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今日の本|「人生はどこでもドア」稲垣えみ子

人生はどこでもドア
著者:稲垣えみ子
発行者:東洋経済新報社

「海外で暮らしてみたい。それは子供の頃からの憧れだった」
で始まるこの本。冒頭から激しく同意。この本は、稲垣さんがひょんなことから「生活」しにいくこととなった、フランス・リヨンでの2週間の記録であります。


リヨンへ観光しに行くわけではなく、「生活する」という部分がポイント。稲垣さんはこれまでの経験から、ガイドブックに掲載されている有名な観光スポットや飲食店に行っても、十分に楽しめ切れていない自分に気づいていました。それは、普段の生活で興味がないモノを見ても、突然興味が湧いたり感心することはできないからではないか、と考えるに至ります。普段から興味を持っていることを旅に持ち込めば、興味深い旅になるのではないかと、普段真剣に取り組んでいる「生活する」ことを目的にした、という経緯があります。


行き先をリヨンとしたのは、偶然。友人がリヨンで1週間仕事をするので、一緒に来ないかと誘われたことがきっかけ。これを「生活する」旅を実行するチャンス!と捉え、1週間前乗りの航空機チケットを予約、住まいは民泊を確保、いよいよ旅が始まったのです。


生活の基本は食事と仕事。ということで、マルシェ通いとカフェ通いで、現地の人や生活の場に、勇気を出して馴染んで行こうとする様子をレポートしています。


稲垣さんの語るきっかけが、まさに、私が取り組んでみたかったこと。私も観光ではなくて、生活をしてみたい、異国に1ヵ月位暮らしてみたい!という強い想いがあります。
この夢は、今の生活、つまり仕事や子育てがあるので、当面は叶えられない夢、と蓋をしている部分でもあります。


先輩女性が体験談を聞かせてくれる!と、嬉しい気持ちで読み進めていった中で、一番心に残ったこと。それは、ここでは私は誰からも必要とされていない、それどころか、ただ浮いた存在でしかない。いてもいなくても同じ、という部分。
私もコロナ前、ちょっと長めの休みをとって、子供の世話を夫にお願いして、タイ・チェンマイに1人旅に行ったことがあります。寺院みたいな観光スポットは避けて、なるべく現地の人が使ってそうな食堂を使ったり、市場に通ったり、Uberで移動してみたりして。美味しいものにも出会えたし、現地の様子も感じることができた。でも、それだけ。明らかに観光客っぽいのに、なんでこんなところに来る?くらいの、白々しい目で見られるのがオチでした。せっかく勇気を出しても、そんなもの。
結局1週間や2週間では、現地の生活に食いこむことはほとんどできないのです。それなのにどうしてこんなに、異国で生活してみたい、と憧れるのか?


それは、「生まれ直してみたい」から、と結論しました。私の場合。
生活することの何が楽しいって、いろいろなスキルがどんどん積み上がっていくことだと思います。公共の乗り物に乗れるようになった、この単語の意味がわかるようになった、表情や仕草から気持ちを汲めるようになってきた…。どれもこれも日本では取得済みのスキルで、あまりにも当然すぎて説明のしようがないことばかり。それが異国では、全く簡単ではなくて、失敗ばかりする。ほんと、生活スキルは子供以下。ひとつひとつ覚え直して、検討してみて、クリアして…。その流れはもうほとんどゲームみたいで、道楽のよう。稲垣さんも例に出してたけど、ディズニーランドのアトラクションの100倍楽しい。


またチャンスがあったら、すぐ「生まれ直し」の旅に出られるように準備しよう。
ちなみに私の普段の生活で欠かせないのが、車の運転。この本を読んで気づいたけど、普段から車ばかり運転しているから、やりたいことリストには「アメリカを車で横断する」という夢が含まれているのでした。

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