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プロ陸上選手にトレーニングとリカバリーについて訊いてみた


バイロンベイからこんにちは。WRNのマロンです。
トレーニングでの体調のコントロールって、皆さんはどうしてますか?ハードな練習を詰めすぎてもリカバリーが追いつかないですし、身体への刺激が弱すぎてもトレーニング効果の向上に繋がりにくい。トレーニングとリカバリーのバランスって、めちゃくちゃ大事ですよね。
最近のスポーツ用腕時計はHRV(heart rate variabillity=心拍変動)をモニタリングして、自律神経の活動状態から体の回復状態も数値化でき、それに並行して睡眠の状態、ストレス状況の把握、自分の体がどのような状況なのかすぐ数値化して確認できるので、トレーニーには本当に嬉しい!!僕が最近購入したWHOOPは、身体の感覚と実際の数値が正確に一致するので本当に驚きます、そんでもってアプリがすこぶる良い!一言で言うなら、まさに”携帯パーソナルトレーナー”なのです。スポーツ用腕時計については、また別の機会にもう少し詳しく紹介させてください。

図1. スポーツ用腕時計(写真は、僕が愛用するWHOOP。)


前置きはさておき、この、トレーニングとリカバリーについて、先月、2023年鹿児島国体3000scで2連覇を達成し(おめでとう!)、パリオリンピックに向けて邁進中の楠康成(くす・やすなり)選手にインタビューする機会をいただきました。
その前に、僕と楠選手の関係を少しシェアさせてください。楠選手とは、実業団時代からの付き合いでもう10年になります。間違いなく出会った選手の中で一番タフな選手のうちの一人、単独アメリカトレーニング留学、1500m日本選手権準優勝の実績があるにも関わらず1500mから3000sc(障害)への種目変更、変化を恐れない姿勢と競技に対する熱量からはいつもやる気をもらっています。プライベートでも仲良くさせてもらっていて、うちの嫁、嫁ファミリーは楠選手の大ファンです。普段は陸上競技に全く興味はないくせに、楠選手の走るレースはしっかり観戦します。笑
最近結婚したので、ハネムーンはきっとバイロンベイに来てくれるはずです(待ってます!)。

図2. 奄美旅行 with 楠選手(写真左)と僕(写真中央)。

前置きが長くなってしまいましたが、僕の独断と偏見、ランナー目線で質問したいことすべて質問してみました。

トレーニングではコアとメンタルを重視している

マロン: 週にどのくらいの距離を走っていますか?
: トレーニング期は週130-140kmくらいですね。試合期は週100-120kmの間に抑えてます。

マロン: フィジカル面のトレーニングは、どのようなことをしていますか?
: 今はコアしかしてないです。
マロン: ウエイトトレーニングをする時期もあるのですか?
: 今はトレーニングのボリュームをかなり多くしていて、フィジカルトレーニングと(ランニングと)のバランスを今丁度迷っていて、フィジカル面を少し抑えている状況です。
マロン: 陸上以外の部分で楠選手が行っているクロストレーニングはありますか?
: メンタルトレーニングですね。
マロン: どのくらいの頻度でメンタルトレーニングするのですか?
: 60分のトレーニングを月に二回ですね。始めてから、かれこれ5年が経ちました。
マロン: メンタルトレーニングをするなかで、一番変わったことというか、エピソードなどがあれば教えてください。


今自分が何をしているのかが明確になった

: 自分の根源というか、自分がなんでやってるのか、自分が今何してるのかっていうのがはっきりするようになったので、何というか、誰とでも話しができるようになりました(笑)。他人と比較することが減りましたし、人との違いを受け入れられるようになりました。これは、アスリートにはとても大切なことだと思っています。
マロン: ということは、メンタルトレーニングを始める前は、考え方にブレが多いような状態だったのですか?
: 以前は、「目標」イコール「ゴール」だったのですが、その前に「ミッション」を設定することができました。今では、「目標」に対してとか、「目標」が自分の「ミッション」のどこにあるのかを考えて、そこに向けた「プロセス」を大切にできるようになった気がします。大切にというか、どちらかといえば、よりアグレッシブにできるようになったと言った方が正確かもしれません。


