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映画感想#23 「それでも夜は明ける」(2013年)

原題 12 Years a Slave
監督 スティーヴ・マックィーン
脚本 ジョン・リドリー
出演 キウェテル・イジョフォー、マイケル・ファスベンダー、ベネディクト・カンバーバッチ、ポール・ダノ、ポール・ジアマッティ、ルピタ・ニョンゴ、ブラッド・ピット 他
2013年 アメリカ・イギリス合作 134分


見ていて辛い映像でした。でも、それが奴隷制度の真実なんだと思いました。
主人公ソロモンの壮絶な人生と、その中にある「正義」という言葉に考えさせられます。

本当にあの白人たちは、「人でなし」です。
黒人だって同じ人間なのに。肌の色で身分を決めるなんて、こんなに馬鹿げたことってない。そういう非倫理的な状況が制度として存在し、人が人を完全に支配することが正当化されている。奴隷を保有する白人にとっては、ただ権力の象徴なのかもしれないけれど、奴隷である彼らも同じ人間であることに、気付いてほしかったと思いました。

奴隷になるというのは、"共感”とか、”同じ身になって考えてみる”なんて、到底できないような苦しみなのでしょう。
過重労働を強いられたり、劣悪な生活環境であったりという苦しみももちろんありますが、自分が「大勢の奴隷の中の一人」になり、個性が失われていくのは耐え難いことのはず。それが、人として扱われていないことの苦しさなんだと思います。

元はバイオリニストのソロモン

そもそも奴隷という概念自体がもうアウトですよね。
金儲けのための安い労働力としての存在。そのためには倫理も無視。奴隷貿易を国家主導で行っていたという、酷い歴史もあるくらい。当時の認識では、黒人は人ではなく、ただの「奴隷」だったのでしょう。悲しいことです。
昔から人間は、差別せずにはいられない生き物なんだと、改めて思ってしまいました。

実話のストーリーが持つ強さを全面に押し出し、かつ、それに頼り切らない映像的な美しさ。彼の奴隷としての12年という時を表すかのような、絶妙な間の取り方が素晴らしかった。
2014年アカデミー作品賞、おめでとうございます。

☆観賞日 2014年3月10日


投稿に際しての余談

・映画を通して学ぶということ
映画という媒体から学べることってたくさんありますよね。これは、私が映画を見ることが好きな理由の一つでもあります。
学校の授業で教材として映画を見るのは、教科書からは感じることのできない、臨場感のある歴史を追体験することができるからだと思います。
私も大学の授業で、「シンドラーのリスト」(1993年/スティーブン・スピルバーグ)を見たことがあり、ナチスの残虐行為に鳥肌が立ったのを覚えています。

映画としてはエンタメ要素も必要なので、本作品ではソロモンの諦めない姿・希望を持つことの大切さという側面もフォーカスされています。「それでも夜は明ける」という邦題からも、希望が見えますよね。
しかし、人身売買が行われていたという歴史や、白人がどのように黒人を虐げていたのか、という部分に目を向けて、当時苦しんでいた人々に思いを馳せることも大切だと思いました。


ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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