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青い花

東京も雪が降っています。特別な感じがしてちょっと嬉しい。寒いのは苦手だけど。

昨日、出光美術館に「染付展」を観に行ってきました。初めてこの美術館に訪れたのですが、品のいい看板と紳士なエレベーターおじさま。ビルの9階に到着すると、静寂の中に包まれたモダンな壁にふかふかのカーペット。これまた品のいい廊下。時間がゆっくりと流れていくような感覚に陥り、すっかりこの空間に魅了されてしまいました。
こういう場所で作品をじっくり堪能できる時間というのはなんとも贅沢だなぁと期待に胸高鳴らせながら展示を見る前から既にうっとりモードの私でしたが、そんな高い期待も上回ってしまうほどに紀元前から現代まで、「青」で彩られた世界各国の染付の作品はあまりに素晴らしく、また今回は学芸員さんの解説を直接聞けるという時間帯に訪れたので非常に興味深いお話が聞けてとっても嬉しかったのと、時代や国ごとに丁寧にわかりやすく説明書きのキャプションも用意されており、その内容に大感激してしまいました。

その中でもおもしろいなぁと思ったのが、中国の明の時代(12〜16世紀)に作られた景徳鎮の燭台。
14世紀にイラク(イランかもしれない)で作られた銀の燭台の形と全く同じなのです。

そのほかにも、紀元前8〜7世紀キプロスで作られた壺と12世紀にイランで作られた壺と、中国の明の時代に作られた景徳鎮の壺の形が全く同じ。

時代も国も違うのに、同じようなものが生まれている。偶然ではなく、間違いなく真似してるんですよね。

他国から来た目新しいものを独自の国の文化と融合させてより発展させていく。そんな流れが見えて、真似をして作ってみるということが文明の発展には必要不可欠な第一歩だったのだなぁと感慨深かったです。知らない国との出会い、交流による影響で新たな文化が生まれる。ロマンだなぁ。

この展示では紀元前のオリエンタルな文化から現代まで、イラン、イラク、中国、日本、ベトナム、朝鮮、ヨーロッパ、シリアと世界各国の作品が見れるのですが、最後学芸員の方が大量の作品を見渡しながら「これだけの時代、国の違いがあっても、金属・磁器・陶器と素材は違ったりもしますが、どれも似たような形や色や模様なんですね。好きなものはみんな同じようなものなのかもしれないですね」とおっしゃってて、ガツーーーーンと脳みそを殴られた気がしました。美しいとか好きとか必要な形、色、模様というのは圧倒的に昔から存在しててそれは世界に共通して普遍的なものなんだなぁと驚いたしとても共感しました。

また、様々な作品を見ていく中で、日本人の感覚ってやはり美しい…と惚れ惚れしてしまいました。
中国の民間窯で作られたところどころに釉薬のムラによる剥がれや削げがある器に対して、中国の宮廷の人々がこれを見たら目も当てられないほどの粗悪品なのに対して、日本にその器がやってきた時に、茶人たちはそれらを「虫喰い」と言って観賞用として楽しんだんですね。味じゃないかと。これらの磁器のことを「古染付(こそめつけ)」というそうで、茶人たちは好んでこれを中国に注文したそうです。
形もいびつなものほど好んだり、どこか完璧じゃないところに美を見出す感覚って乙だよなぁ。

そして伊万里焼の中に「鍋島焼」という将軍や大名のために作られた一般の人たちには手に渡らなかった器があるのをご存知でしょうか。「豆彩(とうさい)」という技法で、藍色の呉須(顔料)で輪郭をとって、赤黄緑で上絵をつけていく。黒ではなく藍の輪郭のおかげでなんとも涼やかで上品。こういうところにも青が美しさを発揮している。
実際に着彩する色というよりは、器として遠目で見た時にどういう色に見えるかをよく考えられていて、私もセットを作る時に、個々の色よりも引いて見た時に色がどう見えてくるかをとても大事にしているので同じ感覚を持てていることがとても嬉しかったです。
高度な技術が必要とされるであろう染付と青磁を合わせたものもあってブルーグリーンと青の重ね合わせが大層うっとりでした。
鍋島焼のその存在というか歴史をあまり知らなかったのですが、昨日見たものがとても美しかったので興味がわきました。
こちらのサイトが写真も美しく、とてもわかりやすかったです。
訪れてみたいなぁ。

全然時間が足りなくてあっという間に閉館時間になってしまったので、もう一度見に行こうと思います。


「染付」
世界に花咲く青のうつわ
■会期 2019年1月12日~3月24日
■会場 出光美術館
■住所 東京都千代田区丸の内3-1-1(帝劇ビル9階)
■開館時間 10:00~17:00(金〜19:00)
休館日 月(2019年1月14日、2月11日は開館)
■観覧料 一般 1000円 / 大学・高校生 700円 / 中学生以下無料(保護者の同伴が必要)
■アクセス JR有楽町駅国際フォーラム口徒歩5分ほか
URL http://idemitsu-museum.or.jp

それにしても寒い。こんな日にうっとりするような青い器であったかい飲み物が飲みたいなぁ。

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