見出し画像

たかきび団子と桃太郎

ヴィーガンの間でよく使われる雑穀がたかきび。食感や味わいが肉っぽいと評判。なかなかスーパーではお目にかかれないが、直売所にて発見。ついでに甘味が強い品種、桃太郎というトマト購入。
きびに桃太郎となると、アレでいくしかないでしょ。ということでたかきびと桃太郎を料理しながら、裏桃太郎を妄想した記録。


材料

たかきび    120g
水       160cc
玉葱      半分
桃太郎トマト  1個
卵       1個
大蒜      2欠け
塩       小匙2
片栗粉     大匙3
ウスターソース 大匙1
胡椒      少々

日本人なら大概の人が知っているので説明不要かもしれませんが一応、粗筋。
むかーし昔、お爺さんは山へ柴刈りに、お婆さんは川へ洗濯に。
川の上流から大きな桃がどんぶらこと流れてきて、それを持ち帰ったお婆さんが包丁で割ると、中から玉のような男の子。
桃から生まれた桃太郎と名付けられた男の子は成長後、鬼ヶ島へ鬼退治に。
お婆さんは黍団子を持たせて送り出す。
途中で犬、猿、雉をお供に加えた桃太郎は見事に鬼退治。鬼ヶ島から財宝を持って帰還。

洗ったたかきびを圧力鍋で炊く。加圧後10分。

昔話とは何等かの教訓を含んでいることが多いのですが、この話にはそれが見当たらない。
鬼を退治した勧善懲悪の話とは言えない。物語中には鬼が何か非道を行った描写は皆無。
鬼という理由だけで桃太郎一行に攻められて、暴行と略奪を受けている。

トマトをミキサーで攪拌。

桃太郎と言えば岡山とイメージする人が多いが、実はその図式が定着したのは昭和三十七年(1962)岡山県で国体が開催、その時の知事が桃太郎をキャラクターとして前面に押し出したのがきっかけ。
岡山県周辺は古代には吉備国、これも黍、黍団子に繋がるということも定着を後押し。
吉備津彦命が温羅という鬼を退治したという伝説が岡山に遺り、温羅の居城と言われる鬼ノ城という古代城郭、温羅の首を埋めたと言われる神社が存在。この吉備津彦の温羅退治が桃太郎の原型と、岡山ではされている。


トマトジュース、刻んだ玉葱1/4、ウスターソース、微塵切り大蒜1欠けを加熱しながら攪拌。

実は桃太郎の伝説は岡山に限らず、全国に点在。
山梨県大月市には鬼が隠れていた洞窟、愛知県犬山市には桃太郎神社、瀬戸内海の女木島は鬼ヶ島だった等々。
場所だけではなく話自体にも幾つかのヴァリエーション。
桃から生まれたのではなく、桃を食べて若返った老夫婦が作った子が桃太郎。古来、桃は不老不死や若返りの力に溢れていると考えられていて、それを食べて出来た子ということ。

煮えてきたら、水溶き片栗粉でとろみ。

鬼が住む方角は丑寅。その反対側が戌や申の方角、それで桃太郎のお供は犬や猿という分析もある。
芥川龍之介が書いた『桃太郎』は平和に暮らしていた鬼を桃太郎一行が侵略、暴行と略奪を尽くしたという内容。
他にも様々な分析や解釈をしている人々。それらを漁っている内に、私も桃太郎を妄想。
この話は捨て子の復讐譚ではないか。


炊いたたかきび、炒めた玉葱1/4、片栗粉大匙2、塩、胡椒を混ぜる。

桃太郎は川に捨てられた子。成長後、自分を捨てた親の所に復讐に行った。
つまり桃太郎は鬼の子。鬼と戦える力があったのは鬼の血を引いているから。
そう考えるとお供の動物達の名前にも意味が込められている。
犬は居ぬ、猿は去る、雉は来じ、つまり来ない。
どれもここには存在しない者を意味している。つまりいない筈の捨て子だったことを暗示。

,

卵を混ぜて固まりやすくする。

先述した犬山市の桃太郎神社には『鬼の珍宝』なる秘宝が存在。
何のことかは大人ならわかりますね?
自分を捨てた鬼のような親の元へ乗り込んだ桃太郎、不幸な子を作った元凶であるモノを切り落として成敗。


丸めて油で揚げる。白いのは表面に片栗粉を塗したから。でも不要と気付いて途中で止めた。(言い訳)

また、桃には霊力があると信じられていて、神話でもイザナギが黄泉国から逃げ帰る時、追いすがる者に向かって投げ付けて撃退したという話から、無条件に悪い物と思われていた鬼を退治する男児が桃太郎と名付けられた?
昔、桃太郎侍というテレビドラマがありましたが、これも悪い鬼と呼ぶべき悪人を退治する話。


たかきび団子と桃太郎

丸めたたかきび団子、食感や味わいは肉団子と遜色ない。これは優れた代替食。ミートボールと言ってもわからない。
桃太郎トマトは酸味よりも甘味が勝っている。この桃太郎ベースのタレがよく合う。
たかきびには食物繊維やビタミンE、鉄分が白米の数倍は含まれる。すぐれものの雑穀。
団子にもタレにも玉葱と大蒜入り。この団子ならば犬、猿、雉ならずともお供が増える?

日本初の長編アニメーション映画は『桃太郎 海の神兵』
戦時中の昭和十九年(1944)に製作。翌年4月に公開。手塚治虫もこの映画を観て感動。
桃太郎とは強い男子の象徴ということで戦意高揚に使われた。
先述した芥川龍之介の『桃太郎』には当時、日本軍が始めていた南方進出への批判が込められていたという。
芥川の小説には度々、伏字が見られますが、昔は検閲というものがあったので仕方なかったことでしょう。つまり芥川龍之介は政治や社会への批判を作品に込めていた。芥川賞が純文学に贈られる賞なので、芥川本人がそうした批判精神を持っていたのはちょっと意外にも思える。

桃太郎にまつわるあれこれを妄想してみましたが、私自身の解釈、捨て子の復讐話から無理に教訓を引き出すと、命ある者、特に子を捨てると思わぬしっぺ返しをくらいますよということだろうか。
多くの日本人が常識のように知っているが、実はよくわかっていない御伽噺、桃太郎を妄想しまがら、たかきび団子と桃太郎をご馳走様でした。

この記事が参加している募集

#今日のおうちごはん

18,781件

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?