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【乳がん体験記#11】超心配性な親に、がん罹患のおすすめな伝え方

私が本気で乳がんからの卒業を目指し
元気を取り戻した軌跡をつづっています。
あくまでも個人の体験談です。

今回はちょっとした小話です。

私の母は自他ともに認める、
超が10個つくほどの心配性です。

いつもものすごい妄想力を働かせ、
先回りして心配ばかりしています。
それゆえに子どもの頃から非常に過干渉、
しかもその心配を無遠慮にぶつけてくるし
自分の理想を押し付けてくるし
常に母の求める通りの振る舞いをしてきました。

心配は「愛情」ではなくて「恐れ」です。

ですが、心配性な人は
心配すればするほど
それに比例する大きな愛情だと
信じて疑いません。
だからこそ「あなたのため」と
無遠慮にぶつけてくるのです。

表層心理では相手のためを思う愛情として、
深層心理では自分の不安を解消するために、
あれこれ尽くしたりするのですが、
大抵の場合、される側にとっては
極めて重く、迷惑で、自由を奪われる、
ときには人権すら奪われてしまいます。

もちろん、母に愛情が
まったくなかったとは思いません。
ましてや、今はとても丸くなった好好婆です。

とはいえ、長らく自分の不安解消を
何よりも優先させる母と生きてきたので、
乳がんになったことを母に伝えたら
それはそれはただ事ならぬ
大騒ぎになることは
火を見るより明らかだと思いました。

今回は、そんな母を
「あら、そうなの?」で終わらせた
がん告白の方法です。


■真逆の性格の夫と意見が真っ向から対立


母がひとりで住む家に夫と出向き
母に伝えることになったのですが、
どんな風に伝えるのがよいのか
話し合いました。

ですが、そもそも真逆な性格の私たち。

意見がまったく合わないのです。
真っ向から意見が対立しました。

ボーリング型の夫とカーリング型の私

えいやっと話しちゃおうぜ、が夫のスタンス


どのように真っ向から対立したかというと
以下のような感じです。

<ボーリング型の夫の考え>
まずはスコーン!とストライクを決めて
(=結論から話して)
その後に安心材料をプレゼンする

<カーリング型の私の考え>
そっとストーンを置き、
途中で正しい方向を見据えて
方向転換をはかりながら
最後にやさしくコツンと当たるように伝える

夫はものすごくせっかちで無邪気なのと、
男性特有のビジネスマインド強めです。
だがらとっとと結論から話したいタイプ。

ですが、話す内容が内容だけに
かなり慎重になったほうが良いので夫を説得し、
結果カーリング型で攻めることに。
そのかわり、自分にはできそうにないから
君が主体となってうまくやるようにだって。

とほー。


意外に多い、親に内緒にするがん患者

ちょっと余談にはなりますが、
離れて暮らす親に自分のがんのことを
話さないでいる人も少なくありません。

理由はもちろんさまざまですが、
年老いた親に心配をかけたくない
などはまだ真っ当な理由かもしれません。

それよりも「わかってもらえないから」とか
傷つくことを言われそうだとか
私のように、親の大混乱がヘビーすぎて
自分のメンタルがもたないとか
親に対する罪悪感とか
言語化できる気持ちばかりではないと思いますが
さまざまな理由から親に内緒にしています。

がん患者とその家族って、
ドラマや小説のように
支えて支えられて
家族の絆を取り戻す…
という美しいヒューマンドラマ
ばかりではありません。

むしろ悲しい現実の方が多いように感じます。

うちの母は保険外交員を務めているため
当然ながら私は
母の会社の医療保険に入っています。

保険金が下りるかもという事情で
母に伝えましたが、
保険のことがなければ
もしかしたら伝えなかったかもしれません。


■がん告白に母「あら、そうなの?」


乳がんの10年生存率や、治った人の体験記など
母が安心できる”プレゼン資料”を持って
いざ、出陣。

当時の私は告知のほぼ直後だったため
メンタルはかなり不安定な状態でした。
そのため母と話しているうちに泣いてしまい
うまく話せない可能性もあるので
夫にサポートはよろしく、
だからこの話が終わるまでお酒飲まないでね
とお願いをしていました。


ストーンを置いて40分くらいシャカシャカ

スッと置いてストーンをやさしく当てるように話そう、が私のスタンス

母の家に到着してから
夫はわかりやすくソワソワし始めました。
いつもより表情も固いし、
おまけに7月の暑さで早くビールを飲みたいのに
私から禁止されているという拷問状態。

夫は私におまかせすることに決めたので
私がストーンを置くのを
ひたすらじっと待っていました。

でもなかなか勇気が出てこない私。
緊迫した空気が耐えられないのと
早くビールが飲みたいのとで、
夫は時折サイレントシグナルを送ってきます。

料理をテーブルの上に出し終えたタイミングで
いよいよストーンをそっと置きました。

「お母さん、最近仕事忙しい?」

そっと置くにも程がありますが、
母の仕事は保険屋さん。
最近の病人事情から攻めていこうと
考えたのです。

母「そうねぇー、まあまあ忙しいかな」
私「保険が取れてるってこと?」
母「でもまだ査定に届かないのよね。
 誰か保険に入ってくれる人、いない?」

ストーンの進路がずれていったので
シャカシャカして戻します。

私「まあまあ忙しいのなら何よりです…」
母「最近、親子二代で入ってくれた人がいてね。
 若い頃に入ってくれたお客さんが
 成人したお子さんに
 勧めてくれるようになって!
 お母さん、信頼あるからね〜。
 この前もね〜…」

シャカシャカシャカシャカ……

私「やっぱりがんの人増えてきてる?」
母「うん、そうね。
 最近のがん保険、すごくいいのよ。
 夫さん、切り替えてみない?🎵」
パンフレットを持ってきて夫に見せる。

シャカシャカ
シャカシャカ……

私「あ、あのさ、私の友だちで
 乳がんになったA子いたじゃない?」
母「あーそうそう、
 あの子、再婚したいって言ってたじゃない。
 良い人がいるのよ〜。
 ちょっとおとなしい人なんだけどさ」

シャカシャカ
シャカシャカ
シャカシャカ
シャカシャカ…

ここには書ききれませんが、
かなり脱線してまったく関係ない話題に
到達してしまったことも数知れず。

ストーンを置いてかれこれ
40分ほど経過したあたりで
夫が咳払いをしてきました。

は・や・く

無言の圧が痛いほど伝わってきます。

ようやく
「がんが増えている」「乳がん」という
キーワードにたどり着けたところで、

いまだ、突撃ー!

私「今、がんは2人に1人がかかるんだって」
母「うん、そうだってね」
私「乳がんは9人に1人だって」
母「お客さんも本当に乳がんが多いのよ」
私「だから誰がかかってもおかしくないね」
母「そうだねぇ」
私「私の友だちや知り合いでも何人もいるし、
 私もだよ」
母「あら、そうなの?」

こうしてコツンとストーンを
当てることができました。

しかしこれからが勝負。
持ってきた資料をバッグから急いで取り出し、
母に対して夫とふたりでプレゼンをしまくり
母の心配が暴走するのを未然に防ぎました。

後日談で、あまりにも自然な流れで話すので
全然、深刻な雰囲気がなくて
やさしく頭に入ってきたと母は言っていました。

プレゼンが終わると夫は
一仕事終えた男の爽快な表情そのもので
ビールを実に美味しそうに飲んでいました。


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今回はこんなライトなお話にて。
次回以降は、内海聡医師の精神分析療法を
半年にわたって受けた具体的な内容について、
何回かに分けて書いていこうと思います。


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