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映画感想#14 「ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮」(2012年)

原題 En kongelig affaere (英題:A Royal Affair)
監督 ニコライ・アーセル
脚本 ニコライ・アーセル、ラスマス・ヘイスターバング
出演 マッツ・ミケルセン、アリシア・ヴィカンダー、ミケル・ボー・フォルスガード、トリーヌ・ディルホム 他
2012年 デンマーク 137分


まず邦題に問題あり。
「愛と欲望の王宮」ってなんかBBCのドラマみたいじゃないですか?これはただの不倫の話ではなく、どちらかというと、権力争いや後継問題といった側面からデンマーク王政にフォーカスした内容だと思います。
その大枠の中で、国を変えたかったある一人の人間と、彼に惹かれた一人の女性の悲しいラブストーリーが描かれている、といった感じ。愛憎劇みたいなものとは違う。

啓蒙主義を信じ国を変えたいと願うのは、王宮の侍医ストルーエンセ。そして彼に惹かれてしまうのは、王妃カロリーネ。禁断の愛という点では間違いない。
しかし一方で、精神不安のあるデンマーク王クリスチャンと、医者であり良き助言者であるストルーエンセには信頼関係がある。でも外から見ると、ストルーエンセがクリスチャンを利用して改革をおこなっているようにしか見えないのです。

確かに、彼は野心家なのかもしれない。でも、ストルーエンセには「社会を変えたい、良くしたい」という気持ちの方が強かったんだと思います。
彼を助けてくれるカロリーネを愛し、そして子供ができて、周囲にばれないように必死になるのは、彼が悪者だからじゃない。

カロリーネとストルーエンセ

カロリーネも苦しい運命でした。まさか、本当にストルーエンセが殺されてしまうなんて思わなかっただろうな。クリスチャンを夫に持ち、王妃として暮らしていくことに限界を感じ、その中で親身になってくれたのはストルーエンセであり、国を変えたいという強い思いは、彼女にとっても明るい未来として魅力的に見えたはず。

厄介なのがクリスチャン王ですね。最後にストルーエンセが処刑される時にはすごくかわいそうだった。王として、彼が処刑への署名をしてしまった後の彼の気持ちには、きっと後悔も混じっていたはず。だって、クリスチャンもストルーエンセには大いに助けられていたのだから。

ストルーエンセは、王宮のドロドロした人間関係からではなく、いとも簡単に、政治的理由で抹殺されてしまった。圧政を貫こうとする王宮の我儘によって、権力の下敷きになってしまったのです。
王宮の政治的状況の中での、ストルーエンセの内面や、カロリーネの苦しみ、そしてクリスチャンの奇行など、込み入った描写もありかなり見応えがありました。

ストルーエンセとカロリーネの楽しいダンスシーンでさえ、この後の不幸な結末を思うと苦しい。137分通して、美しいシーンでさえも、どこか切ない気持ちにさせられる映画でした。

☆観賞日 2013年5月20日


投稿に際しての余談

・カロリーネを演じるのはスウェーデン出身のアリシア・ヴィカンダー。
とても可愛らしいのに、声はハスキーでかっこいい。彼女がだんだんとストルーエンセに惹かれていき、彼と共に自分の未来を切り開こうとする姿が印象的でした。
この映画で初めてこの女優さんを見ましたが、「コードネームU.N.C.L.E.」(2015年/ガイ・リッチー)でのスパイ役も、個性的でキュートな魅力がありました。
リリーのすべて」(2015年/トム・フーパー)ではアカデミー賞の助演女優賞を取られていますね。

・いやー、それにしてもマッツ・ミケルセンである。そりゃ好きになるよね、それはもうわかる(語彙力)。
「偽りなき者」(2012年/トマス・ビンターベア)で幼稚園の先生マッツを好きになるクララもわかるし、今回の医者マッツを好きになるカロリーネもわかる。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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