五十句「終焉する歴史、無限」


「終焉する歴史、無限」


火を消して一身体の一世界

接続に無があれば飛ぶ垂直の鳥

表象の眠りどこまでも象の皮膚

羆立つその絶頂の銀の夜

だしぬけにいる蜥蜴だしぬけに死ぬ

速度より駿馬の産まれ青嵐

名なき犬幸福として野分立つ

ここに茸あそこに茸のくらい夢

梟の調停ガラスの森を呼ぶ

白鳥の啓く光球に眼玉がある

沛艾や時の昇りを堕としゆく

不可解な低さを兎どこまでが春

物質の起源に蜂の音混じる

蜜垂らす蛇を解剖けば割れ鏡

盲目の老婆に関係なく烏

古の正三角を犀がゆく

洞窟の和音ひとつも無い日曜

蝙蝠を伝承に棄て闇は無し

真夜中を透けつつ歩く哲学の鳥

六番の獅子の落下によく光る

移らじは重力にある詩歌の虎

鴎来て真水に棲まる赦しかな

比喩の火を踊るくらげが阻んでいよう

その後八足の猫は戻らない

始点にして真円pommeがhommeを曳く

簒奪にして流麗ètoileを並ぶhistoire

磔刑の霧に循環する思想

王権をふたなりの鹿走り過ぎ

博物は冷酷を成す 白色のガレオン!

膣の楕円に沈めば月桂樹が勃つ

移気の空木の不死の少女性

光や超越の痕跡は花だらけ

有限なれば枯野も炎 月二つ

機械に<竜>を眠らせ男の繁栄

巫の飛翔いかづちまず神酒に

暗示する卵そのなかに、しかし、

酷暑日の石を葡萄にする造語

造語として織られた襞に住む

蜜蜂telepathこおりの星は鎖骨あたり

羅漢の椅子にネズミの数字を分析しよう

一角獣の偽史にふたなりを末裔する

純銀と真水の鋭角虚構を許す

突風や天使は翅を孵しつつ

冬眠を覚めずidéeの窓を開け

火を聴く梟かいなの果てに智を聴くか

古遊戯や廻る花天のrivière

虎杖は斃れば火星の永遠廻り

桜蕊燃ゆ遍くを我として

火渡りに天地満たすpsykhēや

破局、その昇りに生まるほととぎす

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