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【連載小説】ライディング・ホッパー

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逆噴射小説大賞発!外骨格パワードスーツをまとい、ポストアポカリプスを舞台にしたパルクールレース!オリジナルパルプ小説「ライディング・ホッパー」のマガジンです。
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【連載小説】ライディング・ホッパー 総合目次

【連載小説】ライディング・ホッパー 総合目次

イントロダクション大崩壊後の世界。インフラ対策に開発された駆動脚(ライディングギア)は瞬く間に普及し、若者の間では駆動脚を駆り、廃都市を巡る競技レースが大流行していた。

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『ライディング・ホッパー』は主人公ワタルを中心に進行するキャ

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ライディング・ホッパー チャプター2 #9

ライディング・ホッパー チャプター2 #9

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「巽に続いてカナズミまでもがあんな子供相手に敗北を期するとは、全くの惰弱!惰弱の極み!」

ロバート&ウィルソン・インターナショナル本社大会議室!天井から吊り下げられた大スクリーンに映し出された、カナズミの敗北を見届け開口一番に言い放った、頬に古びた傷跡を残す厳つい顔つきの初老の男はR&W代表取締役兼本社工廠長、ロバート・ツカモト・メイスンその人である!

「勝

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ライディング・ホッパー チャプター2 #8

ライディング・ホッパー チャプター2 #8

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ぞわりと、不快な感覚を覚えてアカネはキャノピー内を振り返った。それは髪にゴミが付いた感覚にも似ていた。遠隔ドローンのカメラをオンにし、俯瞰視点からリヴィエールを見下ろす。

無数のドローンが編み込まれたリヴィエールのドレスにワイヤーでぶら下がる影。ワタルの乗るトレミーだ。

「あいつ、往生際が悪い!」

先程まで勝ち誇った顔だったアカネはキッと表情を変え、体を這

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ライディング・ホッパー チャプター2 #7

ライディング・ホッパー チャプター2 #7

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モニタを確認する。リヴィエールは一直線に"ここ"を目指して一直線に突き進んでくる。距離が離れているにもかかわらず、肉食獣に目をつけられたかのような緊張感が全身を満たした。

「かなりの速さです。リヴィエールの飛行ルート上に乱気流が発生しています」
「ルート変更!もっと低空でこいつがギリギリ通り抜けられる道を検索して!」

ライディングギアレースでは相手の機体を直

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ライディング・ホッパー チャプター2 #6

ライディング・ホッパー チャプター2 #6

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つかの間の浮遊感はあっという間に過ぎ去り、風に煽られ、剥き出しの座席が刺すような冷気に包まれる。落下のスピードをそのままに、再び腕のワイヤーを走らせる。ビル壁にがっちり食い込む感触。右、打ち込む。飛ぶ。左、打ち込む。飛ぶ。

リヴィエールはいつの間にか後方へ置き去りにしていた。こちらのことを全く気にかけない進路はアカネらしくない。トレミーの機体サイズで通過できる

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ライディング・ホッパー チャプター2 #5

ライディング・ホッパー チャプター2 #5

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「まったく、あんな無茶苦茶な使われ方をするとは」

中継モニタ越しにワタルがビルの間をスイングする様を見て、コウイチロウは苦笑した。

あれは本来、重機装備に換装したライディングギアのために開発したものだ。グライダーにしても、有事の際の仮設住居に使用するための自動仮設構造の骨組みに、強度、柔軟性、対裂性に秀でたタープ生地を組み合わせている。どれも巽建機が独自開発

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ライディング・ホッパー チャプター2 #4

ライディング・ホッパー チャプター2 #4

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「ふうん、また新しいオモチャを作ったみたいね」

ワイヤーにパイルバンカー、そしてグライダー。相変わらず妙なギミックを作ることにかけては右に出るものはいない。瓦礫が散乱する不整地だらけの地上と違って、障害物のない空路を悠然とゆく飛行型に対抗するためには、単純に地面を走るだけではまともに太刀打ちできない。かといって、まともに空を飛んで張り合おうとしてもすぐに推進剤

