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今日の本|「魂の退社」稲垣えみ子


魂の退社
著者:稲垣えみ子
発行者:東洋経済新報社


この本を手に取ったきっかけは、Kindle unlimited におすすめとして出てきたから。少し前に、本屋さんで稲垣えみ子さんの新刊「家事か地獄か」をちらっと立ち読みして気になっていたのです。なぜなら、私も家事が好きだから。家事に思い入れがあるから。ライフスタイル本とかも好きだけど、市井の人々の生活史なんかも好きです。稲垣えみ子さんは「アフロ記者」として、その存在を認識はしていたけれども、「魂の退社」発売当初は、わざわざ買って読むほどではないかなぁと(失礼)見送っていたので、今回読んでみました。


会社員の宿命、「異動」によって物語が動き始めます。稲垣さんは香川県の高松市に異動になったことで、都会での金満生活から地味な生活へと移行し、それに伴い生活の価値観ががらりと変わっていくのです。
なぜ都会で会社員をしていると、金満生活に陥っていくのか。自分も会社員として働く立場で、日々モヤモヤと感じていること、それが言葉によって表現されていて、なかなかエグられます。
気にしないふりをしていても上からの評価を気にしながら仕事をすること。
会社からの「選別」を受け続ける精神的なダメージ。
それでも対価としての給料を得るため、毎日仕事を続けている。
仕事が、「失敗を恐れ、減点されないようにとビクビクしながらこなすもの」となっていないだろうか?

やだこれ、私じゃん。。。決して仕事が嫌いなわけではありません。恵まれた環境、恵まれた仲間に囲まれて、それなりにやりがいのある仕事もできています。
でも、このまま本当に定年まで働くんだろうか、といううっすらとした疑惑をいつも抱えながら生活するってなかなかきつい。

お金がある生活=楽しく幸せな生活ではない。頭ではわかっていても、会社を辞めるのは怖い。その不安の正体が、日本社会の構造によるものではないか。日本は会社社会なのだ、と鋭く指摘しています。
「会社員にあらずんば人にあらず。不審者であり、信用も得られない。そして、国までもが会社に属さない人間に『超罰』を科してくるのである」なんかは、いつかは会社から自立したいと思う自分にとっては、ホラーのよう。ゾッとする。


会社組織に卑屈な気持ちを持つ一方で、稲垣さんが言うように、学校のような愛着が湧くのも確か。だって会社は、社会のイロハを教えてくれる。上司や先輩が、見離さずに根気よく指導してくれて、設備投資もしてくれて、会社員じゃなければ受けられない恩恵もたくさんある。


稲垣さんは仕事をやり切って退職されました。
本を読んでいて、自分も会社に対して愛憎半ばする思いがあることを、改めて発見しました。
いつか私も退社に至る日が来るはず。参考にさせていただける、ひとつのロールモデルとしての「魂」、受け取りました!



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