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弁理士業の魅力 大手特許事務所の魅力

こんにちは。40代弁理士の石川です。当方、過去10年以上、総所員数100名以上で、且つ日本を代表するような伝統ある大手特許事務所に在籍しておりました。この期間は、私の弁理士としてのキャリアを形成するうえで、無くてはならない有意義な期間でした。

このため、今日は大手特許事務所で勤務をして、良かったと思うことを書きます。なお、この稿では、弁理士や事務員を含む総所員数100名以上を大手特許事務所と定義していますが、業界内に何か明確な定義や目安があるわけではありません。

これから弁理士を目指す志のある学生さんや技術者の方にとって、弁理士としてのキャリア形成のイメージをつかんでもらえたらと思います。

1.メインストリーム業務の強化を徹底できること


総所員数100名以上の大手事務所では、業務が徹底的に効率化されるため、その結果、業務が細分化・分業化されています。例えば、電気系の特許明細書を作成する部署の人間はひたすらその業務をこなし、商標登録出願業務を行う部署ならその業務を中心に行います。外内特許部署であれば、外内特許出願(外国企業が日本国へ出願する特許出願)をメインにこなし、事務の部署であれば事務をこなします。事務においても、外国事務、国内事務のように、分業体制が敷かれていることが多いと思います。

私は、機械系の特許明細書を作成する部署に10年以上の長い期間在籍していました。その間、主に、機械系特許明細書を作成の業務を中心に行いました。(その後、異動の希望を出し、私の本来の専門である化学・バイオの部署に異動しました。)

ここで良かった点は、基礎中の基礎である国内明細書の作成を徹底的に仕込まれたことです。今後の弁理士としての人生を歩むうえで、非常に役立ちました。

特許出願業務を行ううえで、王道ともいえるのが、

基礎日本出願 → PCT出願 → 各国移行 又は 基礎日本出願 → パリルートによる外国出願

の流れです。
これが、特許事務所における業務のメインストリームになります。このようにPCTを含む外国関係の業務は、特許事務所にとって最も収益のあがる業務でもあります。なかでも、最も重要なのが、基礎となる最初の日本出願です。

これをしっかりと作り込むことで、その後の外国などでの拒絶理由通知に対する応答が楽になります。また、日本出願から外国語への翻訳(翻訳チェック)も、重要な仕事になります。

さらには、米国、欧州、中国などへの各国移行手続き、各国移行後の中間応答処理など、重要な仕事が目白押しとなっています。

大手特許事務所では、これらメインストリームとなる業務を徹底して行うことで、これらの各手続きでの知識の定着を図ることができます。基礎を身につけるという意味では、これほど重要なことはありません。これらを一通り学ぶことができるということは、大手特許事務所で働く大きなメリットであることは間違いありません。

これができるのは、大手特許事務所のクライアントは、大手企業であることが多いからです。大手企業でなければ、そもそも、外国出願を各国にする財政的な余裕がありません。

小規模特許事務所での業務では、なかなか外国出願までの一連のスキルを身につけるのが難しい場合が多いのです。なぜなら、小規模特許事務所のクライアントは、中小企業であることが多いからです。

2.師匠となる方が沢山おられること


大手特許事務所では、良くも悪くも、人財が豊富です。特許庁から来られた弁理士の先生もおられれば、企業の知財部長であった弁理士の先生もおられます。或いは、事務所のたたき上げで幹部になられている弁理士の先生もおられます。

何かわからないことがあれば、事務所内の誰かに聞けば解決するというのは、大変なメリットです。

また、明細書作成をするにあたって、OJTで業務を覚えていくことになりますが、その際に多くの先輩方も指導に当たってくれます。私も、数多くの先輩に懇切丁寧に指導を受けたおかげで、しっかりと基礎を身につけることができました。

特許庁出身の弁理士の先生からは、特許庁の考え方を教えていただくことができます。企業の知財部長であった弁理士の先生からは、契約について教えていただいたり、企業同士の交渉(ネゴシエーション)について多くの指導をしていただいたりすることができます。

とにかく、大手特許事務所は、良くも悪くも、教えを乞うことができる人財が豊富なのです。

同僚の間で、将来のための人脈を作ることもできるでしょう。

また、人間同士ですから、馬が合う・合わないの問題も生じることがあります。こちらも心配は不要で、大手特許事務所であれば、人が沢山いるので、馬が合わない人からは、異動をすることで逃れることができます。これも、小規模特許事務所では難しいので、メリットの一つと考えられます。

3.業務の種類も豊富であること

上記メインストリーム以外にも、大手特許事務所には、様々な相談事が舞い込んできます。これらのいろいろな案件を扱うことができることも、大手特許事務所で働く大きなメリットとなります。特許異議申立であるとか、特許無効審判であるとか、欧州での異議申立であるとか、調査の依頼であるとか、侵害有無の鑑定であるとか。

要するに、お医者さんが大病院で腕を磨くのに近いです。大病院には、様々な症例の患者さんがこられるので、医者としてのスキルを向上することができます。弁理士も同様です。大手特許事務所であれば、外国代理人との国際的な会合に参加するなど、上記メインストリーム以外の様々な活動・業務に参加することができます。

4.経済的にも安定すること

20代、30代の若手時代には、給料もどんどん上がるので、経済的にも救われることになります。また、事務所の規模が大きくなれば、経営的にも安定してきますので、安心・安定を求める今時の若者の思想信条にもマッチしていると思われます。

特許事務所というと、個人事業主に雇われている従業者であることが多いのですが、大手特許事務所の所員としては、どちらかというと、会社に就職したようなイメージに近いものがあります。

大手特許事務所になると、福利厚生もそれなりに充実してきますから、所員としてそれの恩恵を受けることもできます。

5.オフィスもきれいで快適であること

大手特許事務所ともなれば、都心の一等地にオフィスを構えることになりますから、毎日きれいなオフィスで快適に業務をこなすことができます。こちらも、社会人生活を送るうえで、大きなメリットになるのではないでしょうか。

やはり、一日8時間からそれ以上の時間を過ごす場所ですから、快適であることに越したことはありません。

以上、弁理士業の魅力として、大手特許事務所の魅力について説明しました。次回は、小規模特許事務所の魅力について書く予定です。

ぜひ、上記を参考に、弁理士としてのキャリアを積んでいっていただけたらと思います。

また、これから弁理士を目指そうという方の、最初の一歩の後押しとなれば、これ以上の喜びはありません。


弁理士の石川真一のフェイスブック
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