高校生の私が、先生と付き合った話11

1学期終業式の前日。

わたしはここ数日間、悩みっぱなしでした。
明日はもう『鈴木先生の誕生日』だったからです。

なにをすればいいのか悩みすぎて、とうとう前日までなにも用意できずにいました。
何かを買うにしても今日の下校時しかチャンスはありません。

「おめでとう」の一言でもじゅうぶんなんだろうけど、それじゃあ味気ない?どうせなら他の子たちと差をつけたいところだなと思っていました。
(まぁライバルはいないようだけど...)



その日の美香子との帰り道。
(美香子は唯一、わたしが鈴木先生のことを好きなのを知っている子です)

「鈴木先生の誕生日なんだけどね」
「うん、なにすることにしたの?」
「なーんにもいい案が思いつかなくて・・・」
「だからベタにクッキーとか作ればいいのに。甘党らしいし喜ぶんじゃない?」
「もちろんそれも考えたよ。だけどマズかったら気まずいし、他の子からもらう可能性大じゃん」
「いや、それはないと思うけど・・・」

その後も美香子といろいろ相談しながら帰りましたが、結局なにをするか決まらないまま帰宅し、もう何かを作る時間もなくなりました。

『もう残された手段はアレしかないよね』



次の日の朝。
いつもの時間に起きて、朝ご飯を食べ、仕事に行く両親を見送りました。
わたしも7時すぎには家を出ないと、いつもの電車に間に合いません。


だけどこの日は「9時半くらいに家出ればいっか」と余裕をかましていました。


「おっと、忘れてた」と、わたしは携帯を手に取りました。

「はい、〇〇高校です」
「3年▲組の矢島です。少し体調が悪いので、遅刻して登校します」
「わかりました。気をつけてきてくださいね」

この電話で下準備は整いました。
もちろん体調なんか悪くなかったです。
(いい子はマネしないでほしい)

そのあとは適当に時間をつぶし、高校生は1人も見当たらない時間の電車に乗り、10時ちょうどくらいに学校の最寄り駅に着きました。

改札を出ると可愛い服屋さんや雑貨屋さんなどのショッピングができる場所が広がっていましたが、そこには目もくれずあるお店に向かいました。


「これと・・・あとこれを1つずつください」

ショーケースの中はキラキラした可愛いケーキがたくさん並んでいました。
鈴木先生の好みは分からないから、定番のイチゴのショートケーキとチーズケーキを買いました。

ケーキ屋さんから学校までは歩いて約15分。
ケーキが2つ入ったオレンジ色の小さな箱を、大切に抱えて登校しました。

遅刻してまでケーキ買ってくるなんてドン引きされるかも?
でも、もともと望み薄な恋なんだ。
せめて鈴木先生の思い出に残るような生徒になりたい。
バカな生徒がいたんだよ~ってネタになってもかまわない。


学校についたらまず遅刻の手続きをしに、職員室を訪ねないといけません。
まだ終業式が終わっていなくて、職員室には事務員さんしかいなかったのでケーキを買ってきていることは怒られることはなさそうでした。
とはいえ箱を堂々と持っているわけにはいかないので、鈴木先生の机の上にケーキの箱をサッと置きました。
たったそれだけのことなのに、心臓のバクバクがすごかったです。

遅刻の手続きが終わり、わたしが職員室を出るころには終業式を終えた生徒たちがぞくぞくと体育館から出てきていました。
自分の教室につくと真由と遥香に「体調大丈夫?」と心配してくれましたが、「仮病です。ケーキ買いにいってました」とは言えず、心が痛みました。

そのあとは大掃除→HRが終わったら解散という流れでした。
ものすごいスピードで自分の担当場所を掃除してから、鈴木先生のクラスへダッシュしました。
さすがにケーキの箱だけが机に置かれていたらビックリするだろうし(カードも何もつけてないから誰からか分からない)、直接誕生日おめでとうと言いたかったからです。










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