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読み物 『Over Tourismと日本型観光』Vol 1. 4451字

■はじめに
 さて、ここnoteでもover tourismに関連した原稿は4~5本ほど投下させて頂いている。が、どの原稿もどちらかと云えば上段から構えた書き口になっていることもあり、そのような原稿を書いてみたところでTourismと観光の
違いに免疫を持たないこの国に住まう"被制度者"である消費者にとっては届くはずもなくであり、書き手の自己満足の域を出ることもなしとも思える。
 同じ書くなら興味をもっていただきやすいところからOver Tourism(オーバーツーリズム)を紹介することがこの国で云うところの観光と、世界が云うところのTourismの違いも感じらるのではないだろうか~とも思える次第。

 ひとつだけ最初に理解してほしいことを記すなら、こういう原稿を書く際において重要なのは「立ち位置」となることだ。どの立ち位置から書くか。読者であれば自分の足場を何処に定めて読むのか。それで感じ方は概ね決定付けられることを知っておく必要がある。わたしのこの原稿を何処の立ち位置から書いているかは読み手が感じれば良いことであるからして改めてここで書くことはしないままに書き進めてみる。少し長い原稿となるが最後までお付き合い頂ければ幸甚に存じます。

■         

Ⅰ. Over Tourism(オーバーツーリズム)の定義

The World Tourism Organization (UNWTO)による定義づけに基づいたWiki pediaによる簡易的リソースより以下に一部抜粋。

『オーバーツーリズムとは、過剰な観光客による渋滞や過密状態であり、その結果、地元住民との衝突が発生します。世界観光機関(UNWTO)は、オーバーツーリズムを①「観光が目的地またはその一部に与える影響で、国民の生活の質や訪問者の体験の質にマイナスの影響を与えるもの」と定義しています。この定義は、オーバーツーリズムが、観光を日常生活にますます負担を与える破壊的要因と見なす地元住民と、観光客の多さを迷惑だと考える訪問者の両方の間でどのように観察されるかを示しています。

この用語が頻繁に使用されるようになったのは 2015 年以降ですが現在では②観光業による悪影響を説明するために一般的に使用されている表現です』
以下、特徴付け、原因、例へとつづく。

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 Over Tourism(オーバーツーリズム)の定義、①の太字箇所を読んでもらえれば読者からの理解を得るに難しさを伴うことは無いと考えるのですが、オーバーツーリズムは旅行者による旅行さき住民の生活の質への影響と、旅行者の体験の質に言葉及んでいることが確認できますね。
 ここから先の原稿を読む上でここが大事なグラウンドゼロ、根本であるからして、ここはしっかり押さえておいてほしいところです。
 ここでのツーリズム(Tourism)という言葉の存在は、受け入れ側と訪問側双方の「質の維持、向上」ありきを前提としています。しかし、昨今のメディアの切り取り方であり報道のあり様を眺めていると、②の太字箇所に見られるように、受け入れ側国民の生活の質の維持向上に与えるマイナス影響ばかりがクローズアップされているように感じられるのです。

 マスコミをはじめとする各種のメディアには「前提」を抑えたうえで正確に課題を伝える努力をしてほしいところですね。
 さて、筆者にするのならここでは本来『観光業』という言葉に違和感を持ってもらいたいところであり、解説を加えるべきところではありますが_________いろいろと都合もあることから先を急ぎつつ違和感の正体については後ほど書き加えることとしましょう。

Ⅱ. 似て非なる「観光とツーリズム」

 新型コロナ感染症も五類への移行をみせ、昨今では街行く人たちであり電車の中であってもマスクを着用している人々も減ったようであり、体感としては双方五割程度の棲み分けのように感じられるのですが如何でしょうか。
 この新型コロナの流行と感染予防への取り組みによって大きく変わったものの一つに旅のスタイルが上げられますが……例を挙げるなら ソロキャンプでありファミリーキャンプ、そして車中泊などがそれだと云えば身に覚えがある読者もおられるかもしれませんね。
 以下にチョイとした"既視感"の行を加えてみたので一服していってほしいところ。

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■ソロキャンプ編
 道すがらに見かけた「道の駅」で仕入れた野菜たちには生産者の顔がわかるよう、包装ビニール袋には"有機シール"と生産者写真が貼られていた。「手作り・無添加」が期待感を高めるソーセージやハムそして肉類にチーズは発泡トレイに鎮座、真空ラッピングされていたりと衛生面にも配慮されている。地元のパン工房が作る「湯ごね製法、湯ごねパン」は見ているだけで生唾が口の中に溢れ出し、焚火でひと炙りしたパンに肉や野菜ソーセージを挟み、家から持参したケチャップをブッカケ頬張る姿が脳裏に浮かぶのを止めることは儘ならない。
 「手で触ることはご遠慮ください」と書かれた注意書きポップを目にすると、光沢の強いビニールで綺麗にラッピングされ、口はプラスチックの鉢巻クリップで留められてはいたとて、感染症リスクという現実が脳裏に広がり慌てて頭振り、触ることを諦め出した手を引っ込め、目視と勘に美味さを頼む。
 さて、今宵の寝酒はどうするか。リュックに詰めたとっておきのブランデーを舐めようか。おっと、店内の大型冷蔵庫の中には日本酒の四合瓶も並んでいる。スマホ片手に酒名から酒蔵を検索。どれも地元の500石以下の小さな酒蔵。こだわりが覗える酒造り。どれ生酛造りの純米辛口を一本。
 冷蔵庫からの取り出しもお店のスタッフに頼まなければならない。「これを下さい」というとスタッフが冷蔵庫から取り出したのは化粧箱入り四合瓶
「生酛造り純米辛口」と読めるような読めないような達筆とおぼしき筆字が走るそれをカゴにいれる。

