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弁理士業務とコンフリクトについて

こんにちは、40代弁理士の石川です。GWの初日に、家族と皇居外苑を見物してきました。あいにくの雨模様の天気でしたが、楠木正成像を見ることができました。想像以上にでかい像でしたね。

楠木正成公は、義に殉じた武将です。我々弁理士も楠公ほどではありませんが、守るべき弁理士倫理というものがあり、行い得ない業務(利益相反:コンフリクト)があります。今日は、弁理士業務とコンフリクトについて書きます。

弁理士がお医者さんと違うところ

以前に、大手特許事務所に勤務すれば、大病院に勤務するお医者さんと同じように、様々な悩みをもった依頼者に対応できるために、腕を磨くことができる点についてお話しました。

弁理士業は、医師業とは全く異なるために、そもそも比べること自体が妥当かという問題はありますが、決定的に違うことがあります。それは、お医者さんであれば、基本的にどんな患者さんでも受け入れることができますが、弁理士は、どんな依頼者からの依頼でも受けられるわけではありません。

分かりやすく例を挙げて説明します。

弁理士Aは、長年、焼き菓子の製造販売を生業とする中堅企業Bの特許出願の代理を行ってきました。その弁理士Aに対して、冷凍のケーキの製造およびインターネット販売を生業とするベンチャー企業Cから出願の依頼があったとします。依頼内容としては、「従来から、焼き菓子に使われてきた技術であるが、一部の工程を改良することで、冷凍ケーキに対して有用であることが分かったので、是非ともこの内容で特許出願をしたい。」そういう内容であったとします。

このような依頼があった場合、弁理士Aは頭をかかえることになります。せっかくの機会なので、ベンチャー企業Cからの出願依頼を受けたいところですが、それを受けてしまうと、古くからの付き合いのある中堅企業Bに対して複雑な思いを持つことになります。

ベンチャー企業Cの出願が出願公開されれば、公開公報には、代理人として弁理士Aの名前が明記されます。そして、中堅企業Bの担当者がこの公報を見たときにどう思うのか。

両社の技術が、技術的な観点から、きちんと切り分けることができるのであれば、弁理士Aは、中堅企業Bの担当者に対しても堂々と説明することができます。しかし、実際には、微妙なケースもあり、なかなか悩ましいところです。

さらに言えば、将来、中堅企業Bとベンチャー企業Cとが特許で紛争になってしまったら、一体どちらの味方をするのか。これが利益相反の問題です。弁理士として、信用を失墜させる行為につながりますので、非常にセンシティブな問題です。八方美人は許されないということになります。

なので、せっかくの出願依頼なのですが、古くからのお付き合いもあり、お断りせざるを得ない、そういう状況もあり得るのです。まさに、楠公のように義に殉じる必要があるわけです。

まとめ

上記の例から、弁理士は、どんな業務でも受けられるわけではないことをご理解いただけたと思います。楠公ほどでないにせよ、高い倫理意識が求められます。私も、改めて気を付けたいと思いました。

おまけ

ちなみに、GW初日は、皇居外苑の散策のあとに、水道橋駅近くの読谷食堂で、沖縄そば(ソーキそば)を食べて帰りました。おいしかったです。読谷食堂って、読谷村ののどかなイメージが広がって、なんとも懐かしくていい名前ですね。

私の沖縄に対する思いについては、改めて別の機会に語りたいと思います。

弁理士の石川真一のフェイスブック
facebook.com/benrishiishikawa

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