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中小企業・勤続10年目の企業分析
企業分析を入社前に行う人はいても、入社してから行う人は少ないと思う。
私は今年で勤続10年目である。
(従業員数200人以下)
組織の一員として感じたことを語っていきたい。
1.社内ヒエラルキーが明確である
営業と技術では、営業が上という明確なヒエラルキーが存在する。
社長と役員は元・営業職しかおらず、完全なる階層構造である。
ちなみに、営業職でも見込みがないと判断されると、技術職に異動させれる。
専門職を舐めきった酷いピラミッドである。
2.社内ルールが曖昧である
社内規則以外の細かいルールは、ほとんどが文章化されていない。
そのため、あとから追加されたルールは知らない人が多い。
(上が思いつきで始めて、下に周知されないケース)
例えば、連絡ツールが複数存在しており、どれを使えば良いかは分からない。
(Outlook、LINE、Teams、NI、SMSなど)
Web会議も複数あるのだが、どれを推奨しているかは分からない。
(Zoom、Teams、Ciscoなど)
流行り物に飛びつくのだが、評価をするステップがないため、ツールばかりが増えていく。
3.教育システムが存在しない
新人は外部の研修業者に委託され、マナーを教わる。
その後、数ヶ月OJT研修を行う。
一見、しっかりとした新人教育が行われているように思えるが、我が社のOJT研修は、各部署を数日ずつ回るだけである。
内容は中学生の社会見学と変わらない。
実は商材について掘り下げた勉強会がないのである。
結局、実戦に即した知識は配属後に先輩から盗まなければならない。
4.良い餌場は先輩が死守している
コンスタントに利益をもたらす良客は、勤続年数の長い社員が独占している。
そのため、新入社員は先輩からのおこぼれを預かる形になる。
さらに、配属先によってお客さんの懐事情も変わってくるため、配属という運ゲーでサラリーマン生活が左右される。
ゲームで言ったら運要素が大きすぎるので、クソゲー扱いされても仕方ない。
5.情報共有がない
個人で情報を囲うため、同じ部署でも隣の仕事が分からない。
そのため、ノウハウが共有されることがない。
組織というよりも、個人商店の集まりに近い形式である。
誰かが既にやったことのある仕事を、別の人間が一から構築する事も多い。
ムダの極みなのだが、情報を共有するメリットを理解していないので改善はされないだろう。
6.隠蔽体質でありながら、人事の情報が漏れる
隠蔽体質でありながら、人事異動の情報は発表前に漏れる。
しかも正確である。
正直、役員からしか漏れようがないので、軽いノリで話しているのだと思う。
上の口が軽いのは、下からすると信頼性ダウンなのだが、気にはしていないようだ。
7.仲良しグループに入れば最強
上と仲良くなれば、叩かれることはない。
とある部署は、社員の過半数が離職して全滅状態になったが、上長は裁かれることがなかった。
むしろ、その後階級が上がった。
上の人間と普段から仲が良かったからである。
個人的にはミッドウェー海戦なみの損害だと思っていたので、結果は意外だった。
(南雲長官もミッドウェー後に罷免されなかったが)
一般には、兵士の30%程度の損耗を受けた場合、その部隊は戦力として数えることができなくなり、もって部隊「全滅」とされる。
ちなみに正論や反対意見を述べる社員は干されることが多い。
日本特有の「和を以て貴しとなす」というヤツである。
※本来は議論の大切さを説いている。
耳に痛い意見ほど貴重だと思うのだが、素直に聞き入れるほど器の大きい人材はいない。
8.女性社員が育たない
営業職で女性を取りたがるが、10年選手は一人も残っていない。
配属先でも「寿退社で辞めるだろう」という風潮が強く、真剣に教える人は少ない。
それでも定期的に女性社員を取り続けるのが不思議である。
システムに不備があるのに、数を投入すれば成功するだろうという甘い考えが伝わってくる。
妊娠、出産後に復帰する社員のことは恐らく想定されていない。
9.使える社員は消耗される
若くて優秀な社員は、困難な現場を与えられて疲弊していく。
(ゼロ戦のパイロットのようだ)
能力がない社員ほど、仕事が回ってこないので楽である。
そういったシステムを理解した社員ほど、努力をしようと思わなくなる。
悪循環であるが、下の人間にシステムを調整する力はない。
破綻するまで機能し続けるだろう。
10.属人化
「この仕事は、その人にしかできない」
こういった仕事が非常に多く、辞めた場合にブラックボックス化する。
一人一人が個人商店であるので、後継も育っていないのである。
特に技術職に関しては、中間層がいないため、多くの仕事がロストテクノロジーとなってしまう。
営業にしろ技術にしろ、世代交代がスムーズにできない組織に未来はないと思う。
この問題に関しては、自分も当事者になるので頭が痛い。
11.上層部と現場の意識のズレ
上層部は自分が現役時代の常識を語り(10年以上前)
現場は現状の常識を語る。
そのため、決定権を持っている上層部の判断が時代遅れになっているケースが多い。
自分の会社では、役員が現役時代に組んでいた特定の職人の贔屓が起きていた。(彼らは新しい技術にはついていけていなかった)
本来、上層部が現場の声に耳を傾ければ良いのだが、デスクワーク中心になっているので、腰が重くなっている場合が多い。
そして、耳を傾ける相手も仲良しグループからの情報になるので、悪い話は耳に入らない。ゴシップは耳に入るが。