「だれがこれだけ食うのか。誰がこれほど飲むのか。ソロキャンプだろ」
自嘲気味に独り言を呟いてみたとて道の駅のカゴは"俄ソロキャンパー"の欲望で溢れんばかりとなっていた。
「持続…… ……可能なのかよこれで」独り言ちてはレジに並び一枚5円の大サイズのレジ袋をカゴに突っ込む。レジ横には「ご自由にお持ちください」と書かれた「割りばし」「プラスチックフォーク」「ストロー」「保冷剤」が陳列されており、割りばし五本と紙製ストロー数本を鷲掴み。
「レジ袋かねぇ~有料にすべきは ? もっとあるんじゃね他にも」と独り言。

 閉鎖された空間で密になることを避け、自然と触れ合い自然の中で食事をすることを夢想しつつ、拾ってきた乾いた木片を慣れない手つきでバトニング。力任せに叩かれた木片は薪になる前に明後日めがけて飛んで行き、しまいにゃ川へと飛び込む始末。ファイアースターターで火を熾そうとするも、フェザースティックはさながらオリンピックの聖火を灯すトーチほどの太さとなり火口にならず、当たり前のようにいくら火の粉を飛ばしても着火せず。ついにはリュックから取り出したSOTOのバーナーとSOTOのガスボンベを使い、道の駅で仕入れた割りばしと紙製ストローを火口に火を熾す。これぞ電光石火。現実世界、文明の利器の有難さを思い出すとお愉しみメーターがガクンと落ちる。火熾しするための準備に費やした時間は1時間半。文明の利器であるバーナーでの火熾しはものの15秒だ。既にロハスもスローも消し飛んだ。

夜は熾した焚火に家から持ち込んだ自家焙煎コーヒー豆をハンドミルで挽く。満天の星空の下ミルが奏でる音でさえ愛おしく思へ、淹れたコーヒーにあっては誰にも飲ませたくないほど馥郁たる味わいを感じさせるのだ。
湯ごねパンを焚火であぶり、Amazonの通販で買ったばかりのメスティンの上で焼いたソーセージとハムと野菜を挟み、ケチャップをぶっかけて頬張る。マスクは車に置いてきた。スマホも車に置いてきた。
邪魔するものは何もない。今宵は月を相手に酒を酌み交わし星を相手に愚痴ってみよう。
 椅子の脇を眺めると、燃えそうなゴミばかりが道の駅のレジ袋に一杯になっていた。火はまだ熾きていた。ついでだから燃やしちまうか。
火にくべる。石油製品特有のガス臭が漂い、馥郁たるコーヒーの香りは瞬時に消し飛んだ。50メートルも風下にいるファミリーキャンパーの顔が一斉にわたしに視線を移したが、わたしは知らぬふりして青い炎を見やっていた。

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思いの外、コ芝居が長くなってしまったようですが、この数年の間にソロキャンプにデビューされた人たちにとっては概ね口元を緩めて頂くことになるのではないだろうか。今もそれが続いているかどうかは問題ではない。ここで申し上げたいことは、余暇の過ごし方が変わったことであり、旅の方向性であり選択肢が広がったことに気付いてほしいであり、こんなところにですらオーバーツーリズムを知る手掛かりは存在しているということなのです。

さて、ここで一つ質問を投げかけてみよう。
「キャンプは観光か ? 」
湖を眺めたりボートを浮かべたり、山を眺めたり登ったり、川遊びをしたり……釣り糸を垂れてみたり…… と考えれば一つの「観光」の形と答えられるご仁が多いのではないだろうか。
ところがギッチョンチョン。観光業界に云わせるとキャンプは「観光」に非ずとなるのです。では何か。「ホビー」に括られることになる。
馬鹿馬鹿しいでしょう ? 道の駅に立ち寄りあんなに買い込んで、買い忘れた水やおつまみはキャンプ地地元のコンビニで仕入れて地域経済活性化とまではいかなくともお金は落としているわけです。
しかし、存在をセグメントされる際には「ホビー」に仕分けられ、「観光客」として仕分けを見ることはない。
従って、国や地方行政機関が策定したgo to ナンチャラの補助金対象にもならず、割引対象にもならず、ボートに乗りたきゃ実費でどうぞ。飯が食いたきゃ自腹でどうぞという按配の仕分け分類だったわけなのです。

 ところがオーバーツーリズムという負の存在においては、しっかり存在が担保されるのです。観光業界から云わせれば観光客ではないのにオーバーツーリズムの事象に数え上げられてしまいます。
一体全体この国が云うところの「観光」とは何なのでしょう。
観光業界って何なのでしょう ?

昨今では熱も冷めた様子でキャンプ用品の中古市場が賑わっているそうであり、キャンプ用品を専門に取り扱っていた有名ブランドショップでさえ利益率がこの二、三年前とは比較にならぬほどの落ちこみだという。

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モノはついでだ。行きがけの駄賃という言葉もある。もうヒトクダリ書いておこうか。その方が後々解かり易いものとなるだろう。
つづく


※尚、本稿は分割したものを後々一本にまとめる予定であり、e-pubooにおいて電子書籍化する予定です。従いまして相応なる原稿量であり、シリーズものとなる予定です。

尚、お気づきの点などおありの際は、折角ですからコメントで残してくれると有難いですね。慌て者______拙速なる自己主張型コメントへの返信はスキを含めて返信しかねる場合もありますが。
こういうものを書き出すと異端のTourism Doctrineの血が沸き立つのでお気をつけあそばしますよう。




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