Tenmaru流!「介護業界、リーダー人材を育てる組織変革」とは?のご紹介
春の訪れを感じる日々ですが、同時に花粉症の季節でもあります。そんな私も例に漏れず、2週間ほど前から花粉症に悩まされております。今年は大量飛散が見込まれているとのことですので、暖かくなってもマスクの蒸し暑さと闘いながら(泣)、マスクや目薬でしっかり対策していきたいですね。
さて、今回は「Tenmaru(諸戸)流!「保健室のお母さん型組織変革」って?のご紹介」と同じく、弊社でお手伝いしている組織変革の一例をご紹介します。
組織変革!と聞くと「適材適所」や「育成」などのワードが浮かびますが、経営者様の中には「そんな理想通りにいけばいいけど、現実はそうじゃないんだよ…」と思われる方も多いのではないでしょうか。
人材不足、時間の制限、費用の問題…
「育成して適材適所で組織を活性化!」なんて、わかってるけど現実的には思ったようにはいかず、現場は日々の業務をこなすのが精一杯、という企業様も多いこと、私も存じております。
社員全員の意識が高く、キラキラした取り組みばかりが組織変革ではありません。
現状で起きてしまっている現場の困りごとをしっかり受け止めつつ、それでも今働いてくれているスタッフが少しでも前向きに働ける環境になるために良くしていきたい、そんな継続的な取り組みが成功した例をご紹介したいと思います。
慢性的な人手不足から起こる組織の問題
こちらは、とある社会福祉法人のお手伝いさせていただいた時の話です。
福祉の現場と聞くと、皆様はどのような想像をするでしょうか。年々需要の高まりつつある業界ながら、厳しい現場環境、慢性的な人手不足…その介護・高齢者福祉施設を運営する事業所様も、つねに人員不足に悩まされておりました。
人手が足りないとどのようなことが起こるでしょうか。無理なシフト、より過酷になる現場、疲弊していくスタッフ…
これらによって組織が疲弊していき、ついに離職。このようなことは全国の社会福祉法人で起こっている…というのは何となく想像できる方も多いはずです。
私がお手伝いさせていただいた事業所でもヒト不足を解消するための採用活動や人材配置などに注力していました。しかし、それ以上に問題だったのは、その環境の中での「リーダーポジションの人材確保」。こちらの事業所では、その第一歩でつまずいているような状況でした。
望まない形での「昇進」
離職率が高い、ということはその職場での勤務歴が短い人が多くなる、ということになります。すると、わずか数年間のキャリアにも関わらず、リーダーの仕事を任せざるを得ないという事態が発生します。
経験やスキルがふさわしいからリーダーになる、のではなく、単に「今いる人材」の中で、比較的年次が高い、という理由でリーダーをしなければならない。もちろん「昇進」と言える人事ではありますが、では実際のところ、そのような形でリーダーとなった人はどのように感じているのでしょうか。
そんなつもりじゃなかったのに…「資質」とのギャップ
そもそも「リーダー」という仕事はどのようなものでしょうか。組織の現状を把握し、メンバーの資質を理解し、現場を鼓舞し、みんなをまとめあげる…
福祉を志してきた方は、皆様とても優しい人達です。人の役に立ちたい、寄り添っていきたい、という思いが強く、目の前の利用者様に向き合う仕事をしたいと働く方達です。
福祉の現場は地道な日々の積み重ねです。しかし、そういう場所だからこそ、働きたいと集まった人材は、資質として「リーダー」という仕事に、喜びよりも苦痛を感じたり、苦手意識を持つ方が非常に多かったのです。
また、福祉の現場にいる人達は年齢も様々。年配者のスタッフも多く、若いリーダーが年配者を指導しなくてはならないことも多くあります。
そういったことが重なり、リーダーポジションの人たち、特に若手のリーダーが皆、自信を失っている、というのが現状でした。
本当は自信がないしやりたくない、でもやらなければいけない。組織側も、向き不向きなどを言ってる場合ではなく、引き受けてもらわざる得ない。こういった不都合な状況下で、それでも何とかする、というのが今回のミッションでした。
今いるリーダーはどんな人?
