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【‘‘推しの日本文学 厳選3選’’】


-現代の日本文学を読み解くための読書案内-


◆一冊目

ゴルディロックスゾーンというのは、 宇宙において生命の誕生と生存の維持に適した領域のことを指す言葉であるらしく、本書を手に取るまでどういった物語なのだろうかと読む前は全く分からなかった。
だが、読み進めてみるとページをめくる手は止まらなくなった。
学校生活に馴染めずにいる依子とたった一人の友人であるさきとの交遊などはとてもリアリティがあり、男子目線からみてもこうした人間関係における心理描写が上手いと感じられるのは著者のこざわ先生の観察眼が優れているからこそ描けるものであって、‘‘ゴルディックロックスゾーン’’というのは人間関係で言えば、丁度いい距離感でどのようにして対人と向き合っていかなければいけないかという部分を切り取り考察してみてもとても興味深いものがあるのではないかと考えさせられるものがありました。
中学生の頃の思い出を振り返りながら、女子中学生の繊細で瑞々しさを小説という形で見事に表現させる表現力には感服させられました。


◆二冊目

光の対になるもの、それは漆黒の闇であり、表題作「ルミネッセンス」を含む5つの短編から感じられたものは女性の複雑な心の深部を巧みに描かれているとこがとてもリアリティーがあり、ふとした輝きの中に闇が訪れ、心を包み込んでいき、それは温かさもあり、時に冷たさを肌身に感じるものもある。
ルミネッセンスとは元々、蛍光物質にエネルギーを与えた時に生じる光であり、これらの短編には窪先生の筆力が加わることで、それぞれにでしか生まれない物語における人物たちの美しさや醜悪というものがより浮き彫りになるものがあると考えさせられました。
明滅さによる美しさや儚さによる叙景と登場人物たちの女性心理が絡まり、読み進める度に解像度が上がっていく。
甘美的であったり、喪失感を抱える人々の描き方が巧みでもあり、女性の性や出産などをテーマにした女性の生き方を通した感性は、先生でしか描くことが出来ないものがあると感じられました。


◆三冊目

何気ない言葉がもたらす、言葉の力には私たちに勇気や感動を与えてくれるものがある。
そして、誰しも心の奥底に孤独を抱えながら生きているものなんだとふと感じる時があります。
そして、小説家として歌人として描く東先生の物語には魅力が詰まっていると本作から感じました。
『ひとっこひとり』というタイトルのネーミングセンスも素晴らしいし、何よりも登場人物たちの人間性や会話のやり取りなど、読者の私たちの心を惹き付けるものがあると感じられました。
日常生活の中のちょっとした出来事を物語の中に落とし込み、それを具体的にリアリティを持たせて読者の私たちが、いかにも登場人物たちと一心同体となり、体験しているかのような感覚を覚えるのも東先生の言葉選びによって、本作は活かされているんだなと思いました。



【あとがき】

今回の記事では、前作で記しました【‘‘推しの海外文学 厳選3選’’】の姉妹編として、こちらでも最近出版された現代の日本文学を三冊に絞って感想をまとめた記事として記しました。
【‘‘推しの日本文学 厳選3選’’】ということで、他の日本文学も手に取って読んでみたりもしましたが、今回は私自身の感覚で、この三冊が特に面白かったなということでこちらの作品を簡潔に記すことにしました。
また、現代の海外文学、日本文学を記すことが出来たので、次こそは海外の古典文学、もしくは日本の古典文学の記事も書いてみたいなと思いました。
その為には、またたくさんの本を読んでから、これはぜひともオススメしたいと思えるような作品の感想も書けるように色々と読み漁りたいなと思います。

【前回に記した記事より】↓


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