また、高齢の人間が決定権をもつことが多いので、発想も硬直化している。
こうなると頭(上層部)と身体(現場)が連携していないので、チグハグな動きになる。
12.メーカーからの天下り
大手メーカーから役職付きで転職者が入ってくる。
そして、大手のやりかたを導入する流れになる。
(給料体系や福利厚生は据え置き)
人材や人数を無視したやり方のため、中小企業の強みである機敏さは失われていく。
天下りでも成功例はあると思うが、現場を見ないタイプだと企業文化を理解していないため失敗例が多い。
そもそも外様をいきなり上に据えるのは反発を生む。
社歴が長い社員からしたら面白くないに決まっているからだ。
13.コンサルタントの導入
社内経営も外注となる。
経営者は営業成績の良い人間がなるため、経営能力に長けている者ではない。
お金を払って外部にコンサルを頼むが、痛みを伴うため、抜本的な改革には乗り出さない。
そもそも、任期より先を考えていない。
(株主でもないので、退職したら繋がりは失われるため)
14.世代交代しても変わらない社風
社長が交代してもシステムの抜本的な改善はされない。
「俺がトップになったら」という人もトップになると、前政権と変わらなくなる。もしくは余計な改革をしようとして悪化する場合がある。
自分なりに分析をしてみたのだが、構造的に欠陥があることに気づいた。
営業成績の良い営業職が出世する。
成績の良い営業はマネジメント能力が低い。
(後輩の面倒を見る余裕がないため)出世してマネジメント能力を求めれるが、管理能力は低いまま。
(普通は問題視されるが、中小なので上に気に入られて出世する)さらに出世して経営能力を求められるが、営業能力しか育っていない。
(会社全体の営業成績を伸ばす考えを学ぶ機会がない)
「馬上天下を得るとも、馬上で天下を治むるを得ず」目標の定め方も分からないので、保守的になるか外部からコンサルタントや大手出身の人を登用する。
外部のアドバイザーが現場に合わないアドバイスをするため、前線で働く人間が混乱する。
マネジメント能力や経営能力は、個人の営業成績と違って測定する方法がないため、あやふやなまま放置される。
結果的に現実に則さない施作が行われ、現場は混乱に陥る。
こちらの本にも書かれているが、組織というのは時代が経つごとに段々と人の質が落ちていく。
会社云々というよりも人間が集まって群れを作る段階で避けられない現象であるように思う。
15.短期間での改革
世代が変わると前政権の不満点を一気に解消しようとする。
サラリーマンには定年があるため、実権を握る頃には60代近くなっている。
そのため、短期間で改革を断行しようとする。
結果は、膨大な会議と精査されないシステムの運用である。
うちの会社では、大企業のシステムを導入しようとして現場が混乱した。
自分で規模にあったシステムを作り上げる発想がないため、借りてきた物をそのままインストールしたのだ。
これによって、中小企業の利点であるフットワークの良さは失われ、前線で働く人間の士気は失われた。
正直なところ「前政権の方が居心地が良かった」という意見を良く耳にする。
「給料が安いけど、居心地の良い会社」から「給料が安くて、居心地の悪い会社」なってしまった。
具体的には社用車にGPSを付けて監視や、接待のお金を制限するなど、かつて自分達が享受してきたシステムをブロックした。
16.人柄という曖昧な採用基準
専門性のない人間が人事を行っているため、新卒を取る際は「人柄」のみで選んでいる。
フィーリング第一主義で、組織にどのような人材が必要なのか理解していないのが理由だと思う。
そのため、専門性が求められる技術職でも選定基準が第一印象という狂った状況がまかり通っている。
内部からは批判的な意見も上がるが、そもそも上層部には間違っているという意識がない。
採ってから使い方を考えるというパターンも多い。
食材を取り敢えず買ってから料理を考えるタイプなのだろう。
見る目も聞く耳も持たないというのは致命的である。
17.歪な人口ピラミッド
人口ピラミッドにすると、砂時計の一番細い部分が40代である。
20代と50代がやたらと多い。
就職氷河期世代はガッツリいないので、社歴の短い主任クラスが管理職を兼任することになる。
現場という前線に立ちつつ、部下の管理を行うのである。
当然疲弊して病む。
かといって補填する人材もいないので、人としてのリソースは消耗が続く。
18.良いところも失われる
「給料が安い分、緩い会社」というのが会社の良いところだった。
しかし、改革を名目にルールで雁字搦めの組織になってしまった。
会社の良い所は組織の上に立っても見えづらいらしい。
改悪された点について参考は以下のもの。
営業車は会社の宣伝になるからプライベートで使っても良い。
→プライベートで使用した分は申告して給料から天引き。毎月売上を報告すれば良い。
→日程を管理ソフトに記入。週報の導入。休日出勤はお金が出る。
→基本的に翌週に代休を取ること。
報告書がないのは会社としてどうなの?という意見もあると思うが、ゆるふわ組織だったので勤めている側としては楽だった。
まとめ
ほとんど会社の愚痴になってしまったが、中小企業あるあるだと思う。
中小企業が1世紀近い年月をかけても大企業になれない理由は、こういった細かい不備の結果かもしれない。
ただ、日本中の中小企業がこういう性質を備えているとしたら、労働生産性は今後も上がらないだろう。
「真に恐れるべきは有能な敵ではなく無能な味方である」
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