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ARR10億を目指すのにセールス/マーケでやったこと3つのこと

Ubieの柴山です。Ubie Ai Consulting という組織の代表と、Ubieの事業開発を担当していました。

PMF前のプロダクトをARR10億に押し上げるまでの道のりをまとめました。PMFの過程、セールス、マーケティングの検証方法の事例を紹介したいとおもいます。

##読者想定
- 事業会社(上場企業)でセールスマネージャーを経験している。
- 事業会社(上場企業)でマーケティングマネージャーを経験している。
- ベンチャーへの転職を検討している

##今回の記事を読んで得られること
- PMFする前のプロダクトをスケールさせる方法
- 0からのセールスプロセスの構築方法
- 0からのマーケティングプロセスの構築方法
(※組織の拡大については後編で語ります)

##前提
- 医療領域のバーティカルSaaSにおける思考実験の検証結果です
- 世の中に存在しないカテゴリの0からの思考実験です。
- 当初はPMFしていなかった、辛かった。
- Ubieはディペロップメント組織と、スケール組織の2つの組織が存在します


1.PMFまでの大きな3つの課題

PMFもせずビジョンセリングで売れた時代からどのように、販売実績を構築してセールス/マーケティングの指標を安定化させたのか。ここまでの道のりは下記の通りです。

課題1. 代表が東大卒の医師。関係性で売れていたため、本質的なニーズはわからない問題

Ubie株式会社代表は東大医学部卒業の医師です。医師の中でも東大卒業ということで、顧客がまともにとりあってくれました。ニーズドリブンではなく、東大卒の医師卒ドリブンセールス。いろんな医師講演会に乗り込んだり、セミナーに参加して代表自ら、権威ある医師に「医療のあるべき姿」を語り、ビジョンセリングを行っていました。僕らは、「世界の未来のためにいいことをしている」という自負はありました。

しかしプロダクトがお客さんの課題を解決していると自信を持って言えませんでした。印象的な出来事といえば、営業がお客さん先で、slackでエンジニアにバグを伝えてチューニングをしながらサービスのDEMOをしていることもありました。ヒリヒリしました。そして出先についていた時に発生していたバグを、数分の間に調整してくれるエンジニアチームへの対応力の高さにも安心感を覚えた出来事でもありました。


そんな状況の中でも、医療のあるべきすがた、未来への共感を通じて、応援して商品を購入してくださっていました。本当に心から医療業界には素晴らしい素晴らしい志をもった先生がいると感じております。

課題2. サービスは購入されていたけど、実績がない。何のためのサービスかわからない問題

代表のビジョンと顧客との関係性で商品は売れていました。しかしサービスから果実(クライアントの実利の証明)は得られていませんでした。なぜ売れているのか冷静に考えるとわからなくなりました。


プロダクトが売れ始めた当初は、ある病院にサービスが売れたという実績しかありませんでした。なぜならば初期に購入してくださる先生方は、ビジョンに共感するイノベーターセグメントであることが多かったからです。病院に営業に行った際、「著明なXX病院で実績があります」と伝えても、「XX病院は、あたらしいもの好きだからね」と一蹴されてしまします。イノベーターを超えて、アーリーアダプターに販売をするには、実績が必要です。

しかし我々には商品を活用して得られる実績を証明できていなかったのです。それゆえに、どこに営業いっても我々の商品が顧客に役立つのか証明できませんでした。唯一戦える武器は、「志」と「著名病院での販売実績」です。そのためビジョンセリングをしながらも、効果実績をつくることに翻弄しました。

課題3. ニーズはわかった!?顧客を獲得する方法が皆無問題

サービスの効果実績を構築することに成功しました。しかしニーズがどのセグメントにあるのかよくわからない。お問い合わせは月1-2件、4件もリードが獲得できたら心から喜んでいた時代です。「世の中には、このニーズないのでは?」とさえ思っていました。

