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"DIVIN" Vol.29

『DIVIN』(ダイヴィン)は、国内外の様々な記事や読んだ本、面白いinstagramアカウントなど、生活している中で得た「誰かに教えたい情報」をお伝えするニュースレターです。


ディドロ効果と走ること


4月は新しくオープンした飲食店の業務などで慌ただしい日々となり、このDIVINの更新ができないままあっという間に過ぎてしまった1ヶ月だった。

読書の数も頻度も一気に落ち、情報収集の時間も一気に少なくなってしまった。

自分に集まる情報は減り、新しいインプットが減ることでアウトプットも減る…という悪い循環に。

「毎月100km」というランニングのマイルールも、好調だった4月上旬とは裏腹に、徐々に頻度が落ち、結局最後の5日間で50kmを走って、最終日になんとか達成。

読書はめっきり減ってしまっていたが、ランニングの時間を活かしてポッドキャストはいつも聞いていた。

ブランディングエージェンシーTakramのポッドキャスト、Takram Castで聞いたことをまず。

この「モノとナラティブ」という回で話されていた話が印象的だった。

話は、スピーカーがペッパーミル(胡椒削り)を購入した話から展開していく。

そのミルを購入するまでに色々な商品を見て検討を繰り返し、半年が経ったそう。

最終的に購入を決めた、その少しサイズの大きいミルは、機能としては他の高級品には劣るものの、デザイン性やそのミルの歴史などは勿論のこと、なによりそれを見つけるまでの「時間」も相まって大切なアイテムになっているという。

そのことが「モノとナラティブ」(物語性)というテーマにつながる。
それらは単なるモノでなく、「景色」が見えるモノであると話す。

別のポッドキャストでは、現代美術家の杉本博司さんが「一部のデザインやアートには、その作品を観るとその作者が何を考えているのか、何が好きなのかが見えてくるものがある」と語る。

つまりそれは「哲学が見えるアート」であり、そういったアートやデザインにこそ価値があるとし、更には造詣が深い骨董や仏像の話へと展開していく。

まさにこれも一種の「景色が見えるモノ」であろう。

Takram Castでは、話は次第に『ディドロ効果』へ。

ディドロ効果(Diderot Effect)とは、生活の中に今までとは違う「理想的な価値」がもたらされた場合、新しい理想的な価値に合わせて、所有物や環境などを統一させようとする心理作用のこと。

この理論はディドロ氏のとあるエピソードから由来している。

決して裕福でないディドロが、ある日友人から高価なガウンをプレゼントされる。

気に入り、家で着ていたところ、身の回りのモノがガウンに合っていないことが気になり始め、家具などを次第に高級品に揃えていく…というエピソードだ。

この「ディドロ効果」は誰もが経験のあるものであると思う。
良いスーツを仕立てたらそれに合うような革靴がほしくなる、お皿に合わせたカトラリーが揃えたくなる…。

高価でなくても、例えば北欧風な家具を一つ買うと、今まで気に入っていたはずの他の家具もそれに合わせた北欧家具にしたくなる…など。

このポッドキャストを聞いていて面白いなと感じたのは、この心理作用はモノ(購買行動、購買意欲)だけでなく、価値観や考え方も同じことが言えるだろうと思った点。

つまり、自分にとってのランニングやこのDIVINを書くこと、朝ごはんをコンビニでなく自分で作ること等が、生活全体を変えるディドロ効果の一端を担っていると感じた。

ランニングを月に100kmもするためには、規則正しい生活(シンプルに言えば、前日はあまり飲みすぎず、早めに寝る)をしたり、仕事や予定をコントロールしたりと、その行動を果たすために生活リズム全体をマネージメントする必要が出てくる。

あるいは大好きな海外旅行も同じだろう。海外で出会う人や食事、デザイン、アートを通して、インスピレーションが生まれ、活力が生まれる。

刺激をもらい、行動を変えようと思うキッカケとなる。

自分にとっての「理想的な生活」を送るための、ディドロ効果をもたらすもの。

あなたにとってのモノや行動は一体なんだろうか。


"Amazon美容院"へようこそ


ロンドンでオープンしたヘアサロン。

このスタイリッシュなヘアサロンは、流通大手Amazonが新しく始めたプロジェクトだ。その名も「Amazon Salon」。

このサロンでは、お客さまは最高のヘアケアとスタイリングを体験できる。

拡張現実(AR)を用いたヘアコンサルティングから最新鋭の「ポイント&ラーニング技術」そしてAmazonらしくその場での購買まで可能な、業界の最新技術を導入している。

Amazon Salonでは、AR技術を利用してバーチャルなヘアカラーを試したり、Fireタブレットでエンタメを楽しんだりとヘアメイク時間を楽しめる。

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さらにこのサロンでは、プロ仕様のヘアケア製品が展示されており、陳列棚で興味のある製品を指差すと、ブランドビデオや教育コンテンツなどの関連情報がディスプレイ画面に表示されるという、「ポイント&ラーン」技術も試されている。

商品を注文するには、棚にあるQRコードを読み取ると、Amazon.co.ukの商品詳細ページが表示され、自宅に配送される。

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このサロンは、新製品や新技術を紹介する体験型の場であり、他業種とのコラボレーションを試す場となるそう。

組んでいるチーム(サロン)は、ロンドンで20年に渡って高い評価を得ている「Neville Hair & Beauty Salon」。

しっかりと実績のあるチームと組むことで提供サービスのクオリティを担保しながら、他業界とのコラボレーションや新技術のトライを行う。

Whole Foodsを買収し、ディストリビューターとしても一気に力を持ち始めたAmazon。その資金や技術を生かして、新たな業界へのコラボレーションも今後さらに出てくるかもしれない。


今週見つけたブランド:Figlia


ノンアルコールブランドFigliaは、この4月にNYでローンチしたばかりのブランドだ。

日本でも「禁酒」の話題でノンアルコールの文字を目にする機会が一気に増えたが、アメリカを中心とするD2Bブランドではノンアルブランドは多い。

以前でもこのDIVINでは、デザイン性に優れたノンアルコールビールやカクテルを紹介したこともあるが、Figliaは「ノンアルの食前酒」と謳う。


Instagramの写真やボトルデザインも良いが、サイトがとても素敵。

TOPの写真や色味もとても好みだが、レシピを伝える写真やアニメーションも一々良い。

ここまでこだわったクリエイティブはやはり日本では中々見ないので、それだけで自分には新鮮に写る。

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Figliaを作ったキッカケをFounderのLilyは、自身の経験とともに語る。

彼女は、若い頃から父がアルコール依存症と闘うのを見てきた。そして20歳のときに父を亡くした。

そんな一番身近な人の病気、姿を見てきた彼女は、お酒との付き合い方を考えるようになる。

そして、「お酒を飲まないこと」についても。

「飲酒しないこと」は、いまだに”違うもの”として見られていると言う。主流でなく、アウトサイダーであり、ノンアルコールドリンクは、たいていの場合はメニューの一番後ろのページに記載されている、と。

そんな肩身の狭い人たちが楽しんでその席を楽しめるように作ったFiglia。天然素材でつくり、砂糖も使っていないという。


今回も最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

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edited by Ayumu Kurashima
Instagram: @micronheads
Twitter : @micronheads_new

illustration by @mihirayuta


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