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33.パニックは隣に転がっている

 そういえば前に、パニック障害になりかけたことがあります。

 最初は1回目に仕事を休んでいる間です。
 バスに乗っている最中、急に冷や汗や動悸が止まらなくなって、そのあとすぐ「もしかしたらこのバス事故るかも…」という強烈な不安に襲われました。
 直感や感覚で動く方なので、ますますその直感で不安になり、運転手さんにすぐ駆け寄って「バス止めてください!!」って言いそうになったんですよね。これはやばいと思ってその場ですぐ不安薬を飲み、両手を固く握って、大丈夫大丈夫と自分に唱えながら、やり過ごしました。
 
 2回目はお芝居を観に行ったとき。
 お芝居の途中、舞台が暗転したときと、急に大きな音がしたとき、震えが止まりませんでした。隣に一緒に観に行った友達がいたんですが、あまりの不安にソーシャルディスタンスどころではなくなり、ぴったりくっつこうかと思いました。密です。その時も大丈夫大丈夫と自分に言い聞かせて、なんとか保てました。

 ちなみに、そのお芝居はむちゃくちゃ面白かったです。友達が出演していたのですが、拍手喝采です。すごいよあなた、本当に。輝いてたよ!

 3回目はそのお芝居の帰りのバスの中。
 隣に友達が座っていたし、なんとか持ち堪えました。心臓の鼓動は凄かったです。
 その間、友達が猫カフェについて話をしてくれていましたが、ごめん、頭に全然入ってなかったよ・・・。猫の話ということだけは分かってた、でも上の空で返事しててごめんね。わたしも猫は大好きです。

 しばらく映画とか観に行けないなって思いました。ちょうどそのあたりでコロナの影響が出てきたので、結局映画館には行けなくなってしまいましたが、要するに閉鎖空間がダメなんでしょうか。なにがあっても逃げられないという不安。もー不安ばっかりじゃないかー!

 そんなことがあった次の通院の時、S先生にこのことを話しました。
 どうやら、躁鬱とパニック障害は併発することが多いらしいんです。次にパニックになった時の切り札として、ソラナックスという薬をもらいました。同じ症状が出た時だけ飲んでくださいと言われ、一応今でも一錠だけお守りに持ち歩いてはいるものの、結局一度も飲まずに済んでいます。

 そして閉鎖空間といえばエレベーターですが、それはなぜか全然大丈夫です。一人で乗っても大丈夫。100人乗っても大丈夫、イナバ物置。あっまた話がズレた。

 むかしテーマパークでバイトしていた時、お客さんにいきなり怒鳴られ詰め寄られたことがあります。若い男の人でした。

「この光と音は僕を攻撃しようとしているんですか?!」
「なんでそんなことするんだ!僕に恨みがあるのか?!」

 目が血走っているし、ものすごい剣幕で、めちゃめちゃ怖かったのですが、パニック障害というものはその頃すでに知っていたので、なんとか対処しようとしました。

「そんなことはないですよ。この光は部屋が暗くならないようにしているだけの、ただの光です」
「あなたには誰ひとり、危害を加えませんよ。ここは楽しい場所です」
「だから大丈夫です。なにも怖いことはないです」

 あくまで冷静に、きちんと目を見てゆっくりと穏やかに話しました。心臓バックバクでしたけどね。よく言えたな18歳の自分。今よりしっかりしてるじゃないか!

 しばらくすると、男の人も落ち着いてきて最後には「迷惑かけてすみません、怖かったですよね、本当にすみませんでした」と謝られました。
 その人がパニック障害だったのかという本当のところは分かりません。でもその気持ちが、今なら少し理解できるんですよね。当人は命の危機を感じているので、こういう行動をしてしまう。

 ちなみにその後、彼は楽しく遊んで帰っていったそうです。一部始終を見ていた上司にあとで言われました。良かったよ。良かったんだけど、上司助けに来い。

 ふんわりとですが、みんなが生きやすい世の中になればいいな、と思います。具体的にどうすればそうなるのかはわたしなんかには答えは出せませんが、いろんな事情を抱えている人たちがいる、という知識を持つだけでも、少しは変わるかもしれないですね。

 自分が知らなかったということを恥じる。大切なことです。