どのようにマーケティングするのかわからない。「病院向けのマーケティングチャネルなんてないやん。俺は間違った会社に入ってしまったかもしれない」1万とんで3回思った記憶もあります。当時はリード数のN数がたりなくて正しいセールスプロセスも検証できない。全然拡大できる気がしない。そして成果がでなすぎて、僕は倒れて気付いたら病院で点滴するほどにすり減っていましたw

この時期はめっちゃつらかった。本当につらかった。何やっても成果でないんだもん。

課題フェーズのまとめ
ステップ1:関係性売りを突破する
ステップ2:実証すべき効果を明確にする必要がある。
ステップ3:適切なSTPの制定とマーケティングメトリクスの検証

2. 1-10に拡大するまでにやったこと

上記の課題に出会う中で、ここでは1-10のプロセスを構築するまで仮説検証したことをまとめています。イメージとしてはARR10億達成のためにやったことをご紹介します。それ以降の10-100の組織化についての検証はまた続編でお伝えする予定です。

※PMFしているかどうかについてはこちらの記事を参考にするといいと思います。
https://note.com/kenichiro_hara/n/nec3b6d791039


3.サービスの効果の証明


まずは何よりも実績をつくること。何がメリットなのか証明することに注力しました。


3-1.現場で成功事例を構築する
とにかく顧客から情報を得るために現場にいきました。現場で課題をヒアリングしては、構造化の繰り返しです。顧客が何に困っているのか仮説を作ります。我々は業務効率化SaaSを提供しているので、本質的にやっていることは、クライアントの業務プロセスのアウトソーシングです。顧客の業務プロセスを整理、どのプロセスを代替できるのかを考えます。それによってどの程度メリットを提供できるのか、ストップウォッチを使いながら地道な測定を繰り返しました。

当初は効果がでないことばかりでしたが、仮説と検証を繰り返す中で、業務プロセスの改善において効果がでるポイントが明確になりました。そして実際に顧客の業務時間を1/3にするという実績を構築することに成功したのです。

これは社内に医療の現場を理解している医師がいたことも大きいですが、営業が朝から晩まで病院に入り込みながら観察をくりかえし、「一番のコアな価値は何か?」問い続ける日々が続いたことから見出せたのではないかと思います。

3-2.セグメントを策定する:ニッチにフォーカス
数値改善実績を手に入れた次は、どのセグメントに売るか重要なテーマでした。病院はたった8,000しかないマーケットです。提供価値のでない効果のないセグメントに売ってしまえば、サービスの効用が得られずプロダクトの悪評はあっとういうまに広がり一瞬で売れなくなるリスクがありました。

それゆえ、得られた実績を出すための条件を整理し、価値提供できる特定セグメントを整理しました。この整理も簡単ではありません。

一般に出回っていない情報を、パワープレイで収集して適切なターゲットリストを構築しました。売れて実績がつくれたからといって、全展開せず、我々が本当に価値を提供できる顧客を特定した上で展開をしたことが次なる成功の種となりました。


3-3.センターピンから落とす
重要セグメントを攻略する中で特に重要だったのが、センターピンから攻めることです。セグメントの最初の獲得単価と、後の顧客の獲得単価では、100倍以上の開きがあります。

しかし、それほどのコストをかけてでもセグメントの最初の顧客を重視しました。影響力のある顧客を獲得するのとしないのでは天と地ほど後に差が出るからです。実際に我々の業界には大きな団体が4つ存在しますが、そのtop of top病院からアプローチをしました。それにより実際の実績と、おすみつきという武器を手に入れマーケティング活動を加速することに成功するのです。

サービスの価値の証明ためにやった3つのこと
1.成功事例をつくる
2.圧倒亭に価値をだせるニッチにフォーカス
3.センターピンを定めておとすこと


4.マーケティングの検証


影響力の大きな顧客を獲得したとはいえ、リードは月に2件程度でした。6件来た月には大喜び。そう、リードジェネレーションに成功しておらず、サービス拡大の見込みがまったく立っていなかったのです。初期顧客から手に入れた果実が、本当に世の中に複数存在するのか分からない状況からのスタートでした。


