今年の春、私を思い出す旅をした。中編
途中自転車を降りて空を見上げた。ビル街の合間、真っ青な空に白い飛行機が飛んでいる、凄く綺麗な光景だ。周りには、同じように空を見上げる人はいない。
「きっと私が大切にしたいことは、東京にいても、長野にいても変わらないだろうな。」
そう思いながら、もう一度自転車を漕ぎ始める。イヤホンから流れるジャズが、なんだか心地いい。
ホテルを出る時「とりあえずヨガをしようかな。」そう思って、近くのスタジオを調べておいた。
ヨガインストラクターの女性は、黒髪をひとつに結んでいて、上が白・下は黒というシンプルなヨガウェアが素敵だ。あ、同じハイドロフラスクの水筒だ。勝手に親近感を覚えてしまう。
物腰が柔らかく、まるで日向のように暖かい、そして芯を感じる本当に素敵な女性だった。
ヨガに興味を持つきっかけになった女性や、その後出会った素敵だと感じた方々を思い出す。みんな柔らかく自然な雰囲気で、落ち着いていて穏やか、そしてしっかりと芯を感じる人ばかり。
この人になりたいという特定の人物はいないけど、自分がなりたい人としての人物像は、数年前から変わらないんだなあと再確認する。
なれてる？なれてないかも。なりたい、なれるだろうか。少しだけ不安になる。
「東京で素敵な接客をしてくれる人に会いたい」ㅤㅤㅤ
ヨガを受けた後そう思った私は、今日のことを忘れないようにと、香水を購入することにした。以前持っている沢山の香水を手放してから、特に香水は付けていなかったので、本当に久しぶりの香水だ。
銀座にある2店舗それぞれに入る。1店舗はその空間や働いている店員さんの全てが高級感のある雰囲気。お目当てのショップに入り白い手袋をはめた女性スタッフに声をかけられる。声は笑っているのに、マスク越しの目は笑っていなかった。段々と接客も冷たさが増してきて、悲しい気持ちで店を出ることにした。
2店舗目のお店は雰囲気はもっとカジュアルだ。既に何人かお客が入っていて、少し忙しそうに見える。ゆっくり見ていると女性スタッフが話しかけててくれた。優しい雰囲気の方で、いつの間にか香水の相談や、一人で旅に来た思い出に、なんて楽しく話が膨らんでいることに気づく。
2店舗目で購入した香水を片手に、何度も振り返って会釈をする。素敵な思い出が一つ増えたことが何より嬉しい。
（その時に購入した香水は、少し勇気と自信が欲しい時には必ずつけていたのだけれど、先日ついに終わってしまった。そんなに勇気と自信が必要な年だったのかな？）
夜は電車に乗って、日本橋から渋谷に向かう。どうやら電車一本で行けたらしい。間違えて途中下車した私は、乗り間違えたり、あまりの人の流れに人酔いしてしまったりで、結局2時間もかかってしまった。
それでも行ってみたかった、ボディ＆ソウルという生演奏でジャズを聴けるお店。
朝食の時に絵を好きだったことや、そこから幼少期を思い出して、昔から一緒に過ごしてきた「自分」のために生演奏でジャズを聴きたいと思った。
店内に入ると、一番最前列にはご年配の男性や女性がお洒落な装いで、食事を楽しみながら演奏を聴いていた。
ばっちりとスーツを着たピアノ奏者に、少しだけラフにお洒落をしている白髪のチェロ奏者、アフロをひとつに結った大分ラフなドラム奏者、みんなそれぞれ個性は残したまま、同じ曲をひとつになって楽しんで演奏をしているのが伝わる。
ご年配の方々が演奏が終わる度に指笛を吹いたり、大きく拍手をしたり、その瞬間を満喫していた。気づけば私を含めたその場にいる全員が、演奏を心から楽しんでいた。（店員さんたちもリズムにのっていた）
もうキングサイズのベットで飛び跳ねることはないけれど、なんだか久しぶりに周りの目を気にせずに、あの頃の気持ちを思い出したように感じる。
次の日、また緑の自転車に乗って、シタンの姉妹店になるヌイに向かう。@nui.hostel_bar_lounge
姉妹店があることも知らなかったし、長野にあるゲストハウス ピセ @guesthouse_pise_nagano サンボさんが携わっていたなんて知らなかった。 @sambo6jp 引き寄せの法則って本当にあるなあと実感する。ㅤ
江戸時代から続いた、おもちゃ屋の倉庫をリノベーションした店内。むき出しの鉄筋や配管に、コンクリート壁、中央には大きな木を使ったテーブルや無垢板、併設されている生花コーナーの花が、温かみのある空間を作り出していた。
２店舗ともテイストは違っても、人と人が繋がれる場所なんだと感じる。店内でコーヒーを飲みながら、大きく開けてある入り口に目を向ける。犬ベビーカーに乗ったわんちゃんと目があった。なんだかニコニコした表情に感じて、幸せな気分だ。
良い旅の締めくくりになったなあ。
続
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