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ブルーベリージャ夢想権之助

六十余度まで勝負すといえども、一度もその利を失わず。宮本武蔵が五輪書で書いている自身の履歴。ほぼ負け知らずだと豪語している訳です。
もしかしたら武蔵に勝った若しくは引き分けにまで持ち込んだ兵法者を妄想しながら、ジャムを作った記録。

材料

ブルーペリー 150グラム
蜂蜜     50グラム
レモン汁   小匙半分

忘れた頃にやってくる、大河妄想料理「二天記」
二天一流には太刀勢法、小太刀勢法、二刀勢法、そして棒術が伝えられています。
武蔵晩年の弟子、塩田浜之助が使っていた棒術を取り入れたもの。
棒術と似て非なる物が杖術。
神道夢想流杖術の開祖となった達人が、夢想権之助。
夢想なんて姓はありませんから、これは奇を衒って、自分で名乗ったもの。本姓は平野と言われます。
生没年はよくわかりません。武蔵と同世代か少し若い?
元々は松本備前守から新当流を学んだと言われます。
それなりの剣客となり、背中に「兵法日本一 夢想権之助」と金文字で書いた羽織を着て闊歩。


ブルーベリーと蜂蜜を火に掛ける。

やがてメキメキと名を高くしている剣豪、宮本武蔵の名前を知り、ようやく探し当てた武蔵に挑む。
その時の武蔵は誰かの屋敷に逗留。庭に面した縁側に座り、木を小刀で削って弓を作っていました。
夢想権之助は名乗り、背中を向けている武蔵に勝負を望むと申し出るが、武蔵は権之助には目もくれずに一心不乱に木を削る。
いっそ、このまま不意打ちで打ち込んでやろうかと思ったかもしれませんが、迂闊に手を出せない鬼気迫る感。
暫く返答を待っていると、武蔵は膝の上に零れた木くずを手で払い、告げる。
「庭に降りられよ」


マッシャーでブルーベリーを潰しながら加熱を続ける。

共に庭に降りた武蔵と権之助。
権之助は木刀を握っているが、武蔵の手にはさっきまで削っていた弓。
弓とはいってもまだ弦も張っていない、木を削っただけの代物。
「武蔵殿、得物は」
「これでよい」
静かに応える武蔵。
木刀も刀も必要ない。その程度の相手と見くびられた。
怒りに任せて打ちかかる権之助。
軽くかわした武蔵、それと共に権之助の額を削りかけの弓でばちんと叩く。これにて勝負あった。権之助、瘤を作って昏倒。


仕上げにレモン汁を混ぜる。

五輪書に謂う、相手をむかつかせるという心理作戦に権之助は見事に嵌ったということ。
ただ、これで終わらなかったのが権之助。
発奮して更に修行を重ねる。その末に行き着いたのは、剣を捨てること。
そのきっかけというのが、筑前国(福岡県)宝満山に籠っている時、夢に現れた童子のお告げ。
「丸太を以て水月を斬れ」
それを信じて剣ではなく棒を用いての修行。やがて棒から杖へ。
打つ、突く、払う。剣以上に多彩な動きが出来る杖。修行と工夫を重ねて、杖術を極めていく。
剣では切れる部分は限られるが、杖ならばどの部位でも攻防自在。正に伸縮も自在。


ブルーベリージャ夢想権之助

やがて武蔵に再度の勝負を挑む。しかし、再戦の詳しい経緯等は伝わらず。
武蔵に勝ったとも引き分けとも言われ、はっきりしません。
もはや権之助にとっては勝ち負けはどうでもよくなったのかもしれません。一つの目標を乗り越えた。それだけのことだったのではないか。
兵法日本一などと吹聴していた頃の権之助ならば、武蔵に勝ったと大威張りで自己宣伝に努めたことでしょう。しかし自己を見詰めた修行の成果というべきか、人間としても成長したと言えるかもしれません。


ライ麦パンを軽くトースト。

その後、自ら編み出した杖術を神道夢想流と名付けた権之助は福岡の領主、黒田家に召し抱えられる。
黒田家において代々、主に下級武士が学ぶ武術として、その杖術は伝えられました。


たっぷりと塗る。

砂糖を入れていないので、甘味はほんの少しの蜂蜜。おかげでブルーベリーの自然な酸味と甘みがたっぷりと楽しめる。レモンの仄かな酸味が控えめにブルーベリー味を引き立てる。
ブルーベリーに含まれるアントシアニンは目に利く。視力向上、お年を召した方には老眼の進行を遅らせてくれるかも?

黒田家に召し抱えられた後の権之助の消息はよくわかりません。恐らくは黒田家の武士達に杖術を伝授する日々を送り、人生を全うしたのでしょう。
権之助が夢で神託を受けた宝満山には、権之助を祭神とする神社があります。
神道夢想流杖術は門外不出として黒田家で伝承されてきましたが、明治維新後、警視庁の逮捕術に警杖術として取り入れられました。
相手を殺傷することなく取り押さえられる杖術は、正に警察官に打ってつけの武術だったと言うべきか。

それにしても気になるのは武蔵と権之助の再戦の様子。
「一度もその利を失わず」という五輪書の記述からすると引き分け?或いは負けたとしても、それを認めたくなかった?
私は人生は負けたら終わりのトーナメントではなく、勝ったり負けたりを繰り返すリーグ戦と思っているので、負け知らずもいいけど、時には負けを認めるのも悪いことではないと思います。などということを書いていると、武蔵師に叩かれるかも?
剣に固執せず、杖道という新たな道を見出した夢想権之助を妄想しながら、ブルーベリージャ夢想権之助をご馳走様でした。


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