4-1.顧客のインタビュー


マーケティングを進める上で、初めに行ったのは顧客理解でした。ターゲットがどのように意思決定を行い、どこで認知をするのかが全くわかりません。そこで、ターゲットの医師10人ほどにインタビューを行いました。この医師を集めるのも大変でした。ですが、こうした理解がなければ全てのマーケティング施作は失敗に終わったでしょう。
インタビューの中では
- 事業を運営する上での課題意識
- ソリューションの代替手段
- 認知媒体
etc….
等のヒアリングをすすめて、どう訴求すればターゲットに刺さるのか、どこで認知をさせられるのかを明確にしていきました。それに基づいてマーケティング活動の土台をつくりました。(※こちらはPG出身のマーケ担当にhowを教えていただいたので、アレンジしながらやりました。)

自社顧客だけでは数がたりなかったので、ビザスクさん等も活用させていただきました。

4-2.チャネルの特定


「トラクション〜スタートアップが顧客をつかむ19のチャネル〜」という本を参考にどのチャネルのが筋がいいかを検討しました。

(1)バイラルマーケティング
(2)PR
(3)規格外PR
(4)SEM
(5)ソーシャル/ディスプレイ広告
(6)オフライン広告
(7)SEO
(8)コンテンツマーケティング
(9)メールマーケティング
(10)エンジニアリングの活用
(11)ブログ広告
(12)ビジネス開発(パートナーシップ構築)
(13)営業
(14)アフィリエイトプログラム
(15)Webサイト、アプリストア、SNS
(16)展示会
(17)オフラインイベント
(18)講演
(19)コミュニティ構築


上記をどう進めていくかが肝になります。これも顧客インタビューの実施により優先順位が明確になりました。どこまでいっても一番重要なのは顧客理解です。事業会社にいて既に回っているプロセスをKPI改善しているだけだと、特定のチャネルのマーケティングに強くなるだけで、どういう順番でマーケティングチャネルを検証し、資本を投下するのかといった判断を経験をする機会がありません。ここは私も苦労しました。


4-3.低コストでチャネルを検証
情報価値を見極めることも重要です。情報価値とは、試作をうち間違っている確率に、間違っていた場合のコストをかけることです。試作Aを実施50%の確率で2500万損失をするなら1250万が情報価値です。これを避けるため、2500万までいかないレベルの小さい単位で検証を行います。

何よりも大事なのは、チャネルの高速なメトリクス化です。有望なチャネルを最小コストで、どの程度の出力がでるかを検証します。様々な本に記載がありますが、初期の初期は1つのマーケティングチャネルから顧客を獲得できることが多いです。顧客を獲得できるチャネルにはなかなか出会えないと実感しました。(※顧客を獲得できてからはまた話は変わります。)

よく犯しがちなのは、最小ロットで検証せず、いきなりドカッと資本を投下してしまうミス。検証になれていないと、やってしまいがちです。その他あるあるは、デジタルマーケティングの経験しかないマーケ担当がチャネルの検証を適切にできていないケースも挙げられます。
とにかく大事なのは小ロットで素早くメトリクス化を行い、投資チャネルをみつけること。これに尽きます。

4-4.投資をする


検証を行い、チャネルがみつかった後は、投資をしていきます。メトリクスが見えているので投資は積極的です。ここにきてようやくリードジェネレーションが成立しました。営業リソースが足りないくらいリードが生まれるようになったのもこの時期です。

マーケティングの検証でやったこと
1.顧客インタビュー
2.チャネルの特定
3.低コストでチャネルを検証する
4.投資をする


5.セールスの検証

リードジェネレーションが確立され、ここから営業プロセスのテコ入れにここから入ります。8000病院しかない顧客情報はアセットと捉え、接触顧客数が100超える手前でセールスフォースを導入しました。焼き畑にせず、データを適切に残すのが重要だからです。顧客情報をアセットと捉えるか、そうでないかで、その組織における2周目以降のマーケティングに大きな影響が出てきます。こちらの詳細は10-100の文章で記載したいと思います。

