7.にこやかに中指を
辛い時によく聞いていた音楽の話です。
わたしは星野源さんが大好きなんです。
これでもかというくらい、最近は毎日聴いています。職場への行き帰り、お休みの日に出かける時、家にいる時。ほとんど聴いていて、生活の一部になっています。そして源さんの声は、日常の音に近い。
どこが好きなのかと言われると、もちろんいっぱいありますが、あえて一つに絞るとするなら、言葉が好きなんです。
「蘇る変態」という本を出していて、それも気づけば何回も手にとって読んでいます。
自分の気分の波に翻弄されている時、源さんの言葉にものすごく助けられました。
「ただ生きていて踏まれ潰れた花のように にこやかに中指を」
この「にこやかに中指を」なんて言葉は、もう座右の銘にするしかないと思いました。
自分の攻撃性、ただただ自分中心の理不尽な怒りに対して、心の中でにこやかに中指を立てることができたら、その力を別の方向に生かすことができるでしょう。
怒りという感情は、時にものすごい力を発揮します。国を動かし、歴史を変えていく。ただ、怒りを暴力で表現するのは愚かなことだとは思いますが。
赤ちゃんが泣く、小さい子が駄々をこねる、それはまだ自分が知っている言葉が少ないからだと思ったことがあります(子育てをしたことないくせに言っているので、間違っていたら世の中のお母さんごめんなさい)。自分の感情、欲望をまだうまく言葉で表現できないから、泣くのではないかと。
前に、ある人から「本をたくさん読め」と言われたことがあります。
わたしは知っている言葉が少ないから、自分の感情を表現できずに中に溜め込み、表面張力ギリギリになったところで爆発させていると。今の素直な気持ちを的確に表現できたら、溜め込むこともないし、もっと世界がスッキリするよと言われて、それはとても納得しました。
本を読むことで、知らない言葉をたくさん覚えていく。そしてその言葉が持つ意味、力がだんだん分かってくる。言葉を味方につけること。それはものすごく強力な盾になるに違いないんです。
ここまで書いて、ふと急に椎名林檎が頭に浮かびました。
わたしは林檎さんも好きです。あんなに魅力的な女性が他にいますか?
林檎さんの書く言葉は難しい。どんなにエロいことを言っていたとしても、全て文学になります。そしてそれは、林檎さんが歌わないとそうはなりません。
林檎さんは確実に言葉を味方につけていると思います。武器が最強すぎて、はじめての村から出たばかりのこんぼうしか持っていない人には難しい。だけどすごくかっこいいのは分かるんです。
わたしも言葉を味方につけたい。だからこれを書き始めた、という理由もあります。
源さんや林檎さんみたいになりたいなんて、恐れ多くて口が裂けても言えませんが、言葉が持つ力で人を傷つけるのにはもうウンザリなんです。
躁鬱なんだからしょうがない、なんて1ミリも思いません。自分が言った言葉は、自分でケツを拭かなければいけないんです。きっとどんな時でもそうなのです。
そのケツを拭くに至るまでが、普通より時間がかかるとは思います。もしかしたらずっとずっと後になって、初めて分かることもあるかもしれません。だけど絶対に拭きたい。
絶対に自分のケツを拭く!
なんか小さい子の目標みたいになってしまった・・・。