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オラファー・エリアソン「ときに川は橋となる」

オラファー・エリアソン「ときに川は橋となる」
東京都現代美術館



美術館に来たのはいつぶりだ?つい数ヶ月前の記憶がかなり薄い…。
この自粛期間、アートに集中して向き合えたご褒美ボーナスタイムで不自由なく過ごしてたはずなのですが、実際はいろいろな感情に蓋をして、現実を受けいれようと我慢していた末の行動が「荒ぶる芸術愛」盲信の日々だったのかもしれない…と思いました。だって清澄白河駅について、美術館まで15分ほど歩くのですが、緑が美しくて太陽が眩しくて、「これから美術館に行く」なんて最高なシチュエーションでゆるゆるな音楽聴きながら歩いてるだけで、なんだか美術館に着く前にもう満足してしまったから…!♡
楽しみな目的を持ってお出かけをするということがどんだけ尊いことやねんって思わず笑ってしまいました。


現美では入ってすぐに検温、消毒って感じで、時間制のチケットを発売してるわけではないので、初夏の現美の平日にしては人が多いなって感じでした。でも広いから全然気にならないぐらい。みんな美術館にやっと来れた〜って同じ気持ちを共有してるみたいな感じがなんとなくして、ちょっと嬉しかったです。


さて、オラファー・エリアソンの展示ですが、私来る日を間違えてしまったかもしれない…!

最近アートの視点から人種差別やジェンダー問題について考えたり調べたりすることが多くて、結構頭の中がこの課題をどうにかしたい、知ろう考えようみたいな感じで頭ぱんぱんになってしまってたんです。

で、オラファーの作品は\環境問題/をアートの視点から考えていくというものなので、それらを目のあたりにして「課題多すぎひんか〜〜〜〜!!!!地球〜〜〜〜!!!!サステナブル〜〜〜!!!!」みたいな感じで私の頭の中がバグりました…!


SDGs全部に一気に取り組んでるひとたち、どんな脳みそしてんねん。もう少しジェンダー関連や人種差別についてわたしの脳みそが落ち着いてから来たらよかったです。でも実際全部が同時進行で動いてるんやから、「落ち着く」とか「待つ」とかそういうことじゃないし、今からすぐに向き合っていかなあかんやつやとは思う。ほんま問題だらけやないかい地球よぉ。ちくしょ〜。


オラファーの作品って彼個人のものっていうよりは、彼のスタジオに120人程度のいろんな専門家や研究者などが在籍してて、みんなで作品を作ったはるんですけど、英知が結集してるから振り幅がすごいし、アートをただの鑑賞物で終わらせずに、「じゃあそこからどう考える?」「なにに気づいた?」みたいな問題提起はもちろん、作品の動力は太陽光を使っていたり(現美の中庭にソーラーパネルがあった)、環境に優しい新しい素材開発だったり、食事の点からも社員食は地産地消にして余分な野菜くずはローストして塗料に変えてそれで作品を作られてたり(料理本が最高やった)、作品の運搬の過程もCo2を減らすために汽車を使用してその道中もアート作品にしたり、ほんまにアートで環境変えてこっていうガチな取り組みから絶大なパワーを感じて、うわぁすごい…!本気のやつや!って思いました。



いろいろ難しそうなこと書いてますが、1つとして難しい作品はなくて、自分がその場で体感することで、何かしらの気づきがあるようなものばかりでした。


オラファーのインタビュー動画を見た時に、「頭の中で知っているだけのことは必ずしも行動に結びつきません。体を通じての実感や個人的な体験こそが実際の行動につながっていくのです。『自分自身の行動を変えてみよう』『自分が気候変動の問題にどう関われるのか考えてみよう』そういう思いになるのです。」と言ったはりました。

この気づきによって1人1人が行動を変えるようになれば、環境も変わっていくということなんだと思います。ほんまその通りやな。

わたしが頭ぱんぱんになりすぎてバクってしまったぐらい、危機的な自然の現状を知れたし、またそれを守りたいと思わされるような気づきがたくさん得られたし、大前提として私たちのいる地球って、自然って、光ってなんて美しいんやろうって改めて気づかされました。


わたしは特に霧の中で虹がかかるオラファーの初期作品がドラマチックで好きです。見る角度や裏側にまわってみたりして見る場所を変えると、霧の出方によって虹が消えたり部分的に見えたりと全然違った姿でゆらゆらとそこに現れるのですが、虹の持つしあわせなイメージと、実際はすごくうつろいやすくて儚いという相反する印象の違いが情緒的でグッときました。また、実際外で虹がかかった時、たくさんの人がいろんな場所からそれを見るけど、同じ虹でありながらおそらく場所によって見え方が違ってるのかもしれないなぁと。自然は変化するし、それを見る人たちの視点によっても見え方が変化するという点もおもしろいなぁと思いました。自然って本当に1秒たりとも同じ状態じゃないんですよね。だからこそ今の自然を守らなきゃいけない…。


ちなみに、彼の作品のタイトルの多くに「あなたの〜」ってついてる理由は、私たちはみんなそれぞれ違う人間だから、それぞれがこれらの作品を見て感じることは違っていいし、各々で想像力をはたらかせてほしいという気持ちがこめられてたりするそうです。なるほど。ほんまに人それぞれやな。



アートの力で直接環境は変えていけないけど、人の気持ちに気づきを与えることはできるという視点がすごく希望を持てたし、やっぱアートの力って無限大って思いました!はぁ頭ぱんっぱん!



ちなみに昨年春に現美がリニューアルしてからまだ見てなかった常設展も見たのですが、そっちは戦争についての作品が多くて、「ほんま知らなあかんこと多すぎひん!?!?」とこれまた頭ぱんぱんのぱんぱぱんの限界を超えながら藤田嗣治の「千人針」という小さな戦争画に号泣しました。藤田が陸軍美術協会の理事長やった時の絵やと思います。学生の女の子やお母さんみたいな人らが赤い糸で縫ったはる後ろ姿なのですが、むちゃくちゃ胸が苦しくなりました…。すごい絵やった。額がシルバーなのが藤田らしくて良かったです。


なんかもうキャパシティを越えた1日でした。疲れた~

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