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ファースト・エンカウント

視界が真っ赤に染った。錯覚だ。

コックピットを違えず貫く筈だったブレードを左腕のバックラーで辛うじていなした。

脇腹を浅く裂く衝撃。途端に金属が沸騰しヒュームの匂いが充満した。

質量差を活かして押し返す。浅い手応え。バーニアを吹かして後方へ飛び下がったのだ。追う事は出来ない。先の斬撃で機体温度が急上昇しラジエータがフル稼働しているからだ。アラートが鳴る。なんて高出力なブレードだ。

肩部チェーンガンと右腕のアサルトライフルで弾幕を張る。祈るほど長い冷却時間。至近距離に踏み込まれたら次はない。

廃ビルに銃弾が突き刺さり粉塵が舞う。視界から消失。メインカメラはとうに破壊されセンサ類は使い物にならない。

背中に冷たい汗が流れた。

「姿勢制御システムが理論段階なので、有視界距離における格闘戦なんて机上論ですよ」

ブリーフィングで笑いながら話した技術者の顔が頭に浮かぶ。何が机上論だ。だったら目の前のこいつは何なんだ。

【静寂に包まれた廃市街地の中、俺は操縦桿を握り直した。】

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