映画『冬のライオン』鑑賞

映画『冬のライオン』鑑賞。

……イギリス史というと、チューダー朝のあたりが特に最近、スポットが当たりやすいように思う。
この『冬のライオン』が扱うのはそこから数百年前の12世紀。
チューダー朝の前、プランタジネット朝の初代王ヘンリー2世とその家族の話。
ヘンリー2世の妻エリナー(アリエノール・ダキテーヌ)は、広大なアキテーヌ領を持つ女性で、元はフランス王妃。しかし、夫との性格の不一致など、様々な要因が重なり、離婚。
その後、11歳年下のアンジュー伯アンリ(ヘンリー)と結婚。沢山の子供たちをもうけ、「ヨーロッパの祖母」とも呼ばれた。
この二人の結婚で、現在のフランスの半分が、まるっと彼ら夫婦のものになった上、アンリにイングランド王位が回ってきて、ヘンリー2世として即位。それに伴い、エリナーも今度はイングランドの王妃になる。
しかし、結婚して年月が経つと、ヘンリー2世が愛人を囲い、怒ったエリナーが息子たちを唆して、反乱をけしかけるなど、夫婦仲は冷え切っていく。

劇中では、ヘンリーは、エリナーを十年以上幽閉。そして、息子リチャードの婚約者として幼い頃にフランスから連れてこられた王女アレスと、事実婚状態。
息子たちも、一番上(三男だが、二人の兄は既に死亡)のリチャード(獅子心王)は、母親に愛されているものの、偉大な母親の影に押され、その重圧や鬱屈から逃れるように、戦いに関心を向ける。
末っ子のジョン(後の失地王)は、父親に溺愛されたおかげで、甘ったれでヘタレ。
この二人に挟まれた二番目のジェフリーは、両親から愛されず、その寂しさを謀略で補っている。

三兄弟の中では、ジェフリーの抱く鬱屈が一番自分にはわかりやすかったかも?「欠落」を自覚し、それを他のもので埋め合せしようとしてきたものの、手に入らないものへの憧れ、渇望は決して消えず、満足できないまま。
(劇中の、母に対して「マミー」と呼んでいた場面が印象的)ただ、突き動かされ続ける。

本人たちも終盤で述懐しているが、ヘンリーとエリナーの夫婦も、どうしてここまで拗れてしまったのか。当時は、政略結婚が普通だったとはいえ。

こうして書き出してみると、王女アレスも興味深い。

台詞が長くて、映画としてはちょっと流れがもたついていたように思えるのは、原作が戯曲だからだろうか?
舞台劇として演じられるのを見てみたら、私はどんな感想を抱くのだろう。

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