以前は「強くて楽な練習」と「弱くてきつい練習」をしてた

マロン: トレーニングとリカバリーのバランスに関して、参考にしている指標や数値はありますか?
: 乳酸(マロン注 :血中乳酸値)が取れると良いのですが、毎回は取れないので、今は心拍を参考にしています。トレーニング強度でいうと、以前は全体的な強度を高くしてたので最大値にアプローチする余裕がなかったのですが、今は最大値にアプローチする機会を作るために、その他の効果みたいなのを最小限にとどめようと思って、できるだけ楽に効率的に欲しい負荷を入れる、みたいなことをしています。
マロン: その最大値に達する練習がポイント練習ってことですか?それとも試合ですか?
: 試合かポイント練習が週に一回必ず来るんですけど、その週に一回の最大値に達する練習のために、他のポイント練習やジョグ、リカバリーの優先順位を決めて、疲労を最小限にする、ということをやってます。
マロン: 弱いポイント練習と強いポイント練習があって、週一回オールアウトしたいところに力を出せるようにコントロールするってことですね?
: そうです。以前は、「強くて楽な練習」と、「弱くてきつい練習」をしてたんですけど、いまは「弱くて楽な練習」と「強くてきつい練習」をしています。
マロン: その一番きつい練習は週の最後に持ってくるんですか?
: はい、その通りです。週の最後に「強くてきつい練習」をして、次の日ロングランで、一週間の距離調整をした上で休む、という感じです。
マロン: 弱い練習と強い練習の心拍数ってどのくらいなんですか?
: 弱い練習はは最大心拍数の82%-85%くらいを目指していて、そこを出すための優先順位が距離です。例えば、距離を8-12kだとすると、その8-12kで82%-85%がMAXになるような練習を組んで、その際に距離を分けて設定します。考えます例えば400m x 20本、1000m x 10本、5000m x 2本、2000m x 5本みたいな感じで分けています。この中で心拍数がその値(最大心拍数の82%-85%)に収まり切るようなペース設定をする、といった感じですね。なので、結構楽ですよ(マロン注:全然楽そうじゃない笑)。
マロン: 最大心拍の82%-85%を狙った練習のペース設定って難しくないですか?
: 最初は自分もよく分からなかった時期があったんですけど、試行錯誤しながら自分に必要なペース設定の感覚を掴んできています。


グルテンフリーにしつつ、食事量と栄養摂取量は減らさない

マロン: 食事面、栄養面で気をつけてることは?
: 小麦を食べない、つまり「グルテンフリー」と、あとは、食事を減らさないようにというのを気をつけてます。あと「オレは接種す」は1日2本づつ消費してます(笑)。「オレは接種す」はカロリー自体は高くないのですが、BCAAを含むアミノ酸が8000mg入っていて、その他にも鉄、ビタミンも豊富なので、リカバリーには欠かせないですね。

図3. マロン注:楠選手は「オレは摂取す」のファミリーアスリートです。


睡眠の質を上げるために、小刻みな複数回の昼寝を意識している

マロン: 睡眠時間に関して意識してることはありますか?
: 練習の性質上リカバリーの時間ををしっかり取りたいと思っています。そのため、朝練習することが多くなり、昼寝を意識して取るようになりました。ですが、2時間とか継続して寝てしまうと身体がだるくなってしまうので、15分から20分の仮眠を、身体の状態に合わせて1日2~3回取るようになりました。


結果を出すために一番難しくて大事なことが継続

マロン: 最後に、楠選手が考える結果を出すために必要な事を教えてください。
: 継続ですね。結局色々やりましたけど、ちゃんとやるって決めたことを継続しないと何もできないですね。継続することだけを考えてもしょうがないっちゃしょうがないですけど、結局続かないことには何も始まらないですね。
マロン: それを続けるためのメンタルトレーニングだったりもするんですか?
: それは間違いないですね。モチベーションっていう意味の継続もそうだし、練習強度もリカバリーも含めて、怪我してもダメですし、やる気が無くなってもダメですし、ってこと考えると継続が一番むずかしいところですよね。
マロン: 楠選手貴重なお時間ありがとうございました。

* * *

皆さんの今後のトレーニングやリカバリーの考え方だったり、目標達成に向けて少しでもプラスになること間違いないですねこれは!
久しぶりに楠選手と真面目な話したらなんか緊張しましたw
2024年の楠選手、楠選手率いる AMI SHARKS の活躍に乞うご期待です!!

それでは、また。
Peace out ✌


楠 康成(くす・やすなり)
株式会社SHARKS 代表取締役
高校まで阿見アスリートクラブで育つ。高校卒業後、小森コーポレーションを経て、阿見ACトップ選手となる。2017年拠点を単身アメリカに移し、ロンドン五輪1500m銀メダリストのレオ・マンザーノ選手と共に指導者であるライアンコーチのもとでトレーニングを積み、2018年帰国後、阿見ACに加入した。1500mで日本選手権準優勝の実績をもつが、2019年シーズンより3000mSCに挑戦。2戦目の2000mSCにて日本最高記録を更新。2020年日本陸上競技選手権大会3000mSCで準優勝、日本歴代10位の記録を出す。2021年12月より株式会社SHARKS代表取締役社長を務める。2022年日本陸上競技選手権大会3000mSC日本歴代9位の記録を出す。


バイロンベイにて

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