映画感想#38 「オスロ、8月31日」(2011年)
原題 Oslo, 31. august
監督 ヨアキム・トリアー
脚本 ヨアキム・トリアー、エスキル・フォクト
出演 アンデルシュ・ダニエルセン・リー、ハンス・オラフ・ブレンネル、レナーテ・レインスベ 他
2011年 ノルウェー 96分
ドラッグ依存の青年がたどる運命
静かで深い96分。主人公アンデシュの視点で描いたこの物語は、自殺願望に取り憑かれた彼の心の中を覗き見るようで、見る者に絶望を感じさせます。
ドラッグ依存で更生中の彼が得た束の間の外泊が、彼にどのような影響をもたらすのか。
パーティーのフラッシュや、流れるように変わっていく都市の景色。中身のない瞬間的な事柄が、アンデシュの虚無感を表しているようでした。彼の空っぽな心が埋まることはなく、悲しくて、時に怒りにも似たような感情でもあり。
これ以上、行動を起こす気力すらない彼が選んだ道は、再びドラッグだったのです。
結局ドラッグから抜け出せないのは、もしかしたら彼自身の問題だけではないのかもしれない。社会の問題、両親の問題、施設の問題。
アンデシュの取った行動に気付かされるのは、周囲の人間の支えがいかに大きいかということ。妹のニーナは、アンデシュと会わなかった。身近な家族でさえも面会しなかったことが、彼にとって何を意味していたのでしょうか。
深いのに重すぎない、ヨアキム・トリアーの才能。
8月の軽やかなオスロの街で、やけに穏やかなアンデシュの笑顔が印象的でした。
☆鑑賞日 2015年2月10日
@トーキョーノーザンライツフェスティバル2015
投稿に際しての余談〜薬物からの更生〜
ドラッグ関係の映画は星の数ほどあるとは思いますが、個人的に薬物依存の主人公で思い浮かぶのは、「ハーフネルソン」(2006年/ライアン・フレック)での中学教師ダン・デューン。
「ラ・ラ・ランド」(2016年/デイミアン・チャゼル)にて人気が爆発した(と思う)ライアン・ゴズリング主演作です。
教師なのにヤク中という設定なのですが、この人もアンデシュと同様、普段は穏やかなのです。まあ、穏やかと言ったら聞こえがいいかもしれないけど、「どこか死んでる」というか。何か諦めてる?うつろ?そんな表情。
キレまくっている人も怖いけど、こういうある意味穏やかタイプの人も、生きることに対してあんまり意味を感じてなさそうでちょっと怖いな。
「ハーフネルソン」では、最後に水をごくごく飲むシーンがあり、そこで少し更生という希望が見えた気がしましたが、やはり難しいのが現実なのでしょう。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
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