シェア
オオムラ
2018年9月3日 19:50
「ほんと、世の中ってタイミングだね」グラスに残った氷をマドラーでかき回しながら、彼女は悟ったような口をきく。カランカラ、カランカラと、軽妙な音をたてながら氷は少しずつ溶けていく。彼女は呆れたような声で「ごめんね」と言った。何が、と聞き返したかったが、面倒になった。今日は少し、飲みすぎた。*彼女と僕はサークルの先輩後輩関係にあたる。実際のところ、それ以上でも以下でもなかった。でも、まわり
2018年9月12日 15:10
気配のしない朝が好きだと気付いたのは、小学5年生のころだ。旅行に出かける朝、時間は4時ごろだったと思う。まだあたりは薄暗く、人も、車も、ハトやスズメでさえ、姿を見せなかった。季節は夏だというのに、深呼吸すると肺が冷たくなるほどに、ツンと冷えた世界。気配もしない朝、きっと眠いはずなのに、緊張感が張り詰めて、目が冴えた。あれから10年以上経つ。大人になったいまも、たまにこの時間に起きている。9月も