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俳句・短歌など

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#俳句

二十句「Tapirus paradoxus」

「Tapirus paradoxus」

ゆきを鳴らす竹林の永い耳

楽譜にて迷うばくにて繁茂する

ecritsとはばくを纏った愚鈍だらう

半目してばく透おると、と、共に雪は成る

ともあれ花疲れにもばくが来る

旅人に究す朔日のとらんぺっと

旅人や無地の時間を来て帰る

無視したやみの目の端で思い出すヘヴン

走るにたた立つてもう昔の竹林

(ばくは巧妙で重い)
決断をはみだす脳をばくが奪

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二十句「Ornithorhynchus paradoxus」

「Ornithorhynchus paradoxus」

蜂を溶かすかみなりの薄い舌

やがてに、に、似るリボンが不思議な水

海市や量子を通るかものはし

原理的にかものはしが虹の中央にいる

かものはしのゆめに渡る電撃と明晰

古びればかものはしか平仮名かわからない

宇宙服かものはしの目に切株ふえる

口語であればかものはしに蜂が湿る

(かものはしはたしか左利きだった)
雪宛てに文字の書け

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百句:第六回芝不器男俳句新人賞城戸朱里奨励賞受賞作品

「Prometheus」

火を消して一身体の一世界
眼奥の昏きを隔ち羽音くる
優曇華の忘れを不二の辻に置く
夜藍の大花野より魔女二人
海百合の頸吊の木のえくれえる
唯一のこの青空やKARASHINAや
盲目の馬の進むや大枯野
くちなわの口より双の犬生れる
霞より出でる腕に鹿滅ぶ
神でないものが祈りを聞きにけり
遠雷や時間に棲まる雀蜂
接続に無があれば飛ぶ垂直の鳥
表象の眠りどこまでも象の皮膚

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六句:過去作

外在する(遠雷、ヴードゥーの蜂は這い回る<色>)自我

凍てる大河にタカダーヴィチ・ゴクシャノフの夜が昇る

夜汽車やソルボンヌに昇る歌劇のsūtra

芸術論の出来をアウシュヴィッツの林檎が隔つ

沛艾のイコンや閉鎖病棟に蟲の遊泳

光線消失火に向う老犬が非時の躍動へ帰る

五十句「終焉する歴史、無限」

「終焉する歴史、無限」

火を消して一身体の一世界

接続に無があれば飛ぶ垂直の鳥

表象の眠りどこまでも象の皮膚

羆立つその絶頂の銀の夜

だしぬけにいる蜥蜴だしぬけに死ぬ

速度より駿馬の産まれ青嵐

名なき犬幸福として野分立つ

ここに茸あそこに茸のくらい夢

梟の調停ガラスの森を呼ぶ

白鳥の啓く光球に眼玉がある

沛艾や時の昇りを堕としゆく

不可解な低さを兎どこまでが春

物質の起源

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二十五句「神は退隠してゆく」

「神は退隠してゆく」

眼奥の昏きを隔つ羽音聞く
優曇華の忘れを不二の辻に置く
夜藍の大花野より魔女来たる
苔深き鳥頭観音腕無し
海百合の頸吊の木のえくれえる
対の枝の間祈りの反時間
白桃を真中にして大日輪
唯一のこの青空やKARASHINAや
産道の傾斜まつすぐ花菜海
花触る花絶ている大鏡
純粋を喰ふや静かに滝落ちる
霧雨の速度に奥の夕薫る
深き凪 先ず首堕とす曼珠沙華
盲目の馬の進むや大枯野

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