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サ婆娑羅ダ

華美な服装や目立つ行動で、既存の権威や常識にとらわれずに自由に振舞うこと。そういう人物を形用する言葉として、主に南北朝時代に使われた言葉が婆娑羅。
鯖缶を使った料理をしながら、婆娑羅について妄想した頭のおかしい記録。


材料

鯖の水煮缶 1缶
塩麹    大匙2
オリーブ油 大匙1
トマト   1個
レタス   半分

元々はサンスクリット語のヴァジュラに漢字を当てた言葉が婆娑羅。金剛石、つまりダイヤモンドを指す言葉。輝くダイヤモンドのように硬く、すべてを打ち砕くイメージから、派手でありながらも強い人物を指す形容詞として使われるようになったようです。
婆娑羅の代表格と言えるのは、やはり佐々木導誉。近江源氏、佐々木氏であり、鎌倉幕府でも重用され、本名は高氏。北条家の得宗、最高権力者であった北条高時から一字貰った名前。名前も由来も足利高氏と同じですね。
後に北条高時が出家すると、それに合わせて出家。佐々木導誉誕生。
足利高氏と共に六波羅探題攻略、鎌倉幕府滅亡後も尊氏と共に行動。室町幕府樹立にも貢献。


鯖を潰していく。

導誉には多くの婆娑羅な逸話。
妙法寺の前を通りかかった導誉。見事に紅葉した枝を見て、家来に枝を取って参れと命令。導誉は生け花好きで、一説には華道の祖とも言われます。
紅葉した枝を生け花に使おうと思ったのでしょう。
妙法院は代々、皇族が住職を務める門跡寺院。僧達は枝を折るなどとんでもないと怒り、導誉の家来を袋叩きに。
これに怒った導誉は妙法院を焼き討ち。
妙法院の本寺である延暦寺や朝廷からも抗議があり、幕府も放置出来ずに導誉を処罰。上総(千葉県)に配流。
ところが、導誉にはしおらしく配流先に向かうような殊勝さはない。道中、彼方此方で宴会を開きながら、のんびりと行進。
供の者達は延暦寺で神獣とされている猿の毛皮を腰に巻くというおちょくりぶり。
翌年には何もなかった顔で、導誉は都に戻っていました。


塩麹とオリーブ油を混ぜる。

華道ばかりではなく、能や狂言にも造詣が深いという文化人の一面も持ち合わせていた導誉。
当時、流行の闘茶にも熱心。これは茶道とは異なり、茶を飲んで産地を当てるという賭博めいた遊戯。
連歌に長けている一面もあり、傍若無人に振舞う無法者とは言えず、武力、政治力にも優れていることから、苦々しく思う者はいても、何も言えずといった風情。実力で黙らせていたというべきか。
苦々しく思っていた者の代表は尊氏の弟、直義であり、建武式目にわざわざ婆娑羅禁止の項目まで設けていました。もっとも導誉は無視していたようですが。


千切ったレタスと切ったトマトに掛ける。

足利尊氏の死後も続いた南北朝の動乱期、北朝方と南朝方は都を取ったり取られたりの繰り返し。
南朝の楠木正儀が都を占領。北朝方は退去。
正儀が導誉の屋敷に入ると、屋敷内は綺麗にされていて、酒肴まで用意されていたと言います。
粋な心遣いと言うべきか。これに感動した正儀は一切の略奪を禁じました。
後に自分達が都を退去せねばならなくなった時には、返礼として鎧と太刀を導誉の屋敷に置いていったそうです。

政治上のライバル、斯波高経が二代将軍、義詮の御前で花見を催すと聞くと、出席の返答をしていながら直前になって欠席。
わざと同日に花見を催した導誉、都中の貴人や芸人を集めて、高経の花見に閑古鳥を鳴かせる。更に巨大な壺を花の下に置いて大きな生け花に見えるようにするという派手は演出。「世に類なき遊」と言われる程に贅を尽くして、政敵の面目を丸潰れにしました。


サ婆娑羅ダ

サバ缶にはサバの旨味がしっかりと凝縮されていて、骨まで柔らかいのでそのまま使えます。塩麹で柔らかなしょっぱさをプラス。
ドレッシング風に上に掛けましたが、ディップとして使用してもいいかもしれません。サラダだけではなく冷奴にもよいかと。
鯖からDHAや不飽和脂肪酸を摂取。トマトのリコピン、レタスから食物繊維。ビタミンもしっかりと頂けます。

先述の花見の後、斯波高経は失脚。導誉は細川頼之を後任の管領に任命。義詮の後、義満が三代将軍に就任したのを見届けて世を去りました。
導誉の死後には、婆娑羅の風潮も段々と廃れていきました。義満による南北朝合一が成されて、世が平和になっていくと、秩序が優先され、一般に武士もおとなしくなっていき、婆娑羅な振る舞いも却って野暮のように見られるようになった?或いは幕府の締め付けも強くなり、それに抗える力や気骨も失われた?

好き勝手に振舞っていたような導誉でも、決して尊氏やその後継者達は裏切らず、仕え続けたのは足利尊氏という人物に余程の魅力を感じていたからではないかと思えます。
婆娑羅という者は決して傍若無人に振舞う無法者ではなく、一流の文化人でもあり、自分なりの美学や拘りを体現した者だった。佐々木導誉という人物を妄想すると、そんな風に思えてきます。
婆娑羅大名の代表とも言われる佐々木導誉を妄想しながら、サ婆娑羅ダをご馳走様でした。


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