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まあ、なんとなく⑦

見知らぬ中国人のような女

ラインの内容をとりあえず最近のものは片っ端からみた。見知らぬ中国人のような女の人にご飯でも行こうや、と誘っていて既読無視されていた。失踪されていたとされる最低最悪なお母さんとつい数日前にラインをしていた…。内容をみると家で療養すると言っていたあの年末年始に実家に帰省していた。しかもお金を持ってとんずらするようなお母さんではないちゃんとしたお母さんがそこにいた。そこで自分の中では第一次ショックがあった。あんだけつわりしんどかったのに!!!なんで?!実家帰ってるんやったら実家帰ると、一言言えよ!!!と思いながらわなわなしながら続きを見た。地元の同級生のグループラインがあった。中身は競馬についてだった。ギャンブル好きだったんか?!知らんかったど!!?!とまた更にわなわなしながらも続きをみた。怪しい女というのは後残されるのは一緒に暮らし始めたとされる姉の名前の人物のみ。

走馬灯のよりに振り返る思い出

ラインをみながら彼との今までの出来事を振り返った。出会ってしばらく経った頃、私は思い立ったかのように江ノ島に旅行したいと思った。1人で行こうと思ったのだが、もし彼も来るならと思い、「今日仕事終わりに江ノ島行くけど、いく?」と唐突にどっちでもええわって感じで聞くと、行きたいと連絡がきた。仕事終わりに江ノ島へ向かって全然知らない居酒屋で飲んだ。彼はそこですごいお酒を飲んだのか酔っ払ったのか「姉ちゃんが離婚してん。」と、泣きながら話した。「まだ子供小さいのに、俺めっちゃ嫌やってん。俺んとこも離婚してるから離婚だけはして欲しくなかってん。姉ちゃんぶっ飛んでるから産んですぐに保育園預けてるし。ほんまに子供が気の毒でやれんわ…。」と。珍しい。そんな甥っ子のことを思って涙する人なのか!と驚いた。その後も、「俺いっとき癌小児の子と手紙交換したりしてて、100万寄付したりしたことあんねん。」とも話していて更に驚いた。そんな人間が世の中にいるのか?!と。そして、結婚の話が出てすぐに彼は「オーストラリア転勤願い出したわ!」とも言っていた。「え!!?!もう??!」と彼の行動力に驚いた。彼と付き合う前に「絶対童貞やろ?」と私はいつも彼をからかっていた。彼はどっからどうみても童貞臭がするのだ。すると「俺、前付き合ってた元カノ中国人で北海道1人で住んでた頃急にカラーボックス届いたりしていつのまにか同棲しとったことあってんけど、まじでぶっ飛んでたわ。」とイキリながら話し出した。「美味しい定食屋さんみつけたから連れてく!!言うて俺大戸屋連れてかれてん。めっちゃアホやろ。」と言って笑っていた彼。クリスマス前あたりにどうしても姉ちゃんの子供を預からなあかんくなってもてんと言って、子供が好きだった私はあんだけ泣くほどに大好きな甥っ子と会えるのか!と喜んで3人で遊んだ。年始にもまた3人で遊んだ。そんな思い出を振り返っていた。

もえ

頼む、彼は嘘つきではないように、そう切実に祈りながら開いたもえのラインページ。名前は仮名として、姉の名前はもえ、と知っていた。そこを開くと「今から帰るわー」とか、「今日パスタやけどいい?」「もえの分のレモンサワーもよろしく〜」などの当たり障りのない文章があった。めちゃくちゃ仲悪いって聞いてたけど普通に仲良さそうやん。と、最初は思った…。最近のものから3年前まで遡った。途中「今日ゴルフどうだったー?」「まあ、ぼちぼちだったわ〜。」ん??ゴルフなんか全くせんってこの前言うてなかったっけ?「⚪︎⚪︎(甥っ子)元気?写真送ってー」めっちゃ甥っ子好きやん!!とか思いながらもう遡れない場所までくると喧嘩していた。「寝かしつけしてほしい。もえだってめっちゃ毎日大変なのに今まで寝かしつけしてくれたことないよね?」みたいな内容でどうやら喧嘩をしていた。

ん?


