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沈丁花美空の憂鬱 第3夜
チリン…。
開いたドアにふと目をやると、男性が入って来たところだった。
コートが濡れている。とうとう降り出したみたいね。今にも雨が降りそうな、どんよりとした1日だったから。
「参ったよ、降ってきた。」男性は冷たそうなコートを脱ぎながら、わたしの1つ向こうの席につく。
「今夜はかみさん、子ども連れて帰ってんだ。そう実家に。ゆっくりしてくよ。あ、ロックで。」マスターとそんな会話をしているのを聞くと
沈丁花美空の憂鬱 第1夜
こんばんは。沈丁花美空です。
俳優をやっています。 あ、知ってる?どうもありがとう。
ここは会員制のバー「わけあり」。わたしの行きつけのお店。
霧がかった雨降りのせいね。コートが濡れて手がちぎれそうに冷たい。 こんな夜はわたしも霧の様に溶けて消えてしまいたくなる。
え?テレビやお芝居で見るような美空じゃないって? そうね、その一面を知ってくれてる人には、 こんなわたしはギャップがあるかもしれな