二十五句「神は退隠してゆく」

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「神は退隠してゆく」

眼奥の昏きを隔つ羽音聞く
優曇華の忘れを不二の辻に置く
夜藍の大花野より魔女来たる
苔深き鳥頭観音腕無し
海百合の頸吊の木のえくれえる
対の枝の間祈りの反時間
白桃を真中にして大日輪
唯一のこの青空やKARASHINAや
産道の傾斜まつすぐ花菜海
花触る花絶ている大鏡
純粋を喰ふや静かに滝落ちる
霧雨の速度に奥の夕薫る
深き凪 先ず首堕とす曼珠沙華
盲目の馬の進むや大枯野
獣神の眠処に滴つ銀櫻
くちなわの口より双の犬生れる
霞より出でる腕や鹿滅ぶ
神でないものが祈りを聞きにけり
白狒狒の独り笑つている泉
まぐわひの機械に蟻のともぐひ
牛の首は在る暗きの行止り
終の樹の眺めや孵るこの非意味
蝸牛通り無限が一つ減る
結び草からだ手放し闇に浮く
遠雷や時間に棲まる雀蜂

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