まず私が取り組んだのは、リーダーはどのような人達なのか、を把握することでした。そうです、ここではもう幾度も出てきております人材アセスメントです。
人材アセスメントを活用して、リーダーのタイプ、個性を可視化し、把握しなければ、適切な対処はできません。
すると、思った通り、今現在リーダーを務めている人は、いわゆる「リーダー気質」とは違っていました。
利用者に寄り添いたいとこの仕事を選んだ人達は、やはりサポート的な仕事に向いている人がとても多く、それはそうだな、と思います。
個性としては皆さん慎重で、リスクを回避する傾向が強く、変化に不安を感じ、地道に努力する方達でした。これはこれで素晴らしい資質ですし、福祉介護事業ではその個性を大いに活かせる場所だとも感じます。
しかし、今の職場では、リーダーの職務も担わないといけません。正直しんどい、できればやりたくない、と感じるのは当然なのです。
リーダーに向かない、を払拭する
まず、彼らリーダーの特徴として、「自己開示が苦手」というのがありました。
自分は今、こう考えています!こうしてほしい!と、自分の考えや意見をはっきりと相手に伝えることが得意ではないのです。
福祉の仕事は利用者の方々に寄り添う仕事。自分のことを話すよりも、相手に合わせ、相手の意見を尊重する方が得意なのでしょう。
しかし、それでだけではリーダーとしての役割を果たすことはできません。
そこで、まずは「自己開示」ってどういうこと?から始めました。あなた達はこういうタイプです。そして、ここにいる人達はみな、似たような資質を持ったタイプだとわかりました。そんなあなた方は、どんな話が話しやすいと感じますか?といったことをグループワークしていきます。
ワークを通じて自己開示の練習をすると共に、「話しやすい話題」を自ら見つけていき、それを現場のメンバーとのコミュニケーションに応用し、関係性づくりに活かしていきましょう、ということですね。
■苦手な人との接し方
もともと自己開示が苦手な人達がリーダーをしなければならないのも大変ですが、メンバーの中には苦手と感じ、接するのが難しい人もいます。
そんな人にも向き合うためにはどんな話をすればいいのかを、リーダー同志で集まり、コミュニケーションを取るロープレ練習の機会を設けました。
そして、練習の成果を現場で実践していただきます。何回かそれを繰り返すうちに「今日はこの話がうまくいった」「相手との距離感が縮まった」「相手から質問してくれるようになってきた」という成果が少しずつ出始めたのです。
もちろん、全然ダメでした、ということも多くありました。その場合は、他のコミュニケーション、他の話題を考え、練習し、実践していきます。
■信頼関係を築く!
苦手意識を持っていた人とコミュニケーションを重ねることで、互いに少しずつ打ち解けるようになり、良い関係を築くことができてきます。
「忙しい時に話しかけては迷惑なのでは」「どうせ私の言うことはきいてくれない」「自分はリーダーに向かない」などネガティブになっていたリーダーの自信も回復していきますが、効果はこれだけではありません。
定期的にコミュニケーションを取り、自己開示をすることで、苦手と思っていた相手もまた、徐々に変わっていくのです。
苦手な人は自分だけが苦手意識を持っていることは少なく、相手もまた自分のことを苦手だな、と思っていることが多いものです。
苦手意識は、特に理由が無いことも多く、「なんとなく、合わない」といった、感覚的なものだったりもします。
互いに敬遠し合う関係でも、「声かけ」を行うことで「思うより話しやすいな」「悪い人ではないように感じる」などし、双方の感情の行き違いが解消していくのでしょうね。
■トライ&エラーでブラッシュアップ!
こうした地道なトライ&エラーを繰り返し、苦手と感じていた人への対応を最適化していきます。
要するに対人用の「トリセツ」を自分で作るような感覚でしょうか。時間もかかりますし、うまくいく時ばかりではありませんが、徐々に、でも確実に良好な関係を築くことができてきたのです。
良好な関係は、何もリーダーとメンバー間ばかりではありません。
一緒に研修を受け、互いの悩みに共感し、一緒に試行錯誤したリーダー同士の絆もまた深まり、違うフロア、違う職域のリーダーが交流を持つことで、職場に一体感が生まれていきます。
横のつながりが生む効果
リーダーなんて向いてないのではないか、そう悩んでいたのは自分だけではなかった。そんな思いと共に一緒に頑張ったリーダー達は、お互いの立場を理解し、共感し合います。
すると、チーム内の関係だけではなく、事業所全体にも良い効果が現れます。
基本、日々の業務は同部署のチーム内、で行われます。別のチームと直接的な関わりを持つ機会は少ない、そんな職場も多いでしょう。
しかし、研修を通じて共感し合えるようになったリーダー達は、他のチームのリーダーも私のような苦労をしている、という思いから、互いに協力しよう、フォローし合おう、という気持ちが生まれてくるのです。
慢性的な人手不足となることが多い福祉業界、急なシフトの変更や勤務形態など、責任感の強いリーダーがひとりで抱え込み、自分だけが頑張ればいいやと無理をし、あげく限界が来て離職してしまう…これまたよくある話のように思います。
共感し合えるリーダー同士であれば、ひとりで抱えることもなく、同じような境遇の者同士で協力し、力を合わせて仕事をすることもできるようになるのです。
取り組みが残したもの
いかがでしたでしょうか。この取り組みは、「リーダーに向かない人にリーダーとして頑張ってもらう」が出発点でした。
そして、その点においてリーダーとして100点満点を取りました!というものではありません。人のタイプはその人の個性です。是正できるものではなく、研修をしても必ずしも全員がコミュニケーションが得意になりました!と、変われたわけではありません。
しかし、最終的に「向かなくても、その人なりにリーダーとしての仕事を全うし、職場全体がチームとしてまとまった」という、本来の目的でもあるはずの「組織変革」は達成することができたのです。
人材アセスメントと組織変革でワクドキ!など言葉にすると、キラキラな職場でゴリゴリと仕事を進める人がさらにレベルアップ!のようなイメージを持たれることも多いものです。しかし今回のケースとはちょっと違うな、と感じるのではないでしょうか。しかし、こういった地道に、静かに素晴らしいお仕事をされているような現場でも、やはり「組織変革」は有効なのだなと感じるのです。
「適材適所」とよく言われますが、職場の環境によってはそれが難しい場合もあります。しかし、今いる人材を活かした組織変革の方法は必ずあるのだと痛感する一例をご紹介いたしました。
人材のタイプを見極め、組織変革!今布陣でもできることは必ずあります!Tenmaruは組織に寄り添い、これからも、現場で一緒に組織の最適化を目指していきたいと思います。
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