徒然日記~図書館司書という仕事

「本が好きなら、おすすめの仕事」の一つ、図書館司書。

 確かに本に囲まれる職場は、理想的な環境である。

 棚を整理したり、おすすめの本をピックアップしたり、本を探すお手伝いをしたり。

 利用者のために本を探したり…。

 趣味だけではなく、仕事としても本に関わることができる。

 理想的に見えるだろう。

 はたから見れば。

 

 だが、実際のところ、その本質は、「接客業の一種」。

 カウンターでの利用者の対応は勿論、本を整理している時も、利用者に声をかけられる事は多い。

 それにいつも笑顔で、気持ちよく応える。

 それが当たり前の世界だ。

 

 だが、本が好きでも、「接客が得意でない」人もいる。

 たとえば私のように。

 もともと人前で話すのは苦手だったが(大学でのプレゼンも、いつも冷や汗ものだった)、それでも場数を踏めば何とかなると信じてきた。

 実際に、就職した当初はカウンターに入っただけでも、ガチガチに緊張していたが、それでも時間と共に、言うべき事を伝え、やるべき事をやる、という事はできるようになってきた。

 その経験は良かったと思う。

 だが、「事件はいつも現場で起きている」と言おうか。

 マニュアルではカバーしきれないことが起きるのが、接客の現場である。クレームを聞かなければならないこともある。

 大声を出されるのがそもそも嫌いだ、と気づいたのは割と最近になってからだった。

 大声を出されたり、早口でまくしたてられると、不安で頭がいっぱいになって、うまく動けなくなる。合間を縫って、対応しようにも、また相手の言葉が降ってくる。

 怖い。怖くてたまらない。利用者が。

 相手が何らかの理由で怒ってるなら、まだ納得が行く。(それでも、怖いことには変わりないし、自分が原因なら申し訳ないとも思う)

 だが、相手に自覚がない場合。地声がもともと大きかったり、早口で話す癖がついていたりする場合は、どうしようもない。

 やめてくれ、とは言えない。

 だから、頑張って我慢するように努めた。

 それでも去年、耐えきれなくなって、耳を塞いでしまったら、後で上司に叱られた。

「自分には、聴覚過敏があるらしい」と説明したが、それでも、相手に失礼なことをしてしまった事実は変えられなかった。

「カウンター業務がきちんとできるようにならないと、他の仕事は任せられない」

 上との面談の時に言われたからこそ、我慢してきた。努力もしてきた。

 だが、それでも「足りない」「もっと努力して欲しい」と言われ続けて、頭がおかしくなりそうだった。(実際に去年を思い返すと、猜疑心と劣等感の塊と化していて、明らかにおかしくなっていた)

 今はカウンターには立っていないし、それで気分も前に比べれば楽になったが、「逃げた」ことには変わりなかった。

 そして、その事が頭から離れてくれない。

 周囲が気を使ってくれているのは知っているが、私自身がこうして劣等感にとらわれている限り、良い方向には向かえない。

「接客に向いているかどうか」で、自分を見誤ってしまったことが、そもそもの原因だ。

 いくら本が好きでも、不用意に「司書が良いのでは」とは言わないで欲しい。

 なろう、と思ったり、仕事として勧められたら、まず考えてほしい。

「自分が接客向きかどうか」

 やってみなければわからないだろうけれど、見極めはなるべく早い段階で。

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