5-1.顧客のジャーニーにあわせてセールスプロセスを構築する


顧客のジャーニーを策定し、あわせてセールスフェーズを構築します。リードの急激な増加によりセールス活動を安定化させる必要がありました。そのために着手したのが、セールスフェーズの定義です。商談を前にすすめるための条件を定義しながら、すすめました。顧客はジャーニー通りには動いてくれないので、最初から完璧なものを作ろうとはせず、現場の実態に即しながら1つづつプロセスの解像度を高めていきました。セールスプロセス初期の改善ポイントは、1つずつフェーズを増やすことです。


もちろん、顧客の解像度が高く初めから完璧なプロセスが構築できるにこしたことはありませんが、仮にそれが可能ならば商品ははじめから圧倒的に売れているでしょう。


5-2.セールスプロセスのメトリクス化


初期のフェーズは3つ程度でしたが、今は8まで細分化されています。(※いいか悪いかは置いておいて、見立ては正確になりました。)
どうすれば商談が前に進むのか、条件を洗いざらいにしていきます。初めから完璧なプロセスを作ろうとせず実態に合わせて1つづつ構築するのがいいと思います。特に進めるなかでやっておいてよかったのは下記です。

1. フェーズ変更の日付データの取得
2. フェーズの到達データの取得

現状では、セールスプロセスを8つのプロセスにわけ、全ての歩留りが個人ごとに可視化されています。そのため、どのフェーズでなぜ歩留っているのかをだれでも理解可能できます。フェーズごとの失注理由も全て可視化されています。

セールスプロセスのボトルネックは明確にして標準化を計ってきたため、トップセールスとボトムセールスの営業成果の差も5~10%以内におさまるようになっています。


5-3.正しく情報をいれる
フェーズつくればうまくいくわけではありません。情報が正しくはいっている必要があります。正しくインプットされていなければ分析できません。このフェーズでは全ての商談の情報をチェックしていました。

Ubieでは失注理由は承認制としています。記載が不十分であれば、顧客に追加で確認するようコミュニケーションを促します。受注理由も同様です。ポイントは顧客と綿密にコミュニケーションをとってもらうこと。答えを知っているのは顧客のみです。営業Mgrの勝手な推測で失注理由や受注理由を補足するのは極めて危険。顧客とコミュニケーションをとってバイアスを排します。

セールスの検証でやったこと
1.顧客のジャーニーにあわせてセールスプロセスを構築する
2.セールスプロセスのメトリクス化
3.セールス情報をクレンジングしていく

まとめ


1-10のプロセスでやったことをまとめてみました。後編では組織の作り方について述べます。

メトリクスを検証しながら、自身でプロセスを構築して事業化するまでは大変でしたが、いま振り返ると非常に楽しい経験です。まだまだ事業群も増え続けており、1からの事業化とそして拡大へと、やることがてんこ盛りです。これからも拡大をし続けます。追加機能の開発や、顧客数増加に伴うサクセスの重要度も増しています。

僕が最初に入社した会社は時価総額が約10倍になるほどオペレーションが強く、プロセスの改善が徹底されていましたが、戦略よりはオペレーションエクセレンスを実現する能力がみにつき、別の会社では社長の一声で全ての戦略がかわってしまうなかでの新規事業のPMFに右往左往しました。

「こんな経験できるのあと3人くらいじゃね?」って毎回思うんだけど、事業成長しすぎていて、機会は増え続けています。私と似たような経験がある方にとっては弊社は、とても楽しい環境になると思います。

上記のようなことにお悩みの方、ぜひ一緒に事業拡大を一緒にしませんか?次回はどのように組織を拡張したのかについてお伝えしたいと思います。

同じような課題で悩まれているスタートアップの方の力になれたら幸いです!気軽にご相談ください。
ご相談フォーム:https://form.run/@sales-animal

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