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赤信号を守らないイングランド

すっかり慣れてしまったイングランド生活も最初は戸惑いや驚きの毎日でした。中でも1番驚かされたことは、「赤信号を守らない」ということ。

これは歩行者信号の話です。僕ら日本人からしたら、歩行者信号機は青で渡り、歩行中に信号が点滅したら、やや焦りを見せて小走りで歩道まで向かう。赤になれば足を止め、青に変わるのを待つ。これが普通というか常識です。

しかし、イングランドでは平気で信号無視をします。目の前に車が来ないのを確認して、安全であれば赤でも渡ります。これは大通りでも同様に見られる行為で、車が来ない隙を狙ってスルスルと渡っていきます。
僕も最初は戸惑いましたが、流れに沿って渡ることを覚え、今ではこの文化が心地良い所まで来ています。実際楽ですし、待つ時間が少ないのは快適です。とは言っても、猛スピードで突進してくる車や加速力が凄い車が多いので、注意は必要不可欠です。
要するに全て、自己判断に委ねられています。
また、逆に信号待ちをしているとスリや犯罪被害に巻き込まれる恐れがあると聞いたこともあります。よって、正直に信号が変わるのを待っている人は滅多にいません。



今回ただイングランドは信号を守らないんだよというカルチャーショックを伝えたいわけではありません。このような国民性がフットボールにも現れているように思えたからnoteを綴っています。それも良い意味で。


ある日の練習で2タッチ制限でのミニゲームがありました。2タッチ以内でパスを出すかシュートを打つか判断して、実行しなければいけないルールです。
均衡した展開が続いていると、ゲーム中盤で、相手チームの選手が意図しない形で2タッチしてしまい、追い込まれる状況がありました。その選手が戸惑っている位置はゴールに近い場所だったため、僕らはここぞとばかりにチャンスをもぎ取ろうとプレスをかけました。
相手はこれ以上ボールに触れることはできないですから、当然僕らが優勢。しかし、相手も単純じゃないだろうから、身体でボールをブロックして味方の援護を待つだろうと思っていました。


そして、僕らがプレスをかけた瞬間、その選手は思いっきりボールを外に蹴り出しました。
そうです、完全にこのゲーム内でのルール違反を犯しました。How many!!!と、ヤジが飛び交う中で、僕は1人、凄いなって思ってしまいました。確かにルールでは2タッチまでしかボールをコントロールできないですが、窮地に追い込まれた際に、ルールを破ってまでピンチを防げる判断力と実行力に驚かされ、感銘を受けました。
尚、最終的に僕らは負けました。
こういったミニゲームでも勝負にこだわり熱くなるのは当たり前で、ルールを破ってまで勝つためにプレーしたチームメイトの姿がカッコ良く、忘れられませんでした。


練習だけでなく公式戦の中でもこのような、日本っぽくいうのであれば汚いプレー、ずる賢いプレーは多く見られます。相手の頭を浮かして突破しようとした際に、相手は咄嗟に腕を出してボールを止めファウルに逃げたり。

逆に、僕が身体をぶつけられたシーンで粘りを見せた場面で、「なぜあのとき倒れてファウルをもらわなかったの?」と試合後味方に問われたり。

汚いプレーを象徴する、時間稼ぎもイングランドでは多く見られますし、僕らのチームもやります。
残り5分を切って、1点を追いかける展開になれば本当に勝ち目がないです。諦めてはいませんが、1点を守り切るために躊躇なく汚いプレー、ずる賢いことをやってくるので何も出来ずに時間だけが経過します。気づいたら試合終了の笛が鳴っていて、何回この負け方に対してストレスを貯めたか分かりません。



確かにルールとか常識とかやってはいけないことはあります。それは日常生活でもフットボールでも。しかし、時にはルールを破らなければいけない時や、ルールや自分を犠牲にしてまで実行しなければいけないこともあるわけです。そして、フットボールで言えば、それが逆にうまく行ったり、それが流れを変えるきっかけになったり、それが後々勝利をもたらすことになったりします。



日本でも赤信号を渡れとか、ルールを破れ!
と主張したいわけではないです。
しかし、このような考え方やニュアンスも時には重要であるとは言えます。
窮地に追い込まれた時に、冷静に自己判断ができるか。そしてそれを実行できるか。自分を犠牲にできるか。冷静にその瞬間を捉えて、判断と決断ができるか。なにより自分を持てるか。



今まで持ったことがなかった感情や考え方がイングランドで過ごすことで、イングランドフットボールに触れることで芽生えてきました。
それはフットボールでは勿論、日常の中で、生きていく中で必要なことであります。
イングランド人は生きていくために必要なことを、ただフットボールにおいても同等な行動を取っているだけなんだと思います。(彼らがフットボールの勝ち方を熟知しているのは置いておいて…)
変に考えてから行動に移しているわけでもなく、咄嗟に無意識にできる感覚的なものも備わっているとも思いますが、それを含めて彼らの国民性です。



フットボールと国民性
この関係性はとても強い。
今回の内容も含めて様々な場面で、「だからイングランドフットボールは強いな」とか「だから盛り上がるよな」と思うことばかりです。


フットボールと国民性についてはあと一つ面白いなと思うことがあったのでそれはまた後ほど。


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