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甘い香り

情緒の無い彼から
金木犀の画像とメッセージが届いた

なんとなく木の全体を撮ったものと
すげーにおってる
というひと言

彼は休みの日によく自分の実家の作業場の2階へ行く
そこで趣味のことをしたり
1人のんびりとタバコを吸ってコーヒーを飲んだり

半年くらい前に両親が離婚
お母さんは何もかも置いて自分の生まれた育った北海道の地へ戻った、そうだ

離婚届の保証人にサインをした彼は
淡々と私に語った

それ以来実家にはお父さんしか残っていない
わざわざお父さんに会いに行っている風でもないが
何となくその様子を伺いに行っているようでもある

彼は情緒や感情などをあまり言葉にしない

そんな彼がたまにそうやって送ってくる画像と言葉は
すごく特別なもののように思える

金木犀があるの?いいな
と返すと

庭にある、と彼

今一番良い時期だね、と私

絶好調、と彼

色気も雰囲気も情緒もない返事が続き
彼は画面からいなくなる

それでも甘く香る金木犀に彼の何かが動かされ
それを私に伝えようと思ってくれたのだと思うと
すごく嬉しかった



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