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わたしのヌテラ人生

子どもの頃から好きな、フランスの思い出の味といえば、ヌテラ(Nutella)とオランジーナ(Orangina)は欠かせない。

「ma vie de nutella(わたしのヌテラ人生)」というメールアドレスにしていたことがあるくらい、ヨーロッパの家庭でおなじみの、ヘーゼルナッツのチョコレートペースト「Nutella」が大好きだった。

パリの町のあちこちには、小さなクレープ屋さんがたくさんあって、子どもの頃からよくクレープを買ってもらって食べ歩きをしていた思い出がある。

日本で見かけるクレープといえば、マリオンクレープのような、フルーツやアイスやチョコレートソースなどがトッピングされていて、生クリームもりもりのイメージがあるけれど、フランスのクレープは、砂糖とバターとか、ジャムだけとか、とてもシンプルだ。シンプルだけど、それがおいしい。

シュガーバターなんて、本当にぺったんこのクレープをさらっとナプキンに包んだだけのものを渡されたりするから、クリームたっぷりのボリューミーなクレープを想像していると、肩透かしを食らうかもしれない。

そんなシンプルで飾り気のないクレープは、日本のホットケーキのように、週末の朝食など、フランスの家庭の食卓にもでてくる定番のおやつだ。

Creperie(クレープリー)と呼ばれる、クレープ専門のレストランがあったり、町中のカフェのデザートメニューにクレープを見かけることもあれば、カフェの一角にクレープコーナーがあって、テイクアウトができるようになっていたりする。

そんな町のクレープ屋さんに、それはそれは巨大なヌテラの瓶がいくつも並んでいるのを見て、小さなわたしは一瞬で心を奪われてしまった。色がどうみてもチョコレートだもの。

あの「Nutella」というものは、絶対においしいものにちがいない…。

そして、実際にとてもおいしかった。ふつうのチョコレートソースとは何かが違った(ヘーゼルナッツ風味の濃厚さだと気づいたのは、大人になってから)。

念願のヌテラのクレープを買ってもらった日以来、すっかりヌテラの沼にハマったわたしは、クレープ屋さんを見つけては、ヌテラのクレープが食べたいといって両親を呆れさせていた。

言い訳ではないけれど、いろいろなフランスの友人の家に遊びに行かせてもらったが、どこの家にもほぼ必ずと言っていいほどヌテラの瓶があった。

さすがに友達の弟がごく当たり前のように、スプーンですくってヌテラを食べているのを見たときはいろいろ心配になったけれど、フランスの子どもたちはみんなヌテラを通るようだ。

だから、日本でもある時から、スーパーで小さなヌテラの瓶を見かけるようになったときは、ものすごくテンションがあがった。大人になって、初めてジャンドゥーヤというヘーゼルナッツ入りの高級チョコレートを食べたときも、頭をよぎったのはヌテラの味だった。

バゲットにも、食パンにも、ヌテラはあう。バナナにかけてチョコバナナにしてもおいしい。でもやっぱり、クレープに塗って食べるヌテラがいちばん最高だ。

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