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【開催報告】第8回あざみのカフェ:後編 「続:その連携ほんまモン??~心理職はどう見えている?保健師・精神科医・社会福祉職に聞いてみよう~」

 2022年3月26日に、「続:その連携ほんまモン??~心理職はどう見えている?保健師・精神科医・社会福祉職に聞いてみよう~」をテーマにした第8回あざみのカフェ。
後編をお送りします!

前編はこちら

◆目次

● 心理職と連携して良かったこと、困ったこと(後編)
■職種は名乗らない
■『自己開示はダメ』という思考停止
■連携相手への配慮
■『専門職の私』と『ただの私』が違いすぎる胡散臭さ
■カメラの視点の違い
■やっぱり雑談が大事
● 心理職と連携してイライラしたこと
 ■相手に言えないあだ名
● ラウンジタイム
 ■他の支援者が支援していることの意識
● まとめ

● 心理職と連携して良かったこと、困ったこと(後編)

■職種は名乗らない


 休憩を挟みましたが、休憩中も話は盛り上がります。人間性が大事という話から、藤田さんが、住民の心を開くのに「保健師の○○です」と枕詞に保健師とつける人とは仕事をしたくないと話します(例えば、他の役場に電話をかけた際にわざわざ「保健師の○○です」と出てくる人など)。藤田さんは、基本的に保健師という職業は言わずに人間として勝負していて、住民の方の中には藤田さんが保健師であることを知らない人も結構いらっしゃるとのことでした。

■『自己開示はダメ』という思考停止

 休憩後、まず休憩前のリスナーからのチャットによる質問を紹介します。「心理職は『自己開示はダメ』と学び、その背景を自分で考えずに思考停止している場合もあると思います。自分も心理職ですが…自己開示することのメリット・デメリットをそれぞれのスピーカーから伺いたいです。」というものでした。

■連携相手への配慮

 Aさんからは、心理職の養成課程に基づくものに理解できる一方で、自己開示については心理職じゃなくてもメリット・デメリットは一緒なのでないかとのことでした。職場で初めて会う人に自分の深い話をいきなりしないと思う。社会人として礼節をもって接することや、対人援助職としての配慮という基本が大切。普段、相談者に行っているように、例えば相手も忙しいだろうな、などといった配慮を連携相手や仕事仲間にも行えば良いと思う。普通に仕事と仕事で出会う人という方が大事なのでないか。この場合の自己開示はメリットデメリット枠組みで判断しているのではないように思うとお話されていました。

 藤田さんからは、いつも自己開示をしているので、メリットしかないと。ただし、妻も保健師をされていて、あまり家の中の話をすると巡り巡ってばれてしまうので気をつけている、とのこと。みなさん爆笑でした。

 櫛野さんからは、「自己開示は麻薬みたいなもの」との話がありました。使えば円滑な人間関係を構築するのに楽だけど、それにあんまり頼っていると専門性が疎かになる。そのあたりの意識は必要だと思う。僕の自己開示は脚色が入っています(笑)とのことでした。
 

■『専門職の私』と『ただの私』が違いすぎる胡散臭さ

 本日はチャットが活発です。リスナーから「『専門職の私』と『ただの私』が違い過ぎると、他の職種の方には、むしろ、その胡散臭さが透けて見えて、関係はうまくいかない気がします。」とのコメントでした。他にも櫛野さんの話を聞いて、麻薬という表現はよくわかる、自己開示のやり過ぎはよくないかもというコメントが入りました。

 自己開示するかしないという線引きでなく、それぞれの専門性に基づく自己開示があり、職種や場所によってもそれは異なることが見えてきました。

■カメラの視点の違い

 次に、休憩の前に聞いていなかったAさんに心理職との連携でよかったこと、困ったことを伺います。Aさんによると、良かったことばかりで、例えば不適切な養育環境で育ってきた子が、児相の一時保護所の場面で見せてくる行動ばかりに引っ張られてしまうところがあるが、心理司はその行動の背景にあるものを教えてくれたり、心理司との面接場面では子どもが全然違う姿を見せることを共有したり、毎日関わるため生活臨床側には変化が見えづらくなる中、入所日との変化を話してくれたりなど、カメラの視点が違うし、流している映像も違って、助かっている。相談支援場面では、心理のアセスメントの視点や、面接の関係の中で何が起きているのかの視点が助かるとのことです。

■やっぱり雑談が大事

 Aさんは、自分の面接について心理職と話をする機会があり、その会話を通して自分の「逆転移」に気づいたりしたこともあったそうです。先ほどの櫛野さんの話にもありましたが、心理職との雑談の時間は大事で、休憩時間などのケースの雑談や業務の単なる雑談も大事で、それがあるとないとで大きな違いがある。それは、なあなあや馴れ合いの関係性になるという意味ではなく。時間がありそうだなと思ったらAさんから話しかけていたそうです。
 ここでAさんと知り合いの小牧さんが話します。Aさんとは、ひきこもり支援で一緒になったそうですが、一緒に移動する時間に「そもそもひきこもり支援とは何ぞや」とか、「面接でうまくいかないときは何がおこっているか?」などの話をずっとしていたとのことでした。

● 心理職と連携してイライラしたこと

 続いて、岡田さんから心理職と連携してイライラしたことについて話を振ります。
 まず、櫛野さんからですが、他職種と連携していて自分たちの言葉だけで語られるとイラっとするそうです。ただ、心理職は言語が似ているので基本的にはない。先ほどAさんが言っていたけど、やはり相手がどう思ってどう感じるか、どう理解できているかを、患者さんだけでなく連携相手にも気遣いしながら話をすることが大事だと思うとのことでした。

■相手に言えないあだ名

 次に藤田さんですが、藤田さんは、怒りの閾値が高くてイラっとすることがあまりないそうです。ただ、面接が終わった後に振り返りをする時などに、支援者が住民に、その人の前では言わないようなあだ名を勝手につけて呼んだりするのを聞くとイラっとする。礼を失していると感じるそうです。
岡田さんから、本当のところ、その人をどう思っているかが見えてくる、裏と表があるという感じですね、とのコメントが入ります。藤田さんも同意して、心に携わる仕事をする人に、そういう風潮の人が意外と多い感じがしているとのことでした。

 櫛野さんが、それは本質的な話だと思うと話します。介護の現場でもとても多くて、その背景に「支援してやっている」という意識がどこかにあるのでないかとのことでした。

 身に覚えがあってドキッとした方もいたようです。振る舞いや言動が見られ ていることを私たちはよく覚えておく必要がありそうです。

 最後にAさんにイラっとしたことを聞きますが、Aさんからはむしろ福祉界隈の方にムカつくことの方が多いとのことです。ただ、児相の一時保護所で言うなら、先ほどの話の裏返しで、子どもの姿を言ってくれたり、話を聞いてくれたりするのはありがたいけど、面接場面が共有されなかったり、保護所側からこういうこともわかってほしいと言っても、心理職が相手にしてくれなかったことがあった。子どものちょっとした軽い話をしようとしたら、拒絶的な反応だった。A自身や保護所側の伝え方にも課題があったと思うが、その心理職にとっては、他に子どもと関わっている人と情報共有したり、一人の子を支え合うという発想がないのかもしれないなと思ったとのことです。

 時間が、残りわずかになり、リスナーからの事前質問を取り上げました。
「診療情報提供書」はどんなことが書いてあると良いかという質問に対して、精神科医の櫛野さんから、「書かれていて困ることはなく、書いてくれれば何でも良いし、生活歴などがあると特に良い」とのことでした。
また、精神科医の方からの質問で、児童の入院治療について福祉領域から医療にしてほしいことは何かという質問については、社会福祉職のAさんから、「まずは医学的アプローチ、治療を期待しているということ、また、退院後は地域で生活するので、生活臨床側や相談支援側がどういう点に気を付けると良いかなどを教えてもらえると助かる」とのことでした。退院する事前に関わり方や病院ではこうだったという情報を共有できると助かるということでした。

 最後に一言ずついただきました。
藤田さんからは、「保健師は怖くありません!役立つので、ぜひ連携してください。保健所や役場に連絡してください。」
櫛野さんからは、「医師も怖くないので、どしどし活用してもらえれば、役に立ちます。」
Aさんからは、「福祉職も怖くないので気軽に話しかけてください。心理職の方々には感謝しています。これからも教えてください。」

と、心理職との積極的な連携を申し出てくださいました。

最後に次のような話も出ました。

・雑談的に、“フォーマルだけどインフォーマルな”5分10分くらいの事例検討を日常的に話せるといいよね。
・管轄している組織の枠組みが影響し、組織として担う役割が入ってくるため、機関をまたぐ連携、特に学校との連携には難しさがある。

● ラウンジタイム

 カフェの後10分間を恒例のラウンジタイムとして設けました。その中でも活発にトークが展開されました。出ていたお話を紹介します。

 どの程度自己開示を行うかは人によって、職種によっても異なっているのでないか。保健師は自己開示する人が多い気がするという話がありました。それに対して、藤田さんは、基本的に自己開示をしているが、勤める自治体と同じ自治体には住まないように気をつけているとの話がありました。
 SCをされている方から、学校の先生方とのコミュニケーションを大切にしているという話もありました。「水筒可愛いですね。」から始まって、「あの子最近元気ですか?」という話などをして、だんだん仲良くなっていくというのは大事にしている。その中では、自分の私生活も多少見せていくのが作法というか、SC側も見せていかないと仲間になる気がないと思われるという感覚がある。以前、病院で勤めていた際には、専門職なので、それ以外のことはしないとういう姿勢で失敗して反省したことがあった。その病院では、上司から食事介助でも看護師の食事介助と心理士の食事介助は違うんだよと言われたとのことでした。
 
 SCの方との連携の難しさについても話題が及びます。ケースカンファレンスでは、出席者が何に困っているかという姿勢で入るようにしている。対象者だけでなく、対象に関わる他の人達がどういう思いを抱えてやっているかというのを大切にしているとのことでした。

■他の支援者が支援していることの意識

 それを聞いたSCの方から、教員向けの研修で「支援というのは千羽鶴のようなものじゃないか。」という話をしたことがあるとの話がありました。クライアントへの支援が小さい頃からずっとあって、一人ひとりの方からこんな折り鶴いかがですか、っていう投げかけがあって。だから、集めてきた千羽鶴は何なんだろうと流れで見ていくということが、連携していく上で必要なものではないか。何でこの子はこれまでの支援を必要としてこなかったんだろうかとか、鶴を折って繋いだところがゴールではなくて、それを見た人が、よしこの願いを叶えてみようって動き出して、ようやくスタートが成功なので、鶴を与えることに一生懸命になっちゃいけないと思っているというお話でした。

● まとめ

 他職種から見た心理職との連携で明らかになってきたこととして、「自己開示」についてのこだわりや勘違いについて、心理士はもっと考える必要がありそうです。支援者同士の連携の際には、心理職が専門性を保ち、かつ人間としての生身の自分や、自分の感性を見せていくことは大切なようです。これは、前回のカフェで出た「お互いの顔や人となりが見える関係」と共通します。今回は、日常的な「顔の見える雑談・コミュニケーション、そしてちょっとした情報共有」がとても大切だということがわかりました。
 そのような交流ができるような関係性、職場環境、心理士の意識のアップデートが求められている、と言っていいでしょう。

 また、支援対象者の前と、それ以外の場での態度の違いは、連携だけでなく支援そのものに関わる本質的な問題で、気を付けなくてはいけないことがわかります。心理士に言い分もあるかもしれません。異なることを言いたくなる場合には、その違いも理解の鍵になるので、態度の変化についての誠実な説明が必要になるのでしょう。
 
 連携は、まだまだ話がつきそうもなく、奥が深いですね。

 というわけで、第8回あざみのカフェ「続:その連携ほんまモン??~心理職はどう見えている?保健師・精神科医・社会福祉職に聞いてみよう~」の報告を終わりたいと思います!

 お話しいただいたスピーカーの3名の皆さん、参加された皆さん、どうもありがとうございました!またお会いしましょう!

※なお、次回のカフェは2022年11月下旬を予定しています。

報告者:坂口正浩・岩倉拓

【参加者の声】

(当日のチャットから一部抜粋)
・仕事に関する雑談をしていると、他職種の役割やできることが理解できるようになるので、とてもいいと思います。他職種に興味を持つことは大事だと思います。
・心理職の場合、自分の情報を語らずに相手の情報だけを引き出そうとするパターナリズム?を感じることもあります。
・自己開示にしても共有事項にしても何を話して何を話さないかも臨床力と言えるのかなと感じました。

(終了後のアンケートから一部抜粋)
・連携についての、人間性の大切さと礼節の重要性を認識することが出来ました。うまく連携が取れないときに、今回のお話を思い出して頑張っていこうと思いました。
・やはり、雑談は重要で職務専念義務違反というよりも大切な情報交換の場、関係者同士のラポール形成の場と考えることが大切なのではないかと思いました。
・保健師さんが心理職に気を使って相談できなかった話は、立場の違いなどが影響しているのを感じて勉強になりました。
・自分の専門性に自信が持てないから上手に人に頼ることも出来なくなる・・スピーカーの方々のお話を聞いていて、自分が陥るパターンが見えてきました。役割意識が過剰になると、どうしても抱え込む方向に走るので、一人の人間としてどう思うのか、出来るのか出来ないのかを見極める力が欲しいと思いました。
・心理職はクライエントへの自己開示については注意深くあるように言われていますが、連携や協働に関わる方々へのある程度の自己開示は重要で、その辺がごっちゃになっている心理職の現状があるのではないかと思いました。
・他職種連携では、専門的な領域の壁をなくすことがまず必要であるとかんじました。壁をなくすためには、人によってアプローチを変えていく必要があると感じました。専門的な知識やケースへの貢献度で壁がなくなる人もいれば、人間的な関わりを持つことで壁がなくなる人も感じました。そのため、連携先の人柄を理解することが重要なのだと思いました。
・チャットでもどなたか先生が学校領域の話をもっとききたい、と仰っておられましたが、領域に特化した他職種の方のお話をお伺いする機会があるとさらに具体的なエピソードやあるある!という感覚が増え、学びが増えそうだと感じました。

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