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映画感想#56 「ロマンス」(2015年)

監督・脚本 タナダユキ
出演 大島優子、大倉孝二、野㟢好美、窪田正孝、西牟田恵 他
2015年 日本 97分



幸せな親子という叶わない夢

箱根ロマンスカーのアテンダント・鉢子と、崖っぷち映画プロデューサー・桜庭。決して"ロマンス"なんかではないけれど、2人が再び現実を見つめ直すための小旅行です。

電車はいい。
目的地があって、そして、帰ってくる場所があるから。

映画「ロマンス」予告編冒頭のセリフ

これは主人公・鉢子のセリフ。
「台風は進路が決まっていて良いな」という受験を控えた高校生かのようでもありますが、鉢子は母親との関係でモヤモヤしたものを抱えているのです。

悲しい話だよなあ、よく考えてみれば。
子供の頃に両親が離婚し、母親は他の男と家を出たという。しばらくぶりに届いた母親からの手紙から、過去を振り返る鉢子。
両親の離婚というものが、子供にどれほどの影響を与えるか。鉢子にとって母親との関係は苦しいものだったと思う。でも、26歳になって初めてわかることもあったんだろうな。

箱根で幸せそうな親子を見るたびに切ない鉢子の気持ちが、少しわかる気がします。あの時、家族全員で箱根旅行に行った記憶が、一つずつ思い出されていくことが、どんなに辛いことか。
そんな「幸せな家族」なんて、もはや叶わない夢だけど、桜庭と出会って、話をして。カタルシスの効果もあり、一皮剥けた様子の鉢子。

主演の大島優子が意外にも良かった。(失礼)
この鉢子の役は、タナダユキ監督の大島優子への当て書きだそうです。

テレビの中では弾けるような笑顔で歌い踊る姿にむしろ「なんでもできてしまうからこそ、なんでも任されてしまう、本人にしかわからない大変さがきっとあるんだろうな」と感じていたんですよね。

「ロマンス」パンフレットP14
タナダユキ監督インタビューより

今どんな表情をすべきか、どんな感情であるべきか。自然と周囲の人間の期待に応えるような自分を演じてしまう、その器用さが逆に苦しさになってしまう。
そんな特徴は鉢子と重なる部分もあるようで、それもこの映画の一つの魅力だと思いました。

☆観賞日 2015年9月12日


余談〜誰かを見て自分を重ねてしまうこと〜

幸せな親子を見て悲しそうな鉢子。
私も多少なりとも共感してしまう部分があります。子供の頃に父親を亡くしましたので、今はもうさすがに思いませんが、父親・母親のいる家族を見ると羨ましいような気持ちにもなったものです。特にこの映画のように、箱根や京都、伊豆のようなザ・観光地という場所では尚更。
うーん、羨ましいというか、父親がいないことに改めて気付かされるというか。モヤモヤっとした感情なんですよね、これが。
これ書いててまたモヤモヤしてます。

*これまたパンフレットがかわいい。

旅のしおり風

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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