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キロンを抱きしめる


占星術で扱う天体の中に、キロンという小惑星があります。

ケイローンやカイロンと呼ばれていて、土星と天王星の間に軌道を持つ天体です。

この星を知ることで、人生の痛みと癒しに自らを導くことができます。

ですから今回はこの大事なキロンについてお話をしていこうと思います。


太陽、月、水星、金星、火星、木星、土星。

ここまでの天体は、私たちの現実世界である物質の世界を表現しています。

そして土星以降の天王星、海王星、冥王星は私たちの世界である物質世界が及ばない領域、精神とエネルギーの世界、つまり神々の領域とされているのです。


キロンは、土星と天王星との間に軌道を持つ天体です。

時々木星と土星の間にまで軌道が入り込むことがあるそうです。

つまり、物質世界と精神世界をつなぐ星。


私たちの存在している世界は学びが多く、この学びは葛藤や制約そして苦悩として私たちにもたらされます。

これを表現しているのが、正に土星です。

そしてその学びに対して解決のための創造性を働かせることができるようになると、キロンという星が輝き、自らを癒しの道へと導けるようになるのです。

この解決のための創造性は、ホロスコープでは天王星が表現しています。


現実世界での学びや苦しみを、どのようにして精神世界からもたらされる創造性として昇華していくかということが、このキロンには詰まっているのです。



さてこのキロン、神話ではとても偉大なヒーラーであり、そして素晴らしい教師であったとされています。

不死の肉体を持つ、ケンタウロス族の一人でしたが、愛弟子であるヘラクレスの毒矢によって致命的な傷を負ってしまいます。


この毒矢によって、死ぬことが出来ない肉体を持つキロンは、大変苦しみました。

そしてゼウスに懇願し、不死の力をプロメテウスに譲り、死を迎えることとなったのです。


このお話が、キロンの傷としてとても有名なお話ですが、キロンにはもう一つの大きな傷がありました。

それは彼の出生に関係する傷です。


彼は神と妖精との間に生まれた子です。

クロノスというゼウスの父が、妖精のピュリラーと交わり生まれたのですが、クロノスは妻レアーの目を逃れるために馬の姿でピュリラーと交わったといわれています。

そして生まれた子供は、半分馬で半分人間の姿をした子供だったために、ピュリラーが悲しみ、菩提樹になってしまったそうなのです。


キロンは自らが生まれたことで、親に見捨てられ親を失ってしまいました。

彼の人生は大きな喪失という傷から始まったのです。

そしてその傷を乗り越えていくように、彼は沢山勉強をし、沢山の人たちを助けて生きていきました。

武術や馬術を教え、英雄を育てましたし、医術で人々を癒しました。

英雄や医者を養育しながら教育もしたのです。


WHOのロゴやお医者さんの看板で見かける蛇の巻きついた杖を知っていますか?

あの杖は、アスクレピオスの杖と言って、死者を生き返らせるほどに優秀な医者、アスクレピオスの杖なのです。

現代の生活にも深く関わるほど、有名な伝説を残している名医アスクレピオスですが、なんと彼を育てたのが、他でもない賢者ケイローンことキロンだったのです。

つまり、このキロンの持つ癒しというのは心だけでなく魂や命、肉体の癒しにも繋がっているのです。


彼の人生は傷から始まりましたが、その痛みを知識や技術へと変化させ、自分や周囲の人々を癒しに導きました。


こういった痛みの神話から、キロンは人生の中で避けては通れない傷。

トラウマや苦しみや葛藤をも表現します。


ですがそれと同時に、その痛みを知識や経験に変化させることができるということを教えてくれている星なのです。


キロンは天に上げられたとき、射手座という星座になりました。

射手座は理想を追求していく哲学と精神の星座です。


誰の中にも、このキロンは存在しています。

傷の無い人は存在せず、そしてそれを乗り越えられない人も居ないのです。


どのように受け入れ、自分の一部として抱きしめるか。

それによって人生は大きく変わります。


たいしたことの無い傷もありません。

向き合うのに一生を費やすことは珍しくないのです。

ですが、このキロンという星を見つめると、その傷が少しだけ愛しいものになっていくでしょう。

傷だって自分の一部、そして自分だけの大事な傷です。


そのままの自分を抱きしめるために、是非、このキロンという星に込められた、あなただけの傷の意味を知ってみてくださいね。








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