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忘れかけていた誰かに会う楽しみ

以前、YouTubeを見ていた時に、国立競技場でのコンサートの動画がポンとおすすめに出てきたことがあります。

何気なく開いて見ると、満席の客席が映るわけです。そこにいるのは何万人という人たち。
わたしはそれを見た瞬間、怖くなってしまってすぐに動画を閉じました。

いつもなら「こんなにお客さんを呼べるなんてすごいなー」で終わるのに、その時は何万人の顔とそれ×2の目で、フラッシュバックのようなものを感じてしまい、吐き気とめまいを起こしました。涙もボロボロ出てくるし、落ち着くまでしばらくかかったし、そして10秒くらい再生してしまったのでしつこくおすすめに出てくるし。
そんなことがありました。

先日、通院するときに駅で電車を待っていたのです。
空いているベンチに座ってたら、席を一つ開けて20代前半くらいの若い男の人が座りました。
そこから約10分、電車が来るまでの間ずーっとスマホを鏡がわりにして、前髪をいじっているんです。
で、たまに人が目の前に通るとパッとやめて平静を保つのですが、また少ししたら前髪をいじいじ。
それを横目の横目でついつい見ちゃいました。わたしはちゃんとキマってると思うけど、気にしすぎじゃないのかい?

誰か大切な人に、これから会いに行くんだなーって思いました。
もしかしたら付き合いたての彼女かもしれないし、久しぶりに会う同級生かもしれないし、大切な人とのシチュエーションはいろいろありますよね。
合コンや、少しひねって元カノというパターンもありますが、それはそれで彼からしたら勝負どころ。

誰かに会うのが楽しみ!ここに遊びに行くのが楽しみ!そういう気持ちを、昨年の9月くらいから味わってないなってふと気づきました。
特に誰かに会う楽しみが皆無です。今の気分がそうさせているのでしょうが、ちょっと寂しいかもな。仕方がないことだけど。

思い出したい、誰かに会う楽しみ。ワクワクしちゃうやつ。

そんなことを考えていたら、あのコンサートの動画のことが頭に浮かびました。
何万人という人たちの顔、視線が怖かったんだけど、でもその中の一人一人はもれなく会う楽しみのために来ているだけで、そこにはワクワクしちゃうやつがいっぱい詰まっているのです。

わたしが思い出したい誰かに会う楽しみ。あれに映っていたのは、それだけ。
怖くもないし、泣くことでもない。
喜怒哀楽の喜と楽がすっぽり抜けて、わたしはその代わりに哀をいっぱい持ってた。

駅のホームで見た彼と重ねて、今だったらあの時のような気持ちにならないはずと思い、YouTubeの再生ボタンをもう一度押してみました。

大丈夫だった。最後まで見れた!
たくさんの人たちの顔が、全然怖くなかった。みんなニコニコ笑顔でいることに気がついた。
喜怒哀楽のピースがカチッとはまりました。やっと喜怒哀楽が完成。

あの時の彼、ありがとう。
あの時の彼の前髪、うねっていてくれてありがとう。
人は怖いモノじゃない。
教えてくれてありがとう。

誰かに会う楽しみ、取り戻したらいろんな人に会いに行こう。