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ライディング・ホッパー チャプター2 #3

ライディング・ホッパー チャプター2 #3

ライディング・ホッパー 総合目次

爪先に備え付けられた鉄杭がコンクリートを砕いた時には、すでに壁面からはとっくに遠ざかっている。壁を打ち砕いた反動でライディングギアは爆発的な跳躍を見せ、次々と廃ビルの壁を蹴り渡ってゆく。HMDゴーグルがアラートを鳴らし、ナビが視界にガイドを流した。

すかさずアンカー付ワイヤーを目の前のビルに打ち込むと、振り子の要領で回り込むように跳躍方向を強引に変更する。その

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ライディング・ホッパー チャプター2 #2

ライディング・ホッパー チャプター2 #2

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さて、それじゃあ何から話そうかしら。ストリートの話から?あっそう。別にいいけど。

東京の、ほら、昔自衛隊と企業がドンパチやり合ってたって話あるじゃない。あの主戦場になった辺りがそう。昔は高層ビルとかが立ってたらしいんだけど、あんまりに激戦だったから今じゃ廃墟のまま放置されてる。で、それが延々と続いてるからストリートってこと。言っとくけどあの辺り一帯の俗称だから

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ライディング・ホッパー チャプター2 #1

ライディング・ホッパー チャプター2 #1

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ワタル:主人公。
トレミー:ワタルの相棒。AI。
コウイチロウ:巽建機の御曹司。先のレースでワタルに敗退。
アカネ:ワタルの友人。カナズミ社所属。

かつては環状道路が引かれ、滋賀随一の観光スポットとして栄えた琵琶湖周辺には既に人の気配はない。ひび割れたアスファルトから生い茂る草木が路面を覆い隠し、豊かな自然へと還った美しい湖畔の一角に、そのコテージはあった。

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ワールド オブ ライディング・ホッパー(2):アライランス(五大企業)

ワールド オブ ライディング・ホッパー(2):アライランス(五大企業)

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アライランス(五大企業)
大崩壊後の混乱の中から、国家に代わる体制を独自に築いた連合統治機構がアライランス(五大企業)である。アモウ・オート・インダストリアル、カナズミ・フィナンシャル・グループ、ロバート&ウィルソン・インターナショナル、アストラル・バイオサイバネティックス、巽建機から構成される。各社は以前から本社機能を地方に移しており、大崩壊直後の大混乱にも迅

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ワールド オブ ライディング・ホッパー(1):大崩壊とライディングギアの勃興

ワールド オブ ライディング・ホッパー(1):大崩壊とライディングギアの勃興

ライディング・ホッパー 総合目次

大崩壊について
大崩壊とは、現在から50年ほど前に世界規模で大陸の形が変わるほどの大地震が起こり、陸海空あらゆるライフラインが寸断された現象である。これにより国家体制が崩壊し、日本列島は首都圏を中心に、略奪や暴動が起こる無法地帯と化した。その後、自衛隊の一斉蜂起などの事件を経て、現在はアライランスの企業5社が分割統治するようになった。各社は独自の政治経済体制を敷

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ライディング・ホッパー:チャプター1 #7

ライディング・ホッパー:チャプター1 #7

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「あーあ、またやっちゃったなー」

運搬用ギアに牽引されていく自身のギアを眺めながらワタルがボソッと言う。

「毎度毎度無茶をやるからです。正直使い物になるジャンクも底を着きましたし、これ以上のリペアは不可能です。これからのレースはどうするおつもりですか?」

「ノープラン」

「…かける言葉もありませんね」

うう、とワタルは唸るが何も案は浮かばない。この後に

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ライディング・ホッパー:チャプター1 #6

ライディング・ホッパー:チャプター1 #6

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「ちょっと!何でアイツの前横切ったんだよ!こっそり先回りする手筈だっただろ!」

「そうは言われましても、この視界では『国引』が何処にいるかは分かりませんので。ビーコンも反応しません」

「ああっもう!マズい!本気出されたら絶対負けちゃうのに!」

「あまり喋ってると舌を噛みますよ?」

「分かってーーー」

木々を掻い潜りながら全速で森を駆けるワタルのギアが、

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