヤー・車内(夜)

    私服に戻り、窓に映る夜の景色を眺める鷲見里子。

    すんだ星空の中に月山の稜線が浮かんでいる。

○  羽黒山・大鳥居(夕方)

    山里の田園地帯。

    映画衣裳のまま鳥居の脇に立ち、月山を望む鷲見里子。

    そこへ付き人と監督らしき人間が歩み寄ってくる。

 鷲見里子 「(独りごつように)……わかってるよ」

○  ハイヤー・車内(夜)

    鷲見里子を乗せたまま走り続けるハイヤー。

    やがて山形空港が見えてくる。

○  河口湖の家・外(夜)

    走り込んできたピックアップトラックが急ブレーキ。

    すかさず生井美夫が駆け降りてくる。

○  同・リビング

    扉を開けて入ってくる生井美夫。

    部屋にあった宇宙船とロボットが消えている。

 生井美夫 「(つぶやくように)わかってるさ」

    テーブルへいき、開いたままのノートパソコンに触れる。

○  液晶モニター

    漆黒の画面にモーション・グラフィックみたく浮かんで消える文言
    「たった一人のリアリティ、きみに捧げるディテール」

    最後に閃光を放って溶暗する。

○  リビング

    ノートパソコンと向き合う生井美夫。

    頭の中を必死に回転させながらキーを打つ。

    念仏を唱えるような不思議な音階。

    ディスプレイの光がその顔を照らす。

○  河口湖ステラシアター(夜)

    野外映画フェスティバルの会場。

    舞台上方にある富士の黒い稜線。

○  ピックアップトラック・車内(夜)

    湖畔沿いの道路を運転する生井美夫。

○  河口湖ステラシアター(夜)

    客席後方にリモコンを握った技師が立ち、DLPと照明のテスト。

    スクリーンに設定画面やグリッドが浮かび、画角、輝度、色味など
    を調整中。

    と、客席に現れる生井美夫。

 技師   「あ、生井さん。今夜は会場チェックです。わざわざこんなと
       ころまで」

 生井美夫 「本篇は映さないのかい」

 技師   「予告篇でやります」

 生井美夫 「そうか、同席させてもらうよ」
    と、客席にゆっくり座る。

○  樹海の林道(夜)

    助手席に嘆壺をくくりつけ、軽乗用車を走らせる生井由佳。

○  河口湖の家・外(夜)

    駐車スペースに停まったタクシーから鷲見里子が降りてくる。

    運転手がトランクからスーツケースを取り出す。

○  同・リビング

    扉を開け、明かりの消えた室内へそっと入ってくる里子。

○  河口湖ステラシアター(夜)

    星の瞬く富士上空に光を放ちながら飛んでくる物体。

    徐々に近づいてきたのはカプセル型の宇宙船。

    スクリーン上で着陸態勢、やがて森の中へ降り立つ。

    予告篇の、不条理なエンディングとみごとに合体する。

    黒味に現れるクレジット「『WHICH』近日公開!」

○  河口湖の家・外(夜)

    ピックアップトラックが停まり、おもむろにドアが開く。

    考えあぐねた顔つきで降りてくる生井美夫。

    玄関の鍵を開けようとしたそのとき、鈍器のようなもので後頭部を
    殴られる。

    伏すように倒れる生井美夫。

    再び鈍い音。

    目をむいたまま虫の息。

    そこへ車がやってきて、ヘッドライトが犯人を照らす。

    眩しそうに顔をそむける奥野広実(その壱の主人公)。

    セダンから降りてくる芥子川昌(その弐の主人公)。

 芥子川昌 「……やっちゃったのね」

 奥野広実 「(うつむき加減に)うん」

○  森の中(夜)

    穴を埋め終え、スコップで叩く奥野広実と芥子川昌。

    落ち葉をかぶせ息をつく。

    見つめあう二人。

 芥子川昌 「私、映画を売るためアメリカに行くわ」
    (そしてその弐へ)

 奥野広実 「新作のヒントを探しに、私もベトナムの友達へ会いに行く」
    (そしてその壱へ)

○  河口湖の家・リビング(早朝)

    部屋の中央に扉が開いたままの宇宙船が鎮座する。

    その中で下着のまま眠っている鷲見里子。

    と、サッシの窓を叩く音。

    それを開け、生井由佳が入ってくる。

    腕の中には小さな赤ん坊。

 生井由佳 「堕ろしてなかったんだね」

 鷲見里子 「……私の赤ちゃん」
    と、宇宙船の中から手を差し伸べる。

<終>

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