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サービスの「体験スケッチ」はじめます ~非デザイナー職が、サービスデザインの解像度をより上げるために~

こんにちは、UXリサーチャーのわだあずみです。
グラグリッドというサービスデザインファームで、UXリサーチャーやプロジェクトマネジメントを行っています。

これから「デザインに携わる非デザイナー職(ビジネス職のプロマネやPDM)として、サービスデザインに必要な『美意識』をどう鍛えていくか?」というのを考えるために。
noteで自分のプロジェクト「サービスの『体験スケッチ』」をはじめることにしました。

自分というカスタマーが、日々触れているたくさんのサービス。
そのサービスの体験というストーリーを通じて

・体験(体験・思考)
・タッチポイント(形や数や頻度)、及び仕組み
・サービスの捉えている「世界観」
・「世界観」への共感や違和感


というあたりについて、「体験スケッチボード」のフォーマットを用いながら、noteで記していきたいと思います。

なぜ、非デザイナーが、サービスデザインにあたり『美意識』を鍛える必要があるんだろう?

端的に言うと。
「モノではない、包括的で一貫した『サービス』をデザインするには世界観が要。その世界観を構築するために、世界観に対する感度を持つと共に、違和感にも気づくことが必須。(=美意識を持つ)というのが、3年のグラグリッドでのサービスデザインプロジェクトに関わって、無茶苦茶身に染みたから、です。

そしてこれは、私だけではなくて。
2020年以降、デザインに携わる非デザイナーの増加に伴い、より多くの非デザイナー職の人が感じる部分のように捉えています。

サービスで商品が提供されるときに、私たちサービスデザインに携わる立場の者は、商品(モノ・プロダクト)の形の他にも、様々なことを実はデザインしています。

「カスタマーはどんな風に利用する?」
「カスタマーはどんな環境にいる?」
「どんな仕組みだと、その環境のカスタマーに届けることができる?」
「どんな一連の体験が、カスタマーにとって価値がある?」
「どんなサービスだと、ビジネスとして持続可能?」
etc...

こうした問いを端的に示している図の一つとして、「サービスとモノの複合商品の構成要素」の図が挙げられます。

Rust R T & R L Oliver Service Quality 1994
ラストとオリバーの「サービスとモノの複合商品の構成要素」

上図は、サービスに対する品質構成要素をまとめたもの。
顧客の視点から見てみれば、モノもコンセプトも体験する環境も提供され方も、すべて商品の印象につながる要素。この4つの要素それぞれに対し、目的を実現するために必要な活動を組み立て、具体的なプロセスを作り上げていくことが、サービスをデザインしていくってことなんだ。

サービスデザインの“サービス”とは?(グラグリッド編集部)
※強調は著者によるもの

私はこれまで、webサービス開発、商品開発、ビジョン創出、活動を支える創造的な組織の育成等、様々なサービスデザインの現場に立ち会ってきました。

そんな中で。
私が頻繁に出会い、かつ毎回最も苦しんでいるのが、議論の中で「サービスを構成する要素同士が、実は乖離しはじめた時に、非デザイナーの自分だと気づけない時がある」という課題でした。
(そして社内のチームでその違和感にまず気づくのは、デザイナー。)

この乖離に気づけないのは、いくつか理由があると思います。

【サービスを構成する要素同士が乖離する理由】

▼議論のファシリテーター(=プロマネやPDM)の品質への捉え方
①コンセプト、提供価値の捉え方が甘い
②世界観を実現する要素の、過不足・質の判断が甘い

▼議論方法
③文字だけで議論しており、利用シーンの共通認識がチームで持てていない
④異なる要素同士の整合性の議論が甘いまま進めている
⑤そもそも組織横断で議論していない

チームで成果をだせるとはいえ。
私自身は、特に②があてはまるなあと思うところがしきりです。ううう。

そして、周囲のサービスデザインに携わる人と話す中で、以下のことに気づきました。(あくまで私のまわりなので、全ての人にあてはまらない点ご了承ください)

・①②について、非デザイナーがあてはまり悩むパターンが多い
・コンセプトや提供価値が研ぎ澄まされており、かつその世界観を実現する要素の過不足や質の判断が的確にできる人には、デザイナーが多い
・特に↑を実現してるデザイナーを見てると「モノそのものというより、モノが存在する『世界』をつくるんだという世界観をもって、デザインをしている」。

もちろん、私も非デザイナーとして、そうした観点をもってデザインに挑んではいるのですが。
その世界観の捉え方の解像度が、デザイナーさんとはまだまだ差があるなと感じています。

「モノが存在する『世界』への解像度」を上げたい!ヒントはキングダムにあり。

『世界』への解像度を上げるにはどうしたらいいんだろう?
そんな問いをうだうだ考えていた2019年年末。突然、答えは降ってきました。キングダムを一気読みしているときに!

(キングダム56巻、606話より引用)

趙軍の李牧の戦術に対して、秦軍の王翦が行っていた行動は、『「起こり」の察知→戦術での対応』だった、というストーリーです。
つまり、漠然と見ているだけでは気づかない、重要な点の観察です。

また、この重要な点の観察については、趙軍の李白が、秦軍の麃公について同様の言及をしています。

(キングダム26巻、274話より引用)

秦軍の王翦、麃公とも「本能型」と呼ばれる将軍です。
(あ、王翦は「知略型」でもあるのか…こえー)

本能型:
・戦いを大きな炎と捉える
・その場その場で直感で動き、敵の動きを捕らえていく
・キングダムだと、王翦、麃公、そして信 etc

知略型:
・戦いを理詰めの盤面と捉える
・場を俯瞰しながら、現状、動くべき行動、ありたい姿など事前に先の先まで読んで行動を起こし、調整していく
・キングダムだと、李牧、昌平君、蒙恬、河了貂etc

私が「モノそのものというより、モノが存在する『世界』をつくるんだという世界観をもって、デザインをしている」と感じたデザイナーさんは、たぶんこの本能型が多そうと捉えています。

そして、その本能型の将軍が行っているのは、まぎれもなく「観察」
瞬時にでも「見ている」からこそ、適切な次の手が即座に打てるのです。
デザイナーも、きっとこうした身体の訓練の積み重ねで、世界とモノの関係性を見ているのかもしれません。
いやー、マジすごい。うらやましい。惚れる。

さてさて。
非デザイナーの私は、バックグラウンドがwebディレクター兼マーケターという点もあり、デザインのアプローチにおいては完全に知略型です。
定量データ(KPI)を中心に全体感を把握しながら、そこに流れる体験や感情を定性データで深掘りして、事前に行動を検討するスタイル。

定性データとしての「観察」については、ユーザビリティテストや、様々なリサーチをしてきた中で、成果をある程度出せる自負はあります。
でも、その観察は、課題解決のためのものでもありました。

価値創出のために観察しようと思うと、その見る範囲は圧倒的に広がる感があります。課題解決のための視野での観察範囲では足りないのです。

↑私の個人的な肌感覚です…。

本能型の持つ「観察」の精度に少しでも近づくために。
知略型だけども、「観察」をもっと研ぎ澄ましたいなと思うのでした。
(観察して、目指せ!知略型で「自分の盤面を描ける」将軍!!!)

「体験スケッチ」を選んだ理由

美意識を育むための「観察」を実践する方法論はたくさんあります。
もうこれは、自分の習慣との相性がすべてなのかなと思っています。

▼美意識を育むための「観察」を実践する方法論の一例
・存在や場を観察して世界を描く行為(デッサン、スケッチ等)
・絵を観察して、解釈する行為(絵画鑑賞、対話型鑑賞等)
・体験の観察(KAカードでの分析、体験スケッチボード等)
などなど。たぶんもっとある。

私の場合。
KA法を学んだことで「事象・心の声・価値」が即座に適切な粒度で書ける&一連の体験を捉えられる
・絵と図で体験を俯瞰し、抽象化することが得意
・テキストで体験を研ぎ澄まして思考することが好き
ということから、体験の観察(体験スケッチボードを利用)を選んだのでした。

産業技術大学院大学で学んだKA法のノート。

デッサンもやってみたいなあと思いつつ。自力で学ぶにはちょっと難しそう。
あと、絵画鑑賞については、絵そのものの鑑賞を集中することがいまいち苦手なので助けがほしいというのもあります。(歴オタなので、無意識的に「この絵の歴史的背景はほげほげで~」という絵の背景を調べて、その観点で見ようとしてしまう。ありのままで見れない)

なんであれ。
サービスの体験と、観察を経て世界観を捉え、アウトプット(分析)することで。
その世界観に対する違和感も少しずつ見えてくるんじゃないかな~と思っています。あくまで仮説ですが。

非デザイナーによる、サービスデザインの自主トレ、がんばります。
というのが、noteでアカウントを新しくつくった理由の半分を占めているのでした。
あとの半分は、楽しくリサーチャーとしてのナレッジをためていく(「♡スキ」して、読んでいく)場がほしかったから。

サービスデザインが、これからもっと日本で広がっていきますように!
価値ある、持続可能な仕組みを、とっても楽しみながらみんなでつくる現場が増えますように~!

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