8.もしかして一度しんだのでは？
休むこととの戦い、第2ラウンドが始まりました。
今回はまず、気持ちからではなく、体調から悪くなります。
気持ちが悪い、吐き気がひどい、そして何よりも頭痛が一番ヒドい。こんなに頭が痛かったのは人生初です。そういえばこの数ヶ月で、初体験いろいろしてるなぁ。まだまだ人生楽しめそうですね・・・。
頭が痛すぎて、くも膜下出血かと思いました。救急車を呼ぼうかとも考えました。トイレに行くのも這って行き、お水を何口か飲むだけで、体中の体力を使い果たすんです。
救急車を呼ぶなら、今からスマホを片手に取り、119番を押して耳にあて、頭が痛いのですぐ来て欲しいと喋らなくてはいけません。その一連の行動を考えると、やり遂げられる気がしません。
頭が痛すぎて、もうこのまま死んでもいいや、とふと思ってしまいました。自分の役割もなくし、感覚もなくし、お金もたくさん持っているわけじゃない、独身だし、支えなければいけない守るべき存在もいません。
救急車を呼んで、病院に運ばれてベッドに寝かされてお医者さんが診察してくれる。その時間と労力を使わせるのも申し訳ないと思いました。
そう考え始めた矢先、ちょうどいいタイミングで少し眠気がやってきます。このまま寝ればもう目を覚ますことはないだろう。ウトウトと頭痛と戦いながら、そばにあった紙に、スマホのパスコードと、職場の名前を書きました。
発見してくれるであろう人へ、最後の力を振り絞り、あとの処理はよろしくお願いしますと心を込めて。
こんな終わり方も悪くないよね。一人でも悲しんでくれる人がいたらいいな。来世はもっと優しい人間になって、周りの人に希望と愛と勇気を与えて、アンパンマンのような存在になり・・・ここで力尽きました。
そして次の日、ケロっと起きます。
バカみたいに普通に起きた。昨日のあれはなんだったんでしょう。寝る直前、震える字で書いたメモを見つけ、そのままゴミ箱へ捨てました。無表情で。
ただ、顔のむくみだけはアンパンマン。そういう意味じゃなかったんだけどな。
とにかく頭痛が治っていて、そしてとてもお腹がすいていました。冷蔵庫を開けて、簡単に作って食べ、ミルクティーを飲み、一服。
それから洗濯し、溜まっていた洗い物をして、ゴミをまとめ、掃除機をかけました。至って普段の日常。すっきりと片付いた部屋で一人、Netflixを観ました。
あの頭痛はなんだったんだろうか。あの一日はなんだったんだろうか。
実は一度死んだんだけど、神様や死神もどの存在すらもそのことに気づかず、誰も知らぬ間に戻ってきたのか。いやまさかタイムスリップとかしてないよな。確認しよう、今は2020年。大丈夫、日にちもあっている。それか世の中に一人だけ取り残されたのか。確認しよう、窓を開けると向かいのおばあちゃんが布団を取り込んでいた。大丈夫、ただのNetflixの見過ぎ。
こうして頭痛に耐える以外はなんの苦労もなく、普段の生活に戻れたわたしは、また仕事に復帰するまで、淡々と過ごしていきます。
朝6時に起き、朝ごはんを食べ、家事をこなし、昼ごはんを食べ、スーパーに買い物に行き、夜ご飯を作って、相棒の再放送の録画を見ながら食べ（やっぱり反町隆史かっこいい）、お風呂に入って、夜22時には寝る。なんて健康的な教科書通りの生活。減った体重も元に戻りました。
化粧のりも良くなった気がします。相変わらず目の下のクマはなかなか取れませんが、世の中にはコンシーラーという素晴らしい発明品があります。歳ゆえにシミが目立ち始めてきてますが、それはもうどうにもならないのでどうでもいいです。
睡眠も変わり、よく眠れるようになりました。今までは3時間おきに目が覚めていたのが、朝までぐっすり。うなされる事もなくなり、変な夢も見なくなります。
オネエの骨とお茶するとか、家の中で落とし穴に落ちるとか、アリに囲まれるとか、色が綺麗な蛇と結婚式を挙げたがチューする時に戸惑ったとか、野良猫と口げんかして仲直りするとか、夢の中で様々な体験をさせられていたんです。そして疲れて起きていたのが、それも全くなくなりました。
書いてて気がついたんですが、オネエの骨とお茶した時、飲んだお茶は口からどこにいったのか見届ければ良かった。今さらながら、とても気になります。確かその骨は「お茶は熱々じゃないとダメなのよ！男も熱くないとダメ！」って熱心に話してくれました。勉強になります。
休んでいる間、通院した時に先生から、最近の気分はどうかと聞かれて、「安定しています」と答えました。
「少しずつ少しずつ増やしていった薬が、やっと効果的になってきましたね」
と言われて、なんだか少し褒められたような気がして、ちょっとだけ嬉しかったのを覚えています。やってきたことが無駄じゃなかったと思えることが、最近はあまりなかったような気がしていたから。
いつも飲んでいるラミクタールという薬は、通常の量が100mg。でもいきなり急に100mgは飲めないんです。様子を見ながら2週間ごとに25mgずつ増やしていく。そしてやっと100mgまで増やせた時期でした。
そうか、やっと安定してきたのか。
そしてまた、お仕事に復帰します。