沈丁花美空の憂鬱 第3夜
チリン…。
開いたドアにふと目をやると、男性が入って来たところだった。
コートが濡れている。とうとう降り出したみたいね。今にも雨が降りそうな、どんよりとした1日だったから。
「参ったよ、降ってきた。」男性は冷たそうなコートを脱ぎながら、わたしの1つ向こうの席につく。
「今夜はかみさん、子ども連れて帰ってんだ。そう実家に。ゆっくりしてくよ。あ、ロックで。」マスターとそんな会話をしているのを聞くとはなしに聞いていた。ぼんやりと手元のグラスに浮いた氷を見つめながら。
奥さん、