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映画感想#6 「別離」(2011年)

原題 A Separation
監督・脚本 アスガー・ファルハディ
出演 レイラ・ハタミ、ペイマン・モアディ、シャハブ・ホセイニ、サレー・バヤト、サリナ・ファルハディ、ババク・カリミ 他
2011年 123分 イラン


娘、テルメーの視点


イスラム圏の映画を初めて見ました。
第一印象は、宗教が生きている国なんだな、ということ。

物語は少し複雑ですが、
妊娠している女性(ラジエー)を突き飛ばして流産させてしまった男性(ナデル)が、その女性の妊娠を認識していたか?という点が焦点になり、イスラム法の下での裁判の行方は・・・といった感じ。
そこに、教育や介護、ジェンダーなどの問題が関わってくる。

人間ってやっぱり、無意識的に自分が有利になろうとするものですよね。
繰り返し証言を求められる中で、だんだん、ナデルとラジエーは自分の証言に自信がなくなってくる。何が真実だったのか、自分でもわからなくなってくる。
こういう心理描写もしっかりあるところが良かったです。
結局、ラジエーがコーランに自分の証言を誓えず・・・という場面で終わってしまいます。

大きな役割を果たすのは、ナデルと妻シミンの娘、テルメー。テルメーは、ちゃんと起きたことを正直にいうべきだ、と主張する。
そもそもナデルは、シミンと離婚する瀬戸際で、それは娘テルメーの教育のために国外移住をするかどうかの意見の食い違いが原因でした。そこに、ラジエーとの問題が積み重なり、テルメーも大変辛い思いをしていました。

親の離婚で一番苦しんでいるのは、きっと子供なんだろうな。子供には何の罪もないのに。親の方はある程度覚悟ができているかもしれませんが、子供にとって、突然家族がバラバラになってしまうという衝撃は、かなり大きいはずです。

この作品の舞台はイランで、宗教的な部分がフォーカスされて特殊な状況にも見えますが、しかし、宗教や文化が違えど、離婚や教育、格差の問題はどこにでも起こりうる問題ですし、むしろ普遍性のあるストーリーだと感じました。

とはいえ個人的には、宗教が司法と一体である点には、やはり日本との違いを感じ、興味深いとも思います。

☆観賞日 2012年8月27日


投稿に際しての余談


・親の離婚問題で苦しむのは、本人たちよりも、むしろ子供かもしれない。そんな子供の映画で思い出すのは、「メイジーの瞳」(2014年/スコット・マクギー)です。父親、母親の間を行ったり来たりするメイジーの視点で描くことで、一緒にいたい人が父親でも母親でもない可能性があることを示唆します。
「万引き家族」(2018年/是枝裕和)でも、同じようなテーマを扱っていますよね。
この映画でも、テルメーの視点がとても大事になっていて、子供だからわかること、父・母の間にいる立場だからこそわかることってあるのかもしれない。

・「神に誓う」という行為について
私は大学でキリスト教について勉強していましたが、結局、「神って何なんだろうか…」という疑問は、今でも残り続けたままです。本作でも「コーランに誓う」というシーンがありましたが、神に誓うというのは、一体どういう感覚なのでしょうか?神社やお寺でお賽銭を入れて願い事をするのとは、重みが違うはず・・・。
「神って何?」というテーマの映画もたくさんあるので、これからも見続けていきたいです。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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