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うちの会社、いくらで売却できる?

◆うちの会社、いくらで売却できる?中小企業の株式価値の算定方法

 会社の売却を検討される際、一番気になるのは「うちの会社、いくらで売れるのだろう?」ではないでしょうか?

 弊社にご相談にいらっしゃる方でも、第一声に会社の売却価格をご質問される方が圧倒的に多く、評価した株式価値によって株式譲渡に出るか否かを決定する傾向にあります。

 では、中小企業の株式価値はいったい、どのように評価するのでしょうか?

 今回は、スモールM&Aにおける中小企業の株式価値の評価方法について、あまり専門的な用語を使わず、そして単純明快に、ご説明します。

◆株式の評価方法

 会社を売却するという事は、すなわち会社の株式を売却するということです。

 つまり、会社の評価額とは株式価値(株主価値)を評価するわけです。

 株式価値の評価には、いくつか方法がありますが、一般的に、スモールM&Aにおける中小企業の株式価値の評価方法は、「年倍法」が用いられます。

 では、年倍法による中小企業の株式価値の評価方法をご説明します。

◆年倍法とは?

 年倍法とはどのような株式評価方法なのでしょうか?

 順を追ってご説明します。

 冒頭にも掲載しましたが、あまり専門用語を使用せず、単純明快にご説明します。

 実際に直近の決算報告書をお手元にご用意いただきながら、ご覧いただけますとよりご理解しやすいかと思います。

・ステップ1 貸借対照表からのアプローチ

 決算報告書を1枚めくると貸借対照表と書かれたページが出てくるでしょう。

 貸借対照表とは、会社の資産と負債と資本金を数値で表した表で、いわゆるバランスシート呼ばれるものです。

 貸借対照表の右下あたりに、純資産の部合計とありますが、これが株式評価の大元の数字になります。

 純資産の部合計の数字の意味についてですが、

 例えば、資本金300万円で会社を立ち上げて、5年間会社を経営したとします。
 貸借対照表の純資産の部合計の数字が、490万円となっていたとします。

 これは300万円を投資して会社を立ち上げ、5年間で、190万円の利益が会社に残ったことを意味しています。

 つまり、投資した金額と今までの経営努力の結果の合計額が純資産の部合計であり、この金額が年倍法による株式評価の基礎となる部分です。

・ステップ2 純資産の部合計金額を時価評価

 純資産の部合計を今度は時価評価します。

 例えば土地などの固定資産です。

 これを時価評価します。

 100万円の土地を時価評価したら110万円だっとします。

 となると、純資産の額は+10万円となり、500万円が時価評価した純資産の価格となります。

 これを時価純資産価格と呼びます。

 つまり時価評価をした純資産の価格が時価純資産価格なのです。

 これに対し、ステップ1でご説明した純資産の価格は帳簿上の価格なので、簿価純資産価格と呼ばれます。

 年倍法による株式価値の評価にはまず、時価評価した純資産の価格である、時価純資産価格を基礎として用います。

 そして、この評価は会社資産の見地からのアプローチで、利益についての評価も加算するのが年倍法の評価方法です。

・ステップ3 損益計算書からのアプローチ

 また決算報告書に目を移してください。

 貸借対照表の次のページに損益計算書という表が出てきます。

 これは、1年間の売り上げから経費や税金を引いてどのくらいの利益が残ったかを表している書類です。

 損益計算書の上部に営業利益とあります。

 例えば、この営業利益の数字が3年間の平均で100万円だったとします。

 この5年間の平均である100万円も年倍法の株式評価の金額に用います。

 相場では営業利益の平均 ✖ 1~2年で利益の評価を算出します。

 ですので、

 年平均営業利益 100 ✖ 1~2年 =100~200万円 が利益についての評価となります。

※実際は、営業利益についても損益修正を行い、年平均営業利益を算出しますが、ここでは簡易的に3年間の平均で算出しました。

・ステップ4 年倍法による株式価値の評価額

 では、ステップ2で算出した時価純資産と利益から算出した評価額を合算しましょう。

時価純資産価格 500万円 + 利益からの評価額 100 ~ 200万円

=600 ~ 700万円

 というのが、年倍法による株式の評価額となります。

 つまり、年倍法による株式価値の評価方法とは、貸借対照表から算出した時価純資産価格と損益計算書から算出した年平均営業利益の1~2年分を合算した金額が株式評価額となります。

 この年倍法が、中小企業のスモールM&Aにおける株式価値の評価方法であり、相場となっています。

・その他の評価方法

 その他、業種特有の評価方法もあります。

 例えば、人材不足の業種であれば専門家の人数や、調剤薬局であれば処方箋の枚数、飲食店ならば立地条件や座席数、不動産会社は保有不動産の価格など、より会社の実態に即した方針で評価します。

 基本的な考え方は、何が収益の源泉で、その数字を合理的に見積もる事が可能な方法で評価をするという事です。

◆まとめ

 倍法による株式価値の評価方法についてご説明してきました。

 しかし、年倍法は、あくまで広く一般的な株式価値の評価方法であるという事を覚えておいてください。

 つまり、簡易的に希望売却価格の目安に算出するわけであって、この評価の結果が、株式の売却価格になるわけではない、という事なのです。

 当然、買い手側も株式評価をしますので、お互いの折り合いの着いた金額が最終的な売却価格になるのです。

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