見出し画像

東京路地紀行 6 文京区本郷

文京区には路地のある町が多い印象があります。なぜだろうと思ったのですが、「本郷もかねやすまでは江戸のうち」とうたわれたように江戸の頃は本郷あたりは江戸の端に近く、大名屋敷もあったけれども、町人地が多かったのでしょう。そして谷地形が入り組んでいるのでその狭い谷間に多くの人が住むこととなり、長屋づくりから路地へといまの姿が形成されたのかもしれません。そんな谷あいにひろがった路地のなかでも本郷菊坂の路地は近接する2つの台地にはさまれた細長い谷地のさらに下、かつての川跡とその岸辺だった場所にひろがり、いまだに昭和の雰囲気をたっぷり残しています。
特にここで有名なのは、樋口一葉旧居跡の路地です。石畳の路地の奥に進むと青いポンプ式井戸は静かにたたずみ、囲んでおしゃべりをしてくれるお母さんたちを待っています。足元の路面は石畳が敷き詰められ、雨の日は滑らないように注意は必要ですが雨に濡れた石畳路地の美しさを見せてくれそうです。その奥には下見板張りの木造家屋にはさまれた階段がまっすぐにのびています。なんだかステージの上にのぼるような気分にさせてくれます。そして階段をのぼると上にまた家々が広がっています。そう、ここは本郷台の傾斜を利用した住居群です。上の路地を抜けて門をくぐるとそこは鐙坂の途中。この菊坂の路地は鐙坂の上から下にかけてひろがる一つのコミュニティ空間だということがわかります。

石畳の敷かれた小径に植木鉢の植栽、ポンプ式井戸。そして壁のようになっている木造家屋。
2時代前の昭和感がたっぷり
奥の階段もいい感じに経年変化を出しています
階段の上には旧町名の婦人会の防火設備がありました
これでも十分に昭和なのですが、自転車、電信柱を取り除いたら
大正、明治まで時代をさかのぼれそうです。それこそ樋口一葉がいた時代へ
鐙坂上にある路地コミュニティへの入口の門柱。
別世界への入口という感じです
その路地へ入っていくと片側が擁壁となり、反対の崖下側に張り付くように家々が建っています
お住まいの方がひと休憩するとき、ご近所と会話するときに使われていそうな木のベンチ

崖上から崖下にかけて高低差をうまく利用したこの路地はいつ来ても心を癒される存在です。一方でいまでも住人の方々が暮らしていられるプライベートな空間でもあるので、住んでいる方々の迷惑にならないように一人、または少人数で静かに楽しみたいものです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?