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かわいいって言わないで

ーあの子は言った。

かわいいって言わないで

もっと僕の中身を見てよ。


ーあの子は声を振り絞って叫んでた。

もっと先に行きたいんだ。

かわいいとかじゃないんだよ。

このままじゃ、だめなんだ。


ーあの子はやっぱり尖ってた。

だんだん丸くなってきたように見えて

やっぱりどうしても尖ってた。

ハリネズミみたいに尖ってた。

尖りたくて尖ってるんじゃない

どうしたって尖ってた。


ーあの子はそれでも、かわいかった。

見た目じゃない、声でもない。

光ってるのはその奥にある感性だった。

大人になっても持ち続けたその感性。

誰もができることじゃない

目の奥で輝いているものがあるから

その笑顔は誰よりも眩しかった。

かわいかったんだ。


かわいいって言わないでって言われても

その姿でさえもかわいかった。

どころか

本当はその姿が一番響くし、面白い。

人間らしくて、

一番中身が詰まってて、面白いから

かわいいって言わないでって

もっとたくさん言ってほしい。


試しに

「かわいい」を封印して言ってみようか。


「最高」

「最強」

「大好き」

「(笑顔)」


結局そういうことでしかないんだけど

いつかあの子が納得するまで

かわいいの壁を溶かすまで

「かわいい」

封印してあげてもいいよ。


ーあの子もいつか、言うだろうか。

かわいいでしょ?

かわいいって言ってよ

って言うだろうか。

もしもそんな日が来たら

それも人間らしくて、中身が詰まってて、面白いから

かわいいって言ってよって

たくさん言ってほしい。


ーあの子はあの子が思うより

ずっとずっと

魅力的で、面白くて、輝いている。

虹色の針を持つハリネズミ

誰よりも、いつも、いつまでも尖っている。

だからあの子の周りはいつだって

愛と笑顔であふれてる。


いつもあの子にありがとう。


* * *


このお話はフィクションです。


以下の記事を拝見しお題を拝借しました。大変申し訳ないのですが....この記事は広く読まれることを目的としていないため、コンテストへの参加はしていません。impressQuickBooks様、素敵なお題をありがとうございました!ちゃこさん、初出版おめでとうございます!


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