見出し画像

インドに行かなくても川に行けばSDGsとか自分の生活を考え直せると思った話

最初は、後悔しかなかった。
大変なところに来てしまったと思った。

以前勤めていた会社の先輩に誘われて、多摩川リバークリーンに参加させていただいた。
ラフティングしながらゴミ拾いするから、水着とタオルと軍手を持って多摩川に来いと言われた。アクティブでない私はその時点で嫌な予感がした。
私の辞書に、水着なんて単語もラフティングなんて単語もない(誘っていただいて、ラフティングってなんだっけとネットで調べたレベル)。軍手もギリギリ。体を動かすことがストレス発散になるタイプでもない。
そして、ゴミ拾いって会社で強制される年に一度の日(しかもその日すら早起きを嫌がる)しかしたことがない。

そもそもリバークリーンて何。
ネットで調べた雰囲気では、先輩の言う通りラフティングをしながら川に落ちているゴミ拾いをすること。SDGsを楽しく学べる場として注目されているらしい。緑に癒されながら楽しめる地域貢献…なのか?
なんとなく、港区の意識高いお金持ちが参加する貴族の集まりなんだろうなと勝手な想像をした。
明らかに私とはかけ離れた世界なことは間違いないけれど、ニートの今「少しくらい人の役に立つことをしないでどーする!生きてる意味あるんか!そこに愛はあるんか!」と思い、社会科見学のつもりで自分を鼓舞して片道2時間の御岳駅に向かう。
しかし数時間後、この想像があまりに的外れだったことを知ることになる。

不安の中、いざ川へ。落ちたらどうしようしか考えてなかった

川に出るゴミと聞いて、お菓子のビニールや空き缶、ペットボトルををイメージするのは私だけではないはず。
もちろんそういった小物もあるのだけれど、上流から流されてきたという正体不明のプラスチックの破片や、もはやオブジェと化している謎の黒い物体まで。

こう言うゴミ拾いを想像していたのですが
放置パラソル拾ったり
木に引っかかっている何かの破片を、登って回収したり(私は無事を祈る係)
謎の物体。地面に埋まって全部繋がっている

バーベキューの片付け放棄など、明らかに非常識な見知らぬ人が出したゴミに対しては、「このクソ野郎めが!」とイラッとする。
でも、台風で飛ばされてきたり悪意なく上流から流されてきたであろう破片などを見ると、人間が生活していると言うだけでこんなにも自然に迷惑をかけているんだと言うことを知る。

これを拾って(埋まってしまっているものは掘り返して)自分たちの乗っているボートに乗せる。
もう、最後には自分たちの座るスペースもないくらいになる。
ラフティングすらしたことがなかったのにゴミに埋もれてラフティング、これが結構強烈体験だった。
気持ちのいい空気、キレイな緑が広がる川でラフティングしているのに、隣に山盛りのきったないゴミ。こんな地球、嫌だ!と思った。
でもこれが人間の生活を表してるかもしれない、とも思った。
自然を美しいと言いつつ、傍らにある大量のゴミは見たくないし考えたくない。美しい自然を見たいと思い観光に押し寄せ、ゴミを出して帰る。
見て見ぬ振りをしないで、自分と一緒にボートに乗っているこの山盛りのゴミを直視していかないといけないのだと思った。

川からゴミが減ることは本当に素晴らしいこと。
あの自然は守られて行くべきだ。
でも川からゴミがなくなっても、分解できない、リサイクルできないあの中の一部のゴミたちは地球のどこかにずっとい続ける。
地球上には今この瞬間もゴミが増えているわけで。
川にゴミを捨てる人や、バーベキューしてそのままセットを置いて帰るような人を「どう言う神経してんの?どう言う教育受けてんの?」と思った。確かに川に限って言えばその人たちは悪人だ。
でも、私だって大して着てもいない化学繊維の服を大量に持っているし、服以外にも最低限のもので暮らしているとは言えないし、プラゴミだって毎日出している。
地球にとっては、私だって川にゴミを捨てる人と同レベルなんだと言うこと。

断捨離ブームに乗っかって「とりあえず気持ちのいい部屋にするために、少しでも気に入らないものは買ったとしても捨てればいいんだ!」と思っていた。けれど、買わないことがそもそも大事なんだ(本来断捨離の教えはそうなのだけれど)。
服を買うときに素材を見たり、今持っているものを大事に使うとか、そもそも必要最低限のもので暮らすとか、今この瞬間から私にもできることはある。
ものを買わないと経済が回らないとか言う人もいるけれど、もう大量○○(生産、消費、集客…)の時代はどの業界でも終わっていると思う。
変わりつつあるとは思うけれど、社会のそう言う価値観を変えて行くことも大事なんだろうなと思ったり。
「SDGsとかゴミ拾いとか意識高めじゃん、貴族じゃん」と斜に構えていた私が、2時間後には川の中でここまで考えるようになるのだ。やっぱり百聞は一見にしかず。

普通にいる魚の群れ
こんなにキレイなのにゴミが落ちてる

リバークリーンとは何か。
確かにラフティングしながら川のゴミを拾う地域貢献なのだけれど、そんな綺麗事でもないし、薄っぺらい活動でもない。私の語彙力では言い表せない。
SDGsの流行りに乗って、本を読んだり講演を聞いたりして分かった気になって語っている人に是非一度参加して欲しい。
ゴミの現実も見られることもそうだが、圧倒的な自然を生で見て、水の冷たさを感じて、これは守らなきゃいけないな、と思えるのも素直にゴミを拾える理由かも。
とにかく、見て、漕いで、拾わないとわからない。

水に怯え、無事帰ってくることだけを目標にしていた私だが、気づけば夢中になっていてあっという間に時間が過ぎた。
舗装された平坦な道で普通に転ぶ私が無傷で帰ってきたのだ。どんなに運動神経悪い人でも大丈夫。みんなが助けてくれる。

ラフティング楽しかった。最初は恐怖しかなかったが


そして今回お世話になった皆さんに思うこと。
自分の好きなことにまっすぐな人は美しい。
自分の好きなことをやれている人は美しい。
自分の好きなことを語る時、人は皆美しい。
それぞれきっかけは別々でも同じリバークリーンと言うものに出会って、年齢も職業も住まいも違う人がひとつの目標に向かう。
なんだかとても眩しいものを見せられてしまった。ドラマみたいだった。
こんな貴重な体験ができたのだから、家でゴロゴロしてないで行くと勇気を出して言った自分をまずはとにかく褒めたい。

そして翌日からの2日間、全く貢献できなかったくせに謎の全身筋肉痛に襲われた。
次回までには、地上ではスムーズに歩けるくらいの筋力と体幹を鍛えておくことを誓います(言ったな)。







この記事が参加している募集

#SDGsへの向き合い方

14,713件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?