私は完全に彼を信じていた。姉弟でこんなやりとりって、、、、するのか?しかも姉ちゃん離婚してうんたらかんたら言うてた時期と全然違う…。一旦全てを自分の携帯に収めて信頼している友人2人に送った。


これはもう嫁やろ


友人からはこの文字の返信が返ってきた。やっぱり????!と思った。ショックは大きかったが、なんとなくそれはうすうすと感じていたので、どうして彼はそこまで嘘ついてたんだろう。彼ってどんな人なんだろう。とかそんなことをうだうだと1人で考えていた。そこからはなかなかラインの中身をみたことを彼になかなか言えなかった。どうしても彼の口から真実を言ってほしいというそんな嘘つきじゃないという小さな小さな期待をずっと胸に持っていた。この出来事を私の中にしまったまま、このまま彼の嘘に付き合い続けるべきなのか、しばらく迷った。

タカガハズレル

妊婦である私よりも肺がんである彼を優先に何事も過ごしていた。が、ある日やっぱり自分の中にある何かが一気に崩れて彼の前で大泣きをした。「ごめん、この前ライン見たんよ。何を信じたらいいのかわからない。何を聞いてもはぐらかされるからそうなのかなって思って全部を見て見ぬふりをしてきた。私はただ本当のことが知りたい。どうでもいいから、真実を知りたい。自分が情けなくなってきた。」と、彼に伝えた。すると彼から「本当にごめん。」と言われて「姉ちゃんって言うてた人って奥さんなんやろ?」「…うん。」「甥っ子って言うてたのも自分の子供なん?」「…うん。それはちょっと事情があって…。」と。「別に怒るとかないからほんまのこと教えて。」と言った。

真相①

「実は、大学の時に子供ができてん。でも、それは俺の子かわからん子やねん。」とかそんなことを言っていたと思う。もう思い出せない。そして私は1番疑っていたことも聞いた。「じゃあ、癌も嘘!!?!」と。「それはほんまや…。」と返ってきた。

疲労困憊

別に彼の口から全てを聞いた訳ではなかった。てか私ってお母さんとラインでやり取りしとったよね?あのお母さんは一体誰…?そういえば携帯2台持っていたからもう一台の方でお母さんのふりをしてラインしていたのか??!なんでそこまでして??!そういえば甥っ子っていうこ彼のことパパって呼んでたやん…。なんで気付かんのだよ、私…。しかもその子に直接「パパじゃないやん!!」って言うてたな…。なんて最低なやつなんだ…。子供もできてこれから何をどう信じていけばいいんだ…。癌は本当に本当なのか…?正直もう疲労困憊だった。何をどう聞いても全てうまくかわしてくる彼だった。何を聞いてももう彼の口から真相は返ってくることはないのかなぁ…と。どうすればいいのかわからなくなっていた。

ケツを叩いた大イケメン

その頃何個か掛け持ちで働いていたうちの一つに飲食店があった。そこで送別会をしてくれる、と言って、イケメンのオーナーが焼肉に連れて行ってくれた。こんな飲み会!みたいなのは久々で嬉しいのにお酒が飲めないというショック。いいなぁ〜と思いながら、久しぶりにすごく楽しかった。二次会できっとずっと気になってたであろうことをイケメンオーナーが聞いてきた。ほんで「相手はどんな男なん?」と。私と10くらい変わるがきっと妹のように思ってくれていた(勝手にそう思っている)とても心配してくれていた。諸事情を話すと長いので端折りながら話した。すると「この前俺テレビでパラリンピックに出てる選手みたんよ。右腕が生まれた時からない子やねんけど、もう生まれた時からないからそこに対してなんにも思ったことがないってその子言うてて。それがその子にとっては当たり前なんやって。ほんでな、うちの子も小児糖尿にかかってて毎日注射打たなあかんねんけど、もうちっっさーーーい頃から注射しとるからそれが当たり前になって泣きもせずに毎日普通に注射打つねん。その子、産むって決めたんやろ?元々ないのが当たり前やったら別に何も思わんから、そんな男は絶対辞めとけ。ほんで母ちゃんになるって決めたんやろ?その子守る為におまえがこれからしっかりせなあかん!その子にはおまえしかおらんのやぞ!弁護士立てた方がいい。俺にも知り合いおるし、頼れ。おまえには幸せになってほしい。」

この男の言葉がまあ、重くずっしりと私の心を貫通した。

めちゃくちゃ半泣きになりながら「ありがとうございます。」としか言えなかった。私はようやっとこの大イケメンオーナーのおかげで目が覚